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窓の外には東京スカイツリーが見える。雲が退くと上の展望台が姿を現し、白く輝きだした。机の上の筆箱にも影ができた。教室前方のホワイトボードに書かれた字が読みづらくなる。健太は手でひさしを作って、目を細めた。窓際の最後列とは、そんな席だ。
山田先生が板書きするたび、後頭部の刈り上げが目に付く。わざわざあんな髪形にしなければカワイイのにというのが、女子の間での風評だ。先生は平均台の絵が幾何学的に描かれたそっけないTシャツを着ていて、その盛り上がった胸には「新明党」と書かれた金属製のワッペンが挿さっている。ジーンズのくびれたベルトに右手をついて、ときより左中指でべっこう縁メガネのブリッジ部分を押し上げる。薬指に指輪はない。
健太はネクタイの結び目を緩め、ぷうぎの下敷きで首元に冷気を送った。
隣の美緒を見ると、まぶたの重みと必死に戦っている。難しい漢字や英単語をたくさん知ってる大人が、室温調整になるとセントラル・ヒーティングだからできないという。
ホワイトボードの字が窓側に移ると、山田先生はハンドバックからハンカチを手にした。