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深夜、終電の電車内は、日中の喧騒が嘘のように静まり返っていた。


サラリーマンやOLたちが疲れた顔でスマホを眺めたり、居眠りしたりしている。

元貴もその一人だった。



連日の残業で、体は鉛のように重く、意識は朦朧としている。



座席に座りながら、カクンと首が傾ぐ。



隣の人の肩に、もう少しで頭が預けられそうになるが、寸前でハッと我に返り、ガバッと首を起こした。



瞼が重い。

何度か繰り返すうち、もう抗う気力もなくなりかけていたその時、隣から優しい声が聞こえた。



「大丈夫ですか?」



その声に、元貴はゆっくりと目を開けた。隣には、自分と同じくらいの年齢だろうか、清潔感のあるスーツを着た男性が、心配そうにこちらを見ていた。



彼は、元貴が電車に乗ってきてからずっと隣でうとうとしているのが気になっていた。



「俺の肩で良かったら貸しますけど…!」



男性の言葉に、元貴は「いえ、大丈夫です…」と、とっさに断ろうとした。

見ず知らずの人に甘えるなんて、と躊躇する。



しかし、ここ最近の怒涛の勤務で蓄積された疲労は、元貴の限界をとうに超えていた。



「もし、嫌じゃなかったら、ですけど…」



男性はそう付け加え、少しだけ肩を下げてくれた。

その一言が、元貴の最後の砦を崩した。


彼の優しい眼差しに、元貴の意識はさらに遠のく。



「ありがとうございます…」



か細い声でそう呟くのが精一杯で、元貴はそのまま、彼の肩に頭を預けた。



ふわりと香る、清潔で安心する匂いに包まれて、元貴の意識はあっという間に深い眠りへと落ちていった。



それはまるで、気絶して意識を失うように、深い眠りだった。



滉斗は彼が自分の肩に凭れかかってきたことに、内心ホッとした。これで少しは楽になれるだろう。



「あの、もし差し支えなければ、最寄り駅はどちらですか?」



滉斗は彼を起こさないよう、ごく小さな声で尋ねてみた。



しかし、彼は少し唸っただけで、すぐに規則正しい寝息だけが聞こえてくる。

完全に眠ってしまったようだ。



仕方ないな、と苦笑しながら、滉斗は隣の人の顔をそっと覗き込んだ。

疲れているはずなのに、どこか幼さが残る寝顔に、ふと胸が温かくなる。



その時、隣で眠る彼のスーツのポケットから、少しだけはみ出している社員証が目に入った。



『〇〇商事 営業部 大森元貴』



名札に書かれた会社名と氏名に、滉斗は目を瞠った。まさか、と自分の社員証に目をやる。

同じ会社名、そして同じ『営業部』。



奇跡のような偶然に、滉斗は小さく息を呑んだ。こんなことってあるんだな。

隣で眠る元貴を改めて見つめ、自然と笑みがこぼれた。



「次は、〇〇、〇〇。」

電車は終着駅へと近づき、車内アナウンスが響く。自分達の最寄り駅。



滉斗は元貴の肩を優しく揺らしてみたが、元貴は身じろぎ一つしない。



「大森さん、着きましたよ…?」



少しだけ声を大きくしてみるが、大森さんは深い眠りの中にいるようだ。

完全に熟睡している。



困ったな、と滉斗は内心思った。このままでは、彼を置いていくこともできない。

かといって、駅のベンチに寝かせておくわけにもいかないだろう。



滉斗は、困っている自分を差し置いて眠りこける大森さんの顔をもう一度見た。

そして、ため息一つ。



「…仕方ないな。うち、来るか」



そう呟くと、滉斗は彼の体を慎重に支え、電車を降りた。












「運命」と思える君

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コメント

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最初の出会いの切り出し方が斬新すぎて素敵です。続きを楽しみに待ちます♡♡

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