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彼女を追いかけて、路地の奥に進む。この辺りは何度も通ったはずなのに、この路地に気づかなかったのは単に周囲に目が行かなかったせいなのか、他に理由があるのか。
どこに向かっているんだろう。
彼女の背中は、遠いものの認識できる距離だ。こういう路地には大体バイクか人か、何かしらの生活感が見えるものだが、この路地にはそういった感じが見えない。そう…オレは違和感を覚えつつも彼女を追いかけているのだ。どこか、現実離れしたこの空間は、ひょっとして…。考えかけたことを読んだように、彼女が振り返った。光の当たり方によって奥深い森林の葉のような緑色に見える長い髪。幸福の宝石を閉じ込めたような、ぱっちりとした瑠璃色の瞳。折れそうに細い体も、あの頃と変わらない。
あら、りゅう。久しぶりね。
フワリと彼女が笑った。あの頃と、まったく変わらない無邪気『そうな』笑顔。本人の申告が正しいなら、千年前から変わらない、らしい。
×××様。こんなところで何を?
思わず問いかけた。だって、ここは本来、彼女のいるべき場所じゃない。オレが彼女と別れた理由は、彼女が『一緒に行けない』と言ったからだ。彼女が、あの場所から動けないのだ、と言ったから。それなのに、なぜここに。
ふふ。何をしてるのかしらね?
コテン、と首を傾げる様子も、昔と変わらずあざといと思うのに、可愛らしくみえるのはナントカの弱みか。
久しぶりに会えたのだもの、少しお話でもしない? 私と別れて、今までの話とか?
気付いたら、彼女は目の前に移動していた。いや、実際はオレが移動させられた、のかもしれない。ニコリと微笑まれるとオレは魔法にかかったように頷くしかできなくなる。いつの間にか、彼女に左腕を取られて、更に奥へと進んでいくのだった。