鏡ダンジョン、相変わらず足元は血で濡れている。
「ほとんど倒すとは…流石なり」
彼女の吸っている煙草の煙がこちらに流れてきたが、返事という返事はなかった。彼女らしいと言えば、そうだろう。
この煙草の独特な煙にも慣れたものだ。初めのころ、咽た記憶がある。
「あと一人なり」
「見ればわかる、残りはお前がやれ」
珍しい事を言う。いつもだったら、彼女が我先にと倒しに行くだろうに。意図は…先ほどの笑みを見れば分かる。
目の前の敵に銃を向ける。撃て。
人間とも言えない何かが弾けた、血が、地面と体にこびりつく。赤い絵の具と表現するのが良いのだろうか。きっと、過去の私もそうしているはずだ。
この悲惨とも言える光景を見て彼女は笑っている。こちらに向くことのない、その笑顔を見つめている。私も弾ければ良いのだろうか、などと考えてしまうのだ。管理人に呼ばれた気がした。
「そろそろ進むなり、手を」
手を伸ばす。掴まれる事は無かったが、その代わりに手が伸びてきた。その手を取る。
「俺が、お前の手を取るんじゃないだろ?」
「あ……うむ」
見せつけるかのようにそのまま恋人繋ぎに持ち込んだ。この体の持ち主に怒られてしまうかもしれない。この娘の方には特に。
靴で死体を踏んだ。血が滲む。どうだっていい。
「ふぅ………早く離せ」
「もう少しだけ」
呆れた、そんな顔をしている。
手を強く握られた。長くはない爪が食い込んで少し痛いが、それもまた愛おしいものである。
「あいつらにも呆れられて良いなら、勝手にしろ」
相変わらず血まみれだが、私たちが睦み合うには都合のいい場所だ。煙草の煙が顔にかかる。また少し咽た。
コメント
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センシティブ扱いされててウケますね。