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#21のチューリップ
monake@イラコン開催中!
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#CH
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とあるエリートアカデミーに、アメリカという男子生徒がいた。
彼は何度も飛び級し、あっという間に最高学年になった。
成績も良い彼は、当然沢山の生徒に好かれていたが、本人はいつも冷たくあしらっていた。
そんな彼は、日光にとても弱い身体の病気を患っているらしい。
そしてこの春、最高学年の生徒達は卒業する。
卒業生達は毎年恒例の卒業パーティーを開くことになり、アメリカは沢山の生徒に引っ張りだこにされたが、ことごとく断った。
しかしアメリカも誰かと関わりたいとは思っていた。
誰か静かそうな女性……
と考えた瞬間、アメリカの脳裏にいつも教室の隅の席で読書と勉強をしていた女性を思い出した。
夏でも長袖と手袋とタイツをいつも身に付けており、他の生徒より露出がとても少なかったので、周りからは少し変な目で見られている節があり、
誰とも話さず殆ど動かず、毎日を過ごしていた。
アメリカは最後の下校前に、図書館で借りていた本を返しに行っていた日帝に初めて話しかけ、卒業パーティーに一緒に行かないかと誘った。
アメリカは嫌がられるのではとは思っていたが、意外にも日帝からの答えは「はい」だった。
そういえば彼女の顔をハッキリ見たのはこれが初めてだ。
アメリカ「……マジで?いいのか?」
日帝「はい。誰とも行く約束が無かったので」
こうして2人で卒業パーティーに行くことになった。
当日、あのアメリカと名前を覚えられているのが珍しい程に影が薄い日帝が、並んでパーティー会場にいて、周りはざわざわとしていた。
日帝はドレス姿でも、長袖と手袋をしておりタイツをはいていた。
少し薄い赤色のひだひだしたドレスと靴は、少し目立つが日帝にはとても似合っていた。
アメリカは紺色のスーツに赤いネクタイをしていた。
前髪も上げており、いつもより色男の顔がよく見えた。
アメリカは勿論何度も周りの者に誘われたが、卒業してまでしつこい。と一蹴していった。
日帝も何人からかは二人きりで……と誘われたが、アメリカと同様に相手がいるので、と一蹴した。
やがてダンスが始まり、会場の中央でカップルや友人同士の者達がワルツを踊り始めた。
アメリカ「……なぁ、日帝」
日帝「はい」
アメリカ「オレ、実家の気品……とかなんとかでワルツは小さい頃から叩き込まれてたんだけど、まだ本格的に誰かと踊ったこと無いんだ。
………一緒に踊ってもらえないか?」
日帝「私でいいんですか?」
アメリカ「あぁ」
日帝「わかりました。いいですよ」
アメリカ「ありがとう。
じゃあ、行こうか」
アメリカが日帝の手を引いて輪に入った瞬間、周りがまたざわついたが日帝もアメリカもなにも気にせずに、相変わらずの無表情で音楽と共に踊り始めた。
アメリカ (こいつ、オレが言うのもなんだけどずっと無表情だな……)
日帝「……………」
アメリカ「(踊りも結構上手いし……)
……なぁ日帝、お前ってどこの家の出なんだ?」
日帝「一人暮らしです」
アメリカ「えっ、そうなのか」
日帝「はい」
アメリカ「……学費とか……結構厳しかっただろ」
日帝「まぁ」
アメリカ「…………」
日帝の肩で、髪をまとめている無限のマークの様な形をした金の髪飾りが、ワルツで静かに揺れていた。
音楽が終わり、今度は自分と自分と~ とアメリカに近寄ってきた女性達をまた一蹴して、2人は壁に寄りかかった。
アメリカ「……ワイン、飲まないか?」
日帝「…………いいですよ」
シャンデリアの灯りに反射した日帝の髪は赤色に艶光り、瞳は日光を放つ太陽の様だった。
アメリカ (………綺麗だ……)🍷
日帝「……?」🍷
アメリカ「……なぁ、一人暮らしって言ってたよな」🍷
日帝「はい」🍷
アメリカ「その、一人暮らしってどんなものなんだ?」🍷
日帝「それは……普通に一人で寝て起きて、一人で料理して食事して、一人で洗濯や買い物をします」🍷
アメリカ「……寂しくないのか?」🍷
日帝「いえ」🍷
アメリカ「そうなのか……
仕事とかはどうしてるんだ?」🍷
日帝「仕事はしてません。
……親が残してくれた遺産を使っています。
これから更に給料が高い仕事に就く予定です」🍷
アメリカ「……だからここに入学したんだな」🍷
日帝「はい」🍷
アメリカ「……これからも大変そうだな」🍷
日帝「はい」🍷ゴクッ
しばらく飲んでいるうちに、日帝はうとうとし始めた。
アメリカ「……眠いのか?」
日帝「……はい、すみません」
アメリカ「いいんだ。もしかしてお酒に弱かったりしたか?」
日帝「……大したことはありません」
アメリカ「……すまない。事前に聞いておくべきだったな」
日帝「……いえ…………」
なんとか持ちこたえていた日帝だが、結局日帝は寝落ちてしまった。
次に日帝の目がゆっくりと覚めた時、
そこは全く知らない豪華な寝室の一室だった。
酒の影響でまだうまく動けづ、ベッドに横たわったまま手先と足先だけを動かすと、
足音がした。
アメリカ「あ……起きたのか?」
日帝「……ん”、ぅ」
段々と体の調子が戻ってきたので、上半身だけ起こすと、水の入ったコップをアメリカが手渡してきた。
日帝「ぁ、ありがとうございます」ゴクッ
アメリカ「ここはオレの実家だよ。
君はあの後寝落ちてしまったんだ。君の家もわからないから、仕方なく連れてきた。
………すまない」
日帝「いえ、こちらこそご迷惑をおかけして申し訳ございません」
アメリカ「いいんだ。
今日はもう夜遅いし、泊まっていってくれ」
日帝「いいんですか?」
アメリカ「あぁ。オレのせいで寝落ちてしまったようなものだし」
日帝「……………」
アメリカ「……どうかしたのか?」
日帝「あ、いえ。会場にあったケーキ……
食べたかったなぁと……」
アメリカ「……明日シェフに同じものを作らせるよ」
日帝「あっいえ、そこまでしもらう
わ……けに、は……」
コップをベッド脇の机に置いた時、日帝の目にはコップに反射する自分と部屋が目に入った。
その反射している景色には、アメリカだけが写っていなかった。
日帝「!」
日帝は咄嗟にすぐそばの窓にかかっていたカーテンを捲った。
そこにはくっきりと、日帝と、アメリカだけが写っていない部屋が反射していた。
しかもよく見ると、外は山岳の山々と下は深い谷底の景色が広がっていた。
アメリカ「日帝?」
日帝「ッ!」
見ていた反射した景色にはアメリカが写っておらず、不意打ちで距離が詰められていた。
カーテンを掴んでいた手と腰に、手を回されて日帝は身動きがとれなくなった。
アメリカ「……どうしたんだ?」
日帝「……………………」
アメリカ「もしかしてオレが、
ヴァンパイアなんじゃないか。
とか思ったのか?」
アメリカの手に力がこもる。
日帝「、……」
アメリカ「大丈夫だよ、谷底に捨てようとかだなんて思ってない」
日帝「……本当ですか?」
アメリカ「あぁ。もっと言えば乱暴を働くつもりもない」
日帝「……そうですか」
アメリカ「でも、もし君がいいと言うなら……
味見をさせてくれると、嬉しいな」
日帝の手を握るアメリカの手の指先が、日帝の手袋の内側に滑り込んできた。
日帝「ぁ!、ちょっと待ってくださいッ」
アメリカ「………そっか、そうだよな。
やっぱり嫌だよな。
でも、ここに来てしまった以上は……いつか一滴くらいは貰いたいな……」
アメリカは更に指先を進め、日帝の手袋が半分脱げてしまう程になった。
日帝「ァ、アメリカ、様ッ!」
アメリカ「!
………ごめん、そうだよな。そんな無理矢理みたいなだなんて」
日帝「そうではなくて、」
アメリカ「……?」
日帝「……私……は、」
日帝は自らアメリカに向き直ると、外れかけの手袋をはめた手をアメリカの前に出し、
手袋を外した。
そこには、人形の様な関節をした手があった。
日帝「私は、ドールなんです」
アメリカ「……………は」
日帝「私は、ドールです。
だから、人の生き血は一滴も流れていないんです。
あるのは歯車等の機械だけです」
アメリカ「……」
日帝「ですので、アメリカ様が望むものは何も得られないと思います。
それでも谷底に捨てないのですか?」
アメリカ「……捨てないよ」
日帝「……そう、ですか」
アメリカ「予想外だが、オレの勝手で連れてきてしまった以上、おいそれと殺すようなことをするつもりはない。
だから、その辺はひとまず安心してくれ」
日帝「ありがとうございます。
驚かせてしまい、申し訳ありません」
アメリカ「何を言っているんだ。
驚かせてしまったのはオレの方だ。すまない」
予想外の展開に、アメリカは数年ぶりに内心戸惑った。
アメリカ「君は………否、詳しいことは明日聞いてもいいか?その時オレも話すから」
日帝「はい」
アメリカ「今日はもうゆっくり休んでくれ。
水はまだあるし、寝巻きはこのクローゼットにあるものを好きに使ってくれ。
何かあればそこにあるベルを鳴らしてくれれば、使いの者が来る」
日帝「はい。ありがとうございます。
おやすみなさい」
アメリカ「あぁ。おやすみ」
アメリカが退出し、部屋に日帝だけになった。
日帝が灯りの明度を下げ、射していた月明かりが部屋に露になった。
ベッドに腰掛けると、ドレスのリボンを緩めて前を少しはだけさせた。
髪をまとめていた金の髪飾り……ゼンマイをパチリと開いて髪の束から外すと、
またパチンと開いたゼンマイを閉じた。
ゼンマイを持ち直すと息を整え、
人間だと心臓が近くにある胸の位置にある小さな丸い穴に、ゼンマイを刺した。
カチカチカチッ…… カチカチカチッ…… カチカチカチッ
ゼンマイをまく音が静かな部屋に響いた。
日帝「………ふー……」
大きく深呼吸をして、異常がないか確認する。
ワォーーーーーン
と、狼の遠吠えが外から聴こえた。
かなり近くから聴こえた。
日帝 (ここら辺には狼もいるのか……)
⚙️つづく🦇