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コンコンここをノックするのはいつぶりだろうか
「はいはーい、入っていいよぉ〜」
出てきたのはカフェの店長、一ノ瀬遥斗さん…では無くノセさんだった
あの日
依頼を無償で引き受けると言ったことをずっと覚えていたらしく どうやら今日がその決行日らしい
そして俺は今日死ぬかもしれない
あのノセさんが俺の力を借りに来るほどの依頼だ
「まぁまぁ座りなよーなるちゃん♡」
毎回のごとく甘ったるい声で俺の名前を呼ぶ
ただいつもと違うのはカフェのエプロンなどはつけてなくその代わり顔を隠すようにしてうさぎの仮面を付けている
彼のいる部屋は俺の仕事場とは違いまるで普通の家のような妙な温かさがあった
「でねでね、依頼っていうのはー」
そう言ってひとつのファイルを取り出す
「お化け退治なんだよねぇ」
「お化け退治…?」
人殺しとかではなく?
「うんそう。うち基本的には何でも屋さんだからこーゆう依頼もたまーに来ちゃうのよ」
「なるほど」
俺居なくて良くないか?
「うーん要らないだろって顔に出てるよ?なるちゃん」
出してるんだよって言いたくなってくる
この人とは本当に昔から合わない
「この出てくるお化けが厄介なのよ〜なんと!かの有名な豊臣秀吉!」
「は?」
絶対嘘だろ
行く価値なしと俺の中でハンコが押された
適当に行きました何も無かったですで済む話だ
「っていうのは冗談だよぉ、出てくるのは見た目は普通のサラリーマン。けどね、君の同業者が見たって言ってたのよ〜しかもそいつは」
「東雲 綾人」
「シノノメ…?まさか雲さん?」
「そうご名答!!」
「いやいや、ありえないそもそも怨霊なんているわけが…」
「見た人はみんな裏関係の仕事に就いている。一般人は誰一人としてこの噂を知らないわ」
「お化けがいるにしろ居ないにしろおかしくない?そんなピンポイントで裏社会の人間の前だけに姿を表すなんて」
それはその通りだ
しかもわざわざ東雲綾人の姿だということは彼のやったこともしくはその情報まで手元にある可能性がある
これが東雲本人にしろ誰かのイタズラにしろ潰さなければならない
じゃないと裏世界の均衡が崩れる
「それじゃ!今日の夜ここに集合ねぇ待ってるよ♡」
まるでデートに誘うようにそういった
「分かりました、失礼します」
一例をしてノセさんの職場から離れる
東雲綾人…
本名を聞くのはこれが初めてだ
彼は、昔裏社会に侵入していた者の1人だった
噂では物腰が柔らかくいつも穏やかな性格だったそうだ
その時期にたくさんの諜報員が侵入していたらしく裏社会の殆どの人間が一丸となってそいつらを炙り出し虐殺した
ただ、東雲綾人だけはバレなかった
しっぽを出さずにほぼ全員の情報を奪い去ったのだ
顔、本名、年齢、職業、家族構成、住所
全てを奪い去って行ったのだ
裏世界の人達は躍起になって彼を探した
しかし彼が見つかることは無かった
そんな中彼を見つけ殺したのが
ノセさんだ
東雲綾人の怨霊が出たということは誰かが彼の情報を持っている可能性がある
共有していた…?
俺はどの期間彼を探していたのか分からない
1日2日あれば共有ぐらい誰にもできるだろう
もし共有していれば…
けど、なんで今頃?
情報が来た瞬間すぐ公表すれば良かったものをなんで今こんな存在をアピールしてきたんだ?
やっぱり、お化け…?
わけない
そんなものがあるなら殺し屋なんて廃業だ
殺した人間がお化けになって出てきたら殺す意味も殺される痛みも要らない
それにまた会えるなら…
誰も悲しまずに済むのにな
何一般人の思想にひたってるんだ
俺が殺してるんじゃないか
そんな被害者ズラするなよ。お前はいつまでも加害者だ
そう言い聞かせる
人を殺したあの日から俺は普通になんてなれないんだよ
じゃないと今までの俺を否定しているようで、とても耐えられなかった
あぁ、やっぱり俺ってもろいんだな
「…」
なんでか涙が止まらないな
もし、殺した人に会えるなら真っ先に言いたいことがある
言う権利なんてないし自己満だとわかっている
ただ…
そこで思いとどまった
「寝よう」
疲れてんだよ、夜まで寝てしまおう
何となく足を早めた
ーーー設定ーーー
東雲 綾人(しののめ あやと)
当時27歳
裏世界に侵入してきた警察
一ノ瀬 遥斗(ノセ)に殺された
殺し屋の時の名前は雲や綾と呼ばれていた
中々の実力者だったらしい
ーーー補足ーーー
殺し屋同士、顔も知らない人もいれば本名を知らない人もいる
余程信用してなければ教えることは無い
マスクは自分の昔使っていた仮面を使う人もいればわざわざ自分で作る人、依頼する人など様々だ
組織に入っている人はとりあえず困ったら頼ってくれレベルの関係。一ノ瀬遥斗のように個人営業していたり桐生弓弦のようにただ何となく裏世界に足を踏み込む人も多くは無い。