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海の紅月くらげさん
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「せんぱい……かわいいこと言わないでよ。せんぱいが他の人を選んだらって思うと……我慢できなくなる。 すげーやだ」
「実里くん……ちょ、どいて……!」
「男と暗い部屋で二人きりなのにさ……警戒心なさすぎでしょ」
あまりにも近い距離に、真剣な眼差しに、ドクンドクンと音を立てて鼓動が速くなる。実里くんの言う通り私の警戒心がなさすぎた。いくら暗闇克服とはいえ、潤達を呼べばよかった。
「誰を選ぶの? 誰が一番好きなの? 一人しか選ばれないんだよ」
あの日見た五色のガラスの靴が脳裏にちらつく。
私が履くのは、あの中で一つだけ。
「王子役もせんぱいの彼氏も手に入れたい」
切なさを帯びた実里くんの瞳が私を捕らえる。
逃げるように視線を逸らした。
こんな体制で、急にそんなこと言われたら心臓が持たない……っ!
「俺、こんなにせんぱいに恋してる」
全身に伝わる大げさなくらい激しい心臓の音。顔が熱くて、呼吸をすることすら緊張する。
こ、これって……告白?
「あの日から、俺……せんぱいのことばかり考えるようになってた」
「実里く」
「キスしてもいい?」
「へ……」
頭が真っ白になった。
「な、なに言って……」
「キスしたいなって」
「キ!? え!?」
ゆっくりと実里くんの顔が近づいてくる。
「だ、 だめ! 待って! だめ……っ」
実里くんの栗色の柔らかい髪が頬を掠めた。
「……」
「……いたっ!?」
唇が触れる寸前のところで、ゴツンとおでこがぶつかった。
「み、実里くん……?」
「……本当はキスしたいし、無理やりにでも独占したい。けど、そんなことしたら俺のこと嫌になるでしょ?」
潤んだ瞳で見つめられながら悲しそうに言われると、胸が苦しくなる。
「せんぱい、好きだよ」
好き。その言葉をはっきり言われたのは初めてだった。
目が合うと、それだけで実里くんの想いが伝わってきて言葉が出てこない。この想いを私はどうやって受け止めればいいんだろう。
「実里くん……私」
「答えは王子を選ぶ時に聞かせてよ。俺のこと好きだと思ったら王子役に選んで」
「え……」
「だから今はこれで我慢」
「っ!?」
大人びた微笑みを浮かべた実里くんが私の頬にそっとキスをした。
「あっははは! すっごい顔!」
「すごい顔って……!」
「どんなましろせんぱいの顔だって可愛いと思うけど?」
「なっ」
「俺は本気だよ」
もう頭がいっぱいいっぱいだ。和葉の言葉や実里くんからの想い。
王子様を選ぶだけじゃなく、実里くんの気持ちにも誠意を持って答えなくてはいけない。