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🌸第9話 理由を知りたい
最近のひよりは、陽と話すときだけ少し明るくなっていた。
講義のあと、陽が声をかける。
「小鳥遊さん、今日も部活?」
「うん。今日は読み合わせ」
「また木の役?」
「……違うよ。今日は“風”」
「風!? 木より難しくない!?」
「ふふ……そうかも」
ひよりが笑うと、
陽の胸の奥がまたざわついた。
(……やっぱり似てる)
夕方の光の中で笑うひより。
その姿が、
陽の記憶の中の“ひよりちゃん”と重なっていく。
(でも……なんでこんなに変わったんだろ)
陽はその疑問を、
もう無視できなくなっていた。
🌙図書館での小さな異変
夕方の図書館。
ひよりが台本を抱えて席に座ると、
陽が隣の席にいた。
「あ、小鳥遊さん。今日も台本?」
「うん。明日、発表があって……」
ひよりは少し緊張したように台本を握りしめた。
「緊張してる?」
「……ちょっとだけ」
「大丈夫だよ。小鳥遊さん、読み合わせのときすごく上手かったし」
「……見てたの?」
「たまたま通りかかっただけ」
ひよりは驚いたように目を丸くした。
「……恥ずかしい」
「なんで?すごく良かったよ」
ひよりは照れたように笑った。
その笑顔は、また“ひよりちゃん”に重なった。
(……やっぱり)
陽の胸が強く揺れた。
🌸ひより視点(隠しているもの)
(はるくん……どうしてそんな顔するの)
ひよりは胸がざわついた。
(気づいた……?)
(いや、気づくはずない)
でも、陽の視線は
“懐かしさ”と“探るような優しさ”が混ざっていた。
(……怖い)
(でも……嬉しい)
ひよりは自分の心が揺れているのを感じた。
🌙陽視点(知りたい気持ち)
図書館を出たあと、
陽は一人で歩きながら考えていた。
(小鳥遊ひより……)
(名前も苗字も同じで、笑い方も似てて……)
(でも、昔のひよりちゃんはもっと明るかった)
(今の小鳥遊さんは……なんでこんなに静かなんだろ)
陽は胸の奥に引っかかるものを感じていた。
(もし……何かあったなら)
(知りたい)
その気持ちは、
ただの好奇心じゃなかった。
(助けたい……とかじゃなくて)
(ただ……理由を知りたい)
陽は自分でも驚くほど真剣だった。
🌸ひよりの“影”
その夜。
ひよりは自分の部屋で台本を開きながら、
陽の言葉を思い返していた。
「小鳥遊さん、すごく良かったよ」
(……そんなこと言われたの、初めて)
胸が温かくなる。
でも同時に、
胸の奥に沈んでいる“あの日の記憶”が疼いた。
(……似合ってないよ)
(変じゃね?)
(赤くなってるし)
ひよりはそっと目を閉じた。
(はるくんには……知られたくない)
(あの頃の私を……知られたくない)
でも、
陽と話すと笑ってしまう。
(どうしたらいいの……)
ひよりは胸の奥で揺れる気持ちを抱えたまま、
台本をぎゅっと握りしめた。