ki「ただいま ~」
ym「終わったでぇ ~…」
hr「お、なんか異常あった?」
ki「別になかったで」
hr「ほ ~ん…」
tk「……」
山田の目に、異常はなかったらしい。
山田は、みんなが話している空間の間に入っていった。
俺はただゲームをしていただけだけれど、右肩を誰かにぽんぽんとたたかれ、
びっくりして肩を跳ねさせた。
後ろには、なにやら口パクしているけい。
「はずして」と言っているように見える。
ヘッドホンを外して欲しいのか…、?
そう思い,俺は自分の耳に当てていたヘッドホンを外した。
けいは、深刻そうな、でもいつものへらっとした顔で、俺に話しかけた。
ki「ちょっと、ええか?」
tk「ん、いいけど、?」
ki「…こむぎ ~!ちょっと来て ~!」
km「はいよ ~」
けいは、俺とこむぎを呼んだ。
うたくんとはるてぃーが気にかけていたけれど、
「ま、別に大したことでもないか」
と言うように二人でアイコンタクトを取り、山田ときゅーと話し始めてしまった。
俺らは教室を出て、部室から少し離れた廊下で立ち止まった。
ki「…変なこと聞くかもしれん。」
tk「…変なこと?」
km「おう、なんでもええで!どんとこいや!
のこったで!!」
いや、相撲するわけじゃないんだけどな……。
そうこむぎに突っ込みたい気持ちを抑えて、けいの方を見つめる。
ki「…山田のことで」
km「山田?」
tk「…うげ、何で俺に、?」
ki「……二人が、一番一緒にいるからええなって思って。
ただの俺の想像やから」
km「…?どしたん?」
tk「え、?」
けいがいつもの関西弁と関東弁が混ざった言葉で話す。
話したことは、まさかの山田の話だった。
「最近山田がおかしいことをした」ならわかるけど、
「おかしいところなかった」はちょっとおかしいかもしれない。
隣のこむぎも、
「急になにを言い出すんや」
と言いたげな目で、考えているのかそれとも訳がわかっていないのか,
けいのことをじっと見つめていた。
ki「別に、なんでもええさかい。
『体調が悪そうやった』とか、『調子が悪かった』とかなんでもええ。
だからなんか教えて欲しいねん」
km「教えたところでどないすんねん?」
ki「…いや、山田の泣けない理由を探っててな」
km「泣けない理由、?」
ki「…なんか、精神的に問題があるんとちゃうんかって思て。
目に異常はないねん。考えられんのは精神関係やなって…」
tk「…精神,ねぇ」
目に異常がない、となると…
確かに精神をやられて泣けなくなるっていうのは十分に考えられる。
ただ、山田がそういう病気にかかるとは思えない。
いつもへらっと笑っていて、でもどこか静かな時だってあったかもしれない。
俺がそう考え込んでいると、となりのこむぎがはっと思い出したように顔を上げた。
km「俺わかったわ!
山田の過去が関係しとるんとちゃうんか?」
tk「…過去、?」
km「おん、
…俺も、過去は辛いもんやったからなぁ…
山田の気持ちもわからんでもないわ」
ki「山田の家族になんかあったん、?」
tk「…、!?」
ki「…詳しく」
…初めて聞いた、山田の親が事故死してるなんて。
あいつ、いつも笑ってるし、
別に暗い過去なんかないんじゃないかって一時期思ってたけど、
やっぱ色々あるもんなんだな。
こむぎが、少し暗い顔で俺とけいに話した。
km「俺と山田はな、中学が一緒でずっと遊んでてん。
過去とかも知っとる。
だから、互いに辛かったんやなって二人で支え合ってた。
山田は、お母さんもお父さんのことも大好きだったんよ。
だから、別に家は頗るお金持ちってわけでもあらへんけど、幸せやったんやって。
やけど、いつの日か事故にあってもうたんよ。」
tk「……、」
km「でも、俺は、山田のこと、ずっと羨ましいなって思っとった。
一緒に出かけられて、話してくれて、ええお父さんなんやなって。
やけど…、前の過去は、山田の過去にも関係したのかもしれへん。
俺が山田のことしっとったのに、ムキになっていうてもうたから………」
…過去、そっか、前に山田とこむぎは一回喧嘩したのか…。
………山田__
○○
ymm「晴太 ~、ご飯できたで~」
ym「は ~い!!」
あれは確か……山田もまだ5歳の時やったっけ。
そん時もだいぶガキだったよなぁ……。
嫌いな野菜を残したり、壁に悪戯をしたり…。
そんで、ずっとお母さんに叱られてた。
でも、お父さんは、ずっと山田のことを大事にしてくれた。
ymp「晴太、自分のなりたい姿になってええんやで。
晴太は将来、何になりたいん、?」
ym「おれ、?
……ん ~、おとうさんみたいなひとになりたいわ!」
ymp「お、お父さんになりたいのかぁ……、それは嬉しいわぁ…、
あんな、晴太。
ym「ん、ゆめ?」
ymp「そう、夢。晴太の場合やと、お父さんみたいになりたい。
お父さんの場合やと、みんなを救える消防士になりたい。
…ほら、夢を持ったからお父さんの人生は輝いて、
晴太はお父さんみたいになりたいって言っとったから、人生は輝いとるよね、」
ym「……!ほんまや!おとうさんすごいわ ~!!」
ずっと、お父さんのその言葉を大事にしてきた。
夢を持って、ずっと幸せで……
…でも、
その幸せは、本当に突然プツンとなくなった。
ym「おとうさんッッ!!
なんでやッ!あかん、いやや、おとうさん!!
なぁ、やくそくしたやんかぁッッ!!」
ザーザーと大きく鳴り響く雨の音。
ピーポーピーポーとなっている、救急車のサイレン。
…赤い液体、目を瞑ったお父さん。
ymm「晴太、お父さんは……」
ym「いややッ、!!しんじたくあらへんッ!
おとうさん!!なんでッ、いきしてやッッ !!」
…絶対に、信じたくなかった。
ずっと、幸せそうに笑っていた、父さんが、家族が
大好きやったから。
でも…
やっぱ、現実は変えられへんよなぁ…
ym「なぁ、おとうさん……へんじ、してや…。
おいてかんといてよ……」
…お父さんの最後の言葉は、
……だから、山田は絶対に泣かない。
コメント
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(´;ω;`)⇐感動
んんんんすき、(