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蒼「悠真は…覚えていなかったんだ、あの写真を。」
凛花「お見事です。さすがですね!」
そんなことを話していると、先生が俺たちに話しかけてきた。先生の手には何枚かの紙がある。その紙に何が書かれているのか気になったが、先生はそれよりも気になる発言をした。
先生「答えはわかりましたか?」
透「答え…?先生は悠真の事情を知っていたのですか?」
先生「それは勿論。私はみなさんの担任教師ですから。…あなたたちの答えを聞かせていただきましょうか。それが正解ならば、『藤堂悠真』の詳細をお教えしましょう。資料はここにありますから。」
俺は今まで凛花と透と一緒に考えていたことを話した。すると先生はにこやかに笑い、手を叩いた。そして、机の上に持っていた資料を置いた。そこには、『藤堂悠真』という題名がついた書類で、顔写真と今までの詳細が書いてある。
『藤堂悠真(とうどうゆうま) 都立桜ヶ丘高校普通科所属1年3組出席番号23番
誕生(0歳):母親が塾講師、父親が学校教師の家に生まれる。両親の性格に問題なし。
保育園入園(2歳):保育園に入園。母親が送り迎えをしている。特に問題は見られなかった。夫婦間も問題なし。
小学校入学(6歳):姫宮小学校入学。両親・悠真ともに精神的・身体的問題なし。七瀬凛花と出会う。
小学校卒業(12歳):姫宮小学校卒業。両親・悠真ともに精神的・身体的問題なし。七瀬凛花と別れるが、学校が同じの友達がいたため、特に問題なし。
中学校入学(12歳):姫宮中学校入学。両親・悠真ともに精神的・身体的問題なし。しかし、とある交通事故に巻き込まれ、大怪我を負ってしまう。悠真に精神的な揺らぎあり。
事故後(12歳4ヶ月):怪我でしばらく病院で入院生活を送る。両親が多忙でなかなか会いに来てくれない ことと、慣れない生活が続いたことで精神的に大きな揺らぎあり。
事故後(12歳8ヶ月):交通事故含め今までのことを忘れる。両親は動揺していたが、悠真のことを受け入れる。悠真は記憶を無くしたが、何か他人を傷つけてしまっていないか、迷惑をかけたんじゃないのかということが思い出せなくて罪悪感を抱いている。
中学校卒業(15歳):姫宮中学校卒業。病院からは退院したが、まだ思い出せない記憶があることで精神的には不安定が続いていて、高校に入学したものの不登校になっている。
ーーーこのことから、星宮学園に編入することを推奨する
都立桜ヶ丘高校普通科生徒指導係より』
…こんなことがあったとは少し意外に思った。初めてあいつを見た時の雰囲気からは感じられなかった。それに、記憶喪失だったとは…写真を見ても思い出せないはずだ。あの写真のことは覚えていないからだったのか。そんな時、悠真が目を覚ました。
悠真「んぅ…、あれ?僕今まで何して…?」
凛花「目が覚めたのですね。…私が知らない間に大変なことになっていましたのね…」
悠真「え…っ?なんの話…?!」
先生「悠真くん、これが君の過去の全てだ。君にその覚悟があるなら、読んでみて。」
悠真「……っ、僕…、僕は……知りたい!その紙、見せてください!」
しばらく1人で紙を眺めた悠真は、何故か嬉しそうに笑った。気がおかしくなってしまったのかとでも思ったが、そんな心配は必要なかったようだ。
悠真「よかったぁ…!!僕は何も…!誰かに嫌なことしたとか、傷つけたとかはないんだ…!」
透「そうみたいだ。よかったな。」
蒼「…でも、これで終わりではないんですよね? 新しい光を掴むってことは何か解決策を考えなきゃ…」
先生「今回はその必要はなさそうですね。悠真くんに必要だったのは、自身が何も傷つけていないという『確証』でした。記憶がない悠真くんは、自身の疑惑を自分で晴らすことができない状況にありましたから。」
そう言うと、先生は悠真の肩をぽん、と軽く叩いた。そのあとで、よかったですねと言って微笑んだ。悠真は笑いながら、とても満足したような顔をした。その笑顔は、凄く眩しかった。記憶をなくしても、誰も傷つけていないという確証が持てたからこれから悠真はきっと新しい道を進んでいくんだろう。…俺には到底できそうもないことだ。
先生「それでは、皆様そろそろ夕食にしましょう。その後に学生寮にも案内しますね。」
陽翔「ええ?!本当に帰れないのかよ…。」
先生「それはそうです。皆様のことです、家に帰ったらまた明日からはここのことは忘れて学校に無理して行こうとするのでしょう?そんなことしたら壊れてしまいますよ?己から試練を課す必要はないのです。」
透「それは…そうかもしれないですね。」
夕食兼悠真が過去を克服した記念パーティーをした後に、学生寮へ向かった。学生寮はまあまあの広さがあって、リビングには大きなソファと長いテーブルがあった。個人の部屋割りは既に先生の中で決まられていて、個人の部屋の内装は一人一人違うらしい。おそらく、この部屋でトラウマウィを思い出すことがないようにするためだろう。部屋に通された俺は、ベッドにダイブしたら疲れていたのかすぐに眠ってしまった。
Next class……