テラーノベル
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岩本side
打ち上げの会場は、まだライブの余韻でざわついていた。
グラスのぶつかる音と、誰かの笑い声。その中心に——佐久間がいる。
「さっくん、飲みすぎだって〜笑」
そう言いながら、また誰かがグラスを差し出す。
「にゃはは〜俺大人だからぁ」
佐久間は断れず、グラスを空けてしまう。
頬は赤く、目は潤んで、やけにスタッフと距離が近い。
「さっくん、顔赤いよ〜」
「かわいい〜♡」
肩に手を置いたり、腕にしがみついたり。
いつものことだ。無意識で、人を惹きつける。
……分かってる。
でも スタッフにまで同じ距離感で笑いかけているのを見た瞬間、
胸の奥がキュッと締め付けられた。
(やめろよ……)
声には出せない。
片想いだから、ずっと。
佐久間の横に立つ資格がないことも、
この気持ちを知られたら、関係が壊れるかもしれないことも。
それでも、視線は離せなかった。
「照、顔こわ」
不意に隣から声がする。ふっかだ。
「……別に」
「嘘。佐久間を見てる目、完全にそれじゃん」
岩本は言い返せなかった。
深澤はため息をついて、佐久間の方を見る。
ベロベロで、艶っぽくて、無防備で。
「ねえ、照」
「……」
「このまま放っておいたら、誰かに持ってかれるよ」
その言葉が、静かに刺さる。
「佐久間はさ、気づいてないだけで、
照の優しさにちゃんと惹かれてると思うよ」
……そんなこと、あるわけない。
そう思おうとしたのに、
次の瞬間、佐久間がふらついて、誰かに倒れかけた。
反射的に、体が動いた。
「危ねえ」
腕を掴んで、引き寄せる。
佐久間の体温が、近い。
「照……?」
ぼんやりした目で見上げてくる。
「大丈夫か」
「うん……なんか照の手、気持ちいいねぇ」
無邪気な一言。
それだけで、心臓がうるさくなる。
「俺送るわ」
岩本はそう言って、佐久間を支えた。
深澤が小さく笑う。
「いってらっしゃい。ちゃんと、言えよ」
⸻
岩本の家
部屋に入った瞬間、静けさが二人を包む。
佐久間はソファに座らされて、少しだけ正気に戻ったようだった。
「……俺、重くない?」
「重くねえよ」
そう答えながら、岩本は距離を取ろうとして——やめた。
今逃げたら、きっと一生言えない。
「なあ、佐久間」
「んー?」
名前を呼ぶと、佐久間が顔を上げる。
その目に、いつもの軽さはなかった。
「俺…佐久間のこと好き」
空気が止まる。
佐久間の目が、驚いたように見開かれる。
「……え?」
「触られるのも、近いのも、正直……全部嬉しかった」
「でも、それで勘違いしたくなくて」
言葉が、少し震える。
「佐久間が誰にでもそうなの、分かってるから」
沈黙。
長く感じた数秒のあと、佐久間が小さく息を吐いた。
「……俺さ」
「照がそんな目で見てること、初めて知った」
ゆっくり立ち上がって、岩本の前に立つ。
「でも、……嫌じゃないよ」
その一言で、理性が切れた。
岩本は、そっと佐久間の頬に手を伸ばす。
拒まれていないことを確かめるように。 岩本はゆっくりと距離を詰める。
「それどういう意味か分かって言ってる?」
「わ、わかってるもん…」
グイッと身体を引き寄せ、唇を重ねた。
「…んんッ」
佐久間の吐息が部屋に響き渡る。
夢のようだ…
ずっとこうしたかった
佐久間の呼吸が、少しずつ乱れていくのが分かる。
部屋の隅で時計の針がカチカチと音を立てて、
このキスが現実であると意識させた。
「……んんッ、照ッ」
「ッ!」
「ごめん。勢いで——」
唇が離れると、
佐久間が岩本の服を掴み、小さい声で呟いた。
「……もう一回して?」
上目遣いで見つめる佐久間から岩本は一瞬言葉を失った。
——それを言われて、耐えられるわけがなかった。
「……佐久間」
名前を呼んだ声は、
自分でも驚くほど低い。
次の瞬間、一気に距離を詰め
唇が重なる。
さっきより深く、確かめる余裕もなく。
佐久間が息を呑むのが分かる。
でも、離れようとしない。
それが合図みたいだった。
岩本の腕が伸びて、 背中を抱き寄せる。
そのまま、体重がかかる。
「……っ」
視界が反転して、
ベッドに押し倒される感覚。
シーツが軋む音。
覆いかぶさる影。
佐久間は驚いたまま、
でも、拒む言葉は出てこなかった。
赤くなった顔で、
ただ岩本を見上げている。
理性が、完全に遅れてついてくる。
——もう、戻れない。
そう分かっていながら、
岩本は距離を離せなかった。
二人の呼吸が重なったまま、
夜は、さらに深く沈んでいく。
コメント
2件

わぁー😆😆😆 ニコイチだぁ💛🩷💛🩷 さっくんひかるを受け入れてくれてありがとう💗

素敵なニコイチ💛🩷のお話、ありがとうございます。