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彼女の余命はあと1年もないらしい。
「仕方ないね」
君はそう言って苦笑いをした。
「…仕方なくねーよ!」
自分はそう強く言いした。
自分の事じゃないのに。
口を出せることでは無いって言うことは、自分が一番わかってるのに。
君は一瞬だけ肩をビクッと上にあげた。
「…ごめんね」
君はベッドの上で座りながら俯いた。
「……なんで…」
自分はか細く、震える声を出した。
「…なんで、手術しなかったんだよ…!」
目から涙が溢れた。
膝の上にある拳にポタポタと水滴が垂れた。
「なんで…って……」
「…いつか人間は死ぬものだよ」
君は横髪を耳にかけながらそう言う。
「……」
死ぬ……?
そんなの分かってる。
君がいつか死ぬことだって、自分が死ぬことだって。
人間が儚く、無様に死んでいくことだって分かってる。
だからって、
命を大切にしないと言うのはどうだろう。
まだまだ生きられる可能性だってあるのに、
単なる予測に過ぎないのに、
そんな稚拙な判断で命を無駄にしていい訳が無い。
「…もう帰る。」
自分はそう言って、病室から出た。
彼女と出会ったのは、合コンでだった。
自分は数合わせというだけで行っただけだったのに。
「おい、トモキー!もっと飲めよー!」
「ちょ、陽平、近い……」
そう揶揄われていると、手をぱちぱちと叩いて笑っていたのが彼女、遥。
俺は遥に一目惚れしていた。
「俺らトイレ行ってくるわ!!」
「(なんで俺まで……)」
顔を真っ赤にした陽平に腕を引かれ、トイレへと向かった。
「…なーなートモキぃ。 」
「ん?なんだよ」
「あの中でかわいー子いる?」
正直言えなかった。
恥ずかしいとかではなく、数合わせという役割で来ただけなのに惚れてしまうのは気まずいと思ったからだ。
「…いねーな。」
そう答えた。
「おれはねぇ…咲良ちゃーん!!」
咲良ちゃんと言う子は、黒髪ロングの胸が大きい子で、右目の下にホクロがある子だ。
いかにも陽平のどタイプってところだ。
「ま、お前のドストライクだもんな。」
「そーそー、バッターアウトー!!っつってな」
1人であははと爆笑する陽平を横に話を続ける。
「…逆にあの中で可愛くない子とかいる?」
最低だ。
女の子はみんな可愛いハズなのに。
そう教わってきたのに。
「んー……」
「遥ちゃんとか?」
マジかよ こいつ。
遥ちゃんは、気遣いもできて、話に反応してくれて、とってもいい子なのに。
…まぁ、見た目で判断する陽平には分からないことだろうけど。
「ごめん、陽平が酔っ払いすぎてて…」
そう言いながら陽平を席に座らせ、その後に自分も座る。
あれから1時間。
「ねーえー、陽ちゃん!好きなタイプとかってあるぅ?」
咲良が陽平を甘い声で誘う。
「おれぇ??」
陽平がそれに便乗して答えようとする。
その時だった。
「う、ぷ……」
遥が口を抑えていた。
「…遥ちゃん、大丈夫?もしかして、吐きそう?」
「ぅ、ごめんなさ…」
次の瞬間、自分の胸元にぱたんと倒れてきた。
「すみませ…あんまりお酒…強くなくて……」
俺はいそいそと遥をトイレへ連れていった。
「大丈夫?」
トイレと対面に座っている遥の背中をさする。
「本当にごめんなさい…」
「うっ……」
遥は吐いた。
咄嗟におお、と声が出てしまった。
とても綺麗だった。
こんなことを言う俺はどうかしていると思う。
ただ、とても美しかった。
彼女の吐き出す物全て。
自分でもこんなこと考えていたらダメだ!と思って言ってもいつの間にか同じ思考に戻る。
「…手伝うよ」
そう言って俺は、彼女の口の中に指を入れた。
その頃に、自分の愛は歪んでいると知った 。