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ネコの退屈
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鬼太郎side
彼女は、僕の全てだった。千代ちゃんが亡くなったのは知っていたのに、曾孫である彼女を責め続けた。
君が居なくなれば、初恋だった千代ちゃんと一緒に入れたのに、とそう言うと彼女は頷いて無表情に、その通りです。と言った。
僕は彼女にわざと指鉄砲やリモコン下駄を当てながら、教えた。見えるところにはつけないようにした。
だから、彼女の体は傷だらけだった。
妖術の一つである<極楽術>でも直せない彼女の傷は可哀想ではあったが、しょうがないことだと思っていた。
1度、指鉄砲の当たり所が悪く、彼女の左腕を貫通してしまった。
しまった、と思ったのに彼女は左腕を抑えるものの、痛みの声を発せずにいた。痛すぎたのか、と思ったが、そうでは無いのようですぐに妖術である<極楽術>を使い、直していた。
その直後、彼女は左に倒れ込んだ。
彼女が倒れる姿はスローモーションだった。
顔は歪まず、そのままの身体で地面に叩きつけられた。
いつもなら、起き上がるのに起き上がらない彼女。
遠くから見ていた砂かけ婆や子泣きじじい、猫娘も駆け寄って彼女を見た。
彼女の目は空いていて、その目を緩めた。
「……なさ……い……」
か細い声で何か言った。
「……す……ぐに……たつ……か……ら……」
彼女は体を起き上がらせようとした。
腕に力が入っていないからか、すぐにベチャ、と地面に吸い込まれるように倒れてしまう。
「……ぁ……れ……」
彼女自身が1番、困惑していた。
なぜ、力が出ないのか。それは<呪術師>で言う<呪力>の現象だ。彼女の場合は<呪力>が多いからかないのに、彼女はここ最近の行ったり来たりを繰り返すうちに、<呪力>が少ししかなかったのだ。
「今日はもう終わりだ。せい」
僕の言葉に彼女は、僕の方に目線をあげる。
「……い……ゃだ……」
周りにいる3人の手助けを借りずにゆっくりと立ち上がる、彼女はいつも変わらない無表情。
そんな彼女が……
「……い……ゃだ…よ……きたろ…うさ……ん」
泣きながら訴えた。
その頬は紅潮していて、息苦しそうだった。
ケホケホッと咳を漏らす、彼女はその風邪を持ち前の無表情で誰にも悟らせられることなく、受け止めていたのか。
「せいちゃん」
父さんが僕の髪の毛をかき分けて、彼女を呼んだ。彼女は体をビクッと震わせ、焦点の合わない目で僕と父さんを見た。
「疲れが出とるんじゃ、お主に今必要なのは休息じゃ。」
彼女は首を横に激しく降った。
子どもの癇癪にのようだった。
「私、まだできます。鬼太郎さんや皆さんのお時間をいただいているのに、休息?私には必要ないです。」
先程のつらそうな声からきちんとした声。
まだ、大丈夫だと。
「彼女はまだ大丈夫だと言っています。父さん。」
「な!?鬼太郎!?」
僕がそう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
父さんは驚いたような声を上げた。
その顔は子供に欲しいものを与えたような顔に似ていた。
だから、僕は構わず彼女に指鉄砲を打った。
彼女はそれに答えるように指先に呪力をのせて僕に向けた。青い光と黒い光がぶつかり合って彼女が吹っ飛ばされてしまう。
声を上げずに彼女は高く、空へ打ち上がった。
彼女は体制を変えずにほおりだされていた。
猫娘は彼女の方に手を伸ばしていた。
「せい!!!!!」
猫娘が彼女の名前を必死に呼んだ。
人間の彼女があんな高所から落ちたら、死んでしまう。何故か、僕はそれが怖かった。構わず打ったのは僕なのに。彼女に嫌われてしまうと考えると、冷や汗が止まらなかった。
気づいたら、僕は彼女を空中で抱きとめてそのまま地面に着地した。彼女は目をつぶり、眠っていた。彼女は軽かった。彼女の体は熱を発していた。
「せい、」
ふぅふぅと彼女は息を漏らしていた。
何も答えない。
「せい、」
髪の毛が逆立つのを感じる。
彼女は目を開けない。
「せい!!!」
僕が呼んでいるんだ。
彼女はまぶたを震わせながら、虚ろな目で僕を見た。
「……気がついたようじゃの」
父さんの声は低く、怒っているのが明確だった。
彼女は僕が撃ち抜いた左腕をゆったりと持ち上げて、僕の頬に左手を添えた。
何も言わずに、彼女は意識を手放した。
僕たちは妖怪ハウスで彼女の額に濡れたタオルを置いて目が覚めるのを待った。
何となく、僕は彼女の左手を掴んでいた。
確かに君と僕は、“縛り”をした。
君が死んだら魂は好きにしていいと……
当時は思った。地獄に送ってやると。
でも、今はずっと一緒にいてその表情をコロコロと変えて欲しいと、ここに住もうと。言うんだ。
でも、彼女を目にするとその言葉は出ずにただ罵るだけ。
だから、“罰”が当たった。
「長い間、ご指導ありがとうございました。鬼太郎さん、猫娘さん、皆さん。」
「曾祖母の遺影を持ってきたら、私はもうここに近ずきません。申し訳ございませんでした。
魂についてもお願い致します。」
土下座するせいに、僕は身体が固まった。
修行の合間に人で言うデェトに行ったり、話をしたりしていたのにせいにとってはそれは<友>ではなく、<罪滅ぼし>であるとわかったからだ。
多分、せいは僕たちに助けを請わない。
自分で何とかする気なのだろう。
せいは僕たちが千代ちゃんの代わりだと思っていたのか?最初から?
僕は、素っ気なく「そう」としか言えなかった。