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1,403
ドM☆
20
赤い部屋。
いつもと同じ、あの部屋。
しかし、今日は違った。
鎖に縛られていない。
部屋中を見回してみる。
遠く離れたところに、小さく横たわる人影を見た。恐る恐る近づいていく。
「…!タイキ!」
その人物がわかると、ルイはすぐさま駆け寄った。
「おい!おい!タイキ…っ!」
揺さぶってみるが起きる気配はない。
ルイは辺りを見まわす。扉がある。
その扉を、いつもずっと睨んでいた。
震える手でドアノブにそっと触れる。
何故か、その扉を開けるのがとても怖かった。
黒い影がだんだんと部屋を覆っていく。
ハッと後ろを振り返ると、 その影はルイの体を飲み込もうとしていた。
ルイは倒れているタイキに向かって手を伸ばす。
その影はタイキの体さえも飲み込み、ルイの体もまた、その影に飲み込まれた。
「はぁ…っ!!」
ルイは勢いよく起き上がった。
自分の部屋の寝室。大量の冷や汗がパジャマを濡らしている。
荒い息を吐きながら、隣を見ると、タイキが眠っていた。
ルイは恐る恐るその口元に耳を近づけて、呼吸の有無を確認した。
「…よかった」
静かな寝息が聞こえて、ルイは安堵の息を漏らした。
そっとその髪を撫で、キスを落とすと、ルイは立ち上がった。
キッチンで朝食の準備をしていると、バタバタっと音がして、タイキがすごい勢いで駆け寄ってきた。
『…ルイ…っおまえ、大丈夫か?』
「な、なにが?」
『何って…この数値…アラームが鳴ってたのに、俺気付かないなんて…』
タイキは腕の機械をルイに見せた。
「!…悪夢、みた」
『そんな…昨日あんなにヒーリングを…』
タイキは言って、昨夜のことを思い出して顔を真っ赤にした。
「…でも昨日はちょっと違ってた。タイキもいたし、自由に動けて…」
『俺も…?」
「うん」
『…』
タイキは首を傾げた。
(…肉体的接触を深くすればいいってことでもないのか?)
「…それより、タイキお腹空いてない?朝ごはん作ったんだ。食べよ」
『おぉ!美味しそ〜』
2人はとりあえず食事にすることにした。
『ご飯食べたら健康チェックな』
「え?うん!やった!」
『…なんで喜ぶの?』
「だって俺、タイキの健康チェック好きだもん」
『…』
『熱測るね』
「うん」
2人で隣同士にソファに座る形で、ルイは前髪を掻き上げて額を前に出した。
『…微熱あるね』
「そうなんだ?」
『体はキツくない?』
「スッキリしてるよ!」
『…あ、そう。 …ルイ、手出して』
「はい」
嬉しそうに手を差し出すルイ。タイキが脈を測るのをニコニコしながら見ていた。
『…脈は正常か』
腕の機械を見ると、数値はまだ少し荒れているようだった。
タイキはルイの手を握った。
「…確かにちょっと熱いかも」
『…うーん。そうだよなぁ?』
「…タイキがキスしてくれたら治るかも」
ルイがチューっと唇を突き出す。
『…え…』
タイキの胸がドキドキと高鳴った。
昨日は勢いで最後までいってしまったものの、自分の気持ちを自覚してしまってからは、意識せずにいられなかった。
タイキはゆっくりと顔を近づけた。
ちゅっと唇が重なって、すぐ離れる。
「…え、これだけ?」
『充分だろっ昨日あれだけしたんだから、すぐ良くなるはずだ』
「…やだ」
ルイはタイキの体を両手で挟み込み、すぐさま口付けた。
チュク チュク
『…ん…は…ぁ…っ』
舌が入ってきてクチュクチュ口内を舐め回される。
昨日の情事を思い出して、タイキの体はすぐ熱くなってしまう。
唇が離れるとルイの欲情した顔と目が合った。
『…おまえ、昨日あれだけしたろ。俺は…』
「わかってる」
もう体が限界だ、と言おうとしたタイキに、 チュっと再度キスをしてルイは離れた。
仕事帰りに会う約束をして、ルイは仕事に出かけた。
タイキはその間に、夢蝕症患者研究所を訪れた。
『昨日俺の患者が、ヒーリングをしても悪夢を見たようです。その…けっこう濃厚なヒーリングだったんですけど…』
【…濃厚、というと…性行為までに及びましたか?】
「うっ…は、はい…」
【…そうですか…ヒーリングの効果は、強ければ強いほどいいというものではありません。
他の薬でもそうですが、強いヒーリングには副作用が起きる可能性もあるのです。
特に性行為は、麻薬のようなもので、最終手段と考えて良いでしょう。】
タイキは頭から血の気が引いていくのを感じた。
タイキが歩いていると、 待ち合わせの駅前にルイは背をもたれて立っていた。
さすがモデルというべきか、その姿にドキリと胸が高鳴る。
ルイはタイキに気づくと、被っていたキャップを少し持ち上げてニッコリ微笑んだ。
『…よぉ』
「待ってたよ。早くいこ」
2人は人気のレストランで食事をすることにしていた。
満員のレストランで、ルイは嬉しそうにタイキに喋りかけていた。
「ねぇこの後服見に行かない?」
『…うん、いいよ』
「やった!タイキに似合う服俺が選んであげる」
『…うん、ありがと』
「…?さっきから、タイキなんか元気なくない?」
心配そうに顔を覗き込む。
『いや…そんなことないよ…』
タイキは今日研究所で聞いた話を言い出せずにいた。
「…タイキ、もしかして…」
『え?』
「俺とのエッチが不満だった?」
『!!!』
タイキは飲んでいた飲み物を吹き出しそうになった。
『ケホッゲホッ』
「大丈夫か?」
ルイに差し出されたフキンを口に当てて、タイキはルイを睨んだ。
『おまえ、こんなとこで何言ってんだよ』
(…そうだったらまだ良かったのに)
「じゃあ何かあった?」
『…』
真剣な目で見つめるルイに、タイキは意を決して口を開いた。
『…それが』
バタンッ!!!
大きな音がして、その後悲鳴がレストランに響いた。
そちらを振り向くと、男性が床に倒れていた。
[きゅ、救急車っ!]
ザワめく店内。2人はその男性に近づいた。
男性は完全に意識を失っているようだ。
『…この人、もしかして…』
「…夢蝕症?」
ルイも経験があるからだろうか。
すぐにでたその病名に、タイキははっとして、すぐさま男性に近寄った。
『…大丈夫ですか?』
タイキは男性の手を取る。
しばらく触れていても、何の反応もない。
タイキは男性の顔に触れて、ゆっくり顔を近づけていった。
「ダメ…っ!」
ルイが叫んだ。タイキがルイの方を見ると、震える拳を握り込んでいた。
『…ルイ、あっち向いてろ』
「い、いやだ」
『…』
タイキは男性を抱きしめた。
[…ぅ…]
男性は意識を取り戻したようだった。タイキはホッとため息をつく。
その時、救急車の音が聞こえてきた。
『もう大丈夫ですよ』
「…」
救急車を見送って、タイキはルイの方を見た。
ルイは俯いたまま、タイキの手を取ってスタスタ歩き出した。
『お、おい…どこ行くの?』
「帰る」
コメント
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るぃ狂さん、第7話読了です🥀 今回もすごく好きな回でした…! タイキが研究所で副作用の話を聞いて動揺してるのが胸に刺さる… 特に「性行為は麻薬のようなもの」って言葉、重いし、伏線っぽくてゾクッとしたよ。 レストランで他の夢蝕症患者を助けるタイキを見て、ルイが「帰る」って歩き出すラスト、嫉妬か焦りか…また悪夢を思い出したのかな?続きが気になって仕方ないです。 静かに、次の話を待ってます🌙🤍