☣️×🌵 濡れ場無し
俺は誰だろう
真っ暗な視界だ。
きっと俺は目をつぶっているのだろう
なぜこのような状態なのか記憶をさぐっても何も出てこない
よく分からない恐怖と心の空洞
恐ろしくて目を開くのが怖く思うが、それでも今…目を開かなければ自分を知るすべは無い
それでも、開いても何も分からなければ?
そんな恐怖に押しつぶされそうになりながら何十分経っただろう?
いや、数分を誇張しすぎているだけかもしれないと考え意を決して目を開いてみる
そこは1面コンクリで出来た簡素な部屋だった
生活できるものは最小限だけの部屋
俺?いや何かしっくり来ない
私?
あぁ、こっちの方がなんとなく自分に合っている気がする
「私は誰だ…」
記憶が無い
何も分からない
何も出てこないのだ。
自分が何故ここにいるか、自分の名前や年齢どんな人間だったかさえ
込み上げてくるおぞましい感情が口から漏れだしそうで手で口を抑える
「だ、だれか…」
ガチャ ギーーー
重いドアが開かれだれかが入ってくる
その人物は赤いスーツに金髪、サングラスと明らかに堅気の人間では無い
私はもしや何か手を染めてしまったのだろうか
「あ、あの…命だけは」
胸の辺りがざわざわとして恐怖で体が強ばってしまう
口を押えている手も少し震えてしまっている
「何を言ってるんだぐち逸」
男は私の元へ寄り目線を合わせてそう言った
「ぐち逸……それが私の名前なんですか?」
この人は私のことを知っている
雰囲気から私がなにかやらかして埋められるような心配性もないようだ
そう思えるとなんだかホッとして肩の力が緩む
「また記憶喪失になったのか」
また?
まさか私は過去にも同じように記憶を無くしてしまったことがあるのか?
「自分が誰か分かるか?」
そう問われ「いえ…」と小さく答える
自分の名前がぐち逸というのは分かったがそれ以外は全くもって記憶にない
こんなことが過去に何度もあったかもしれないと考えるとまた恐怖に包まれてしまう
「お前の名前は空架ぐち逸だ。そして私はウェスカーだ」
ウェスカー…さん聞いてもピンと来ない
本当に私は記憶を失ってしまったんだな…
そう考えると途端に胸の内側が苦しくなってくる
「泣かなくても大丈夫ですよ」
「え…」
ウェスカーさんにそう言われた瞬間ポタリと雫が落ち自身の服に染みる
「あ、あぁ…すみません」
なんだかわけも分からず謝ってしまう
「とりあえず私と貴方との関係についてお教えしましょうか」
今は気持ちが落ち着かないが少しでも多く自分の情報を集めなければいけない
「はい、そうですね…」
「ぐち逸さん貴方は私の専属個人医です。」
「はあ…、?なるほど私が医者」
そうか医者なのか
「まぁ、そうですよね。医師としての知識はありますか?」
「いえ、まったく。何よりも自分が人を助ける立場の人間だったのが凄く驚きですね」
そう言うとウェスカーはにっこりと笑って
「おっと、間違えないでください。
貴方は私の専属ですからね。ぐち逸さんが救っているのは私の命ですから」
専属という言葉を強調しながら言った
「専属ですもんね。ですよね…」
なんだかしっくりこないのは私が記憶をなくしているからだろうか…
「あ、あの…。ウェスカーさん」
本当に自分が医者なのか確認してみよう
私の記憶には医療に対しての知識など微塵も無いからだ
「どうしました?」
にこにことした顔が逆に恐ろしく感じて少し声が詰まる
「えと……….。その、私は本当にあなたの専属医なのですか?」
自分の中で深んだ疑問を聞いただけなのにウェスカーは無言になり顔は怒っているとは少し違うがとても怖い顔をしていた
(質問を間違えたか…?
私はもしかしてこの人に命を握られているのか?)
冷や汗がダラダラと皮膚から垂れてきて体が寒くなる
「いや、すみません何でも無いです」
今は彼の顔が見れない
「そうですか…まぁ、大丈夫ですよ」
なにが大丈夫なのか…
きっと私は踏み入れては行けない領域に入ったに違いない
逃げなくてはならない
「すみませんお腹がすいてしまって、何か食べ物を貰えないですかね?」
笑顔を作って見せるが自分でも分かる
どうしても口元が引きつってしまう
「…………」
あ、
まずい
本能的にそう思った
ウェスカーの顔はただただ恐ろしい
瞳に光などなく無表情なのに、なにか違う恐ろしい感情を向けられている
そう思うのだ
ゆっくりと後ろへと後ずさる
恐怖に腰が抜けて地べたを這いながら逃げる
ゆっくりとゆっくりとそして部屋の角にたどり着きウェスカーの方を見てみる
彼は1歩も動いていなかった
それが尚更私の恐怖心を駆り立てた
「あああ………うああぁぁぁ………うっうっ……ぅぅぅう……」
口から変な嗚咽が漏れ出てくる小さな声でだが、自身が壊れそうだ
「やはり試作段階なのがまずかったか…」
ウェスカーがそうポツリとつぶやく
「うぇ…ああぁ、いやだ…かえしてくれ……かえして」
ウェスカーが近ずいてくる
私の頭の中には既に逃げるなんて思考なんてなかった
ただうずくまって発狂しているだけだった
そして、針を刺され意識を無くす
「ちゃんと次は上手くやりますからね」
[完]
この後日談をR-18で書かせていただきます
ここまで読んで頂きありがとうございました
また別の作品を作成している途中なのでよろしくお願いします
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