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携帯の時計で、今何時か確認した。17時だった。恐らく、涼しい夜になれば、どんなにいいか。
その時は気休めだが、広大な星空の見える夜を期待したい。
だが、今は空には夏の雲が広がっていた。東の方からの風が吹くと、こんな灼熱地獄の真っただ中でも一瞬だけ気持ちが良くなった。
1時間もしないうちに汗だくになった。今だ西のほうには幾つかの池が点々と見えるが、そこまでは程遠い。ラクダ色のワイシャツがびしょびしょになり、肌にくっついてべたべたする。私たちは持っている僅かな生暖かい紅茶を半分以上飲んでしまっが、それでもやはり、仕方なく喉が渇く。
気温は真夏の35度くらいだろうか、体感温度は幾つなのだろうか。
後ろを見ると、さっき迄いたところの雑木林を除いて、芝生は地平線まで伸びている。炎天下の真っただ中、背筋が凍りそうだ。この不可解な体験の恐ろしさを改めて認識してしまう。
それでも、小さい希望を持って、三人は果てしない西に向かった。
ごくりと紅茶をまた一口。
紅茶が無くなってしまった……。
「あたし、誰が何と言おうと、池に顔を埋めて大量に池の水を飲むわ!」
安浦は力強く空になったテイーカップをフリフリ。
「私も!」
「俺も!」
激しい太陽光を耐えながら歩いていた。とにもかくにもこの上なく猛暑が厳しい。
炎天下の広大なゴルフ場へと私たちは、有無を言わさずに放り込まれたのだ。
芝生は歩くと気持ちよくクッシャリとしていて、涼しい風がいくらか顔を撫でてくれた……。もしこんな状況でなければ、三人で楽しいピクニックが出来たであろう。
雑木林からかれこれ炎天下の猛暑の中、2時間くらいは経っただろうか。携帯の時計を見やると今は19時半だった。夜が無い。
「呉林。やはり、夜が無いみたいだ。この世界。……まずいぞ」
呉林は自分の赤い携帯を取り出し、時計を見る。疲れた顔で、ああ、そうね。と答えた。
二人ともさすがにこれ以上ないほどしんどくなったようで、押し黙っていた。私はぼんやりとした頭と視界で、ふらふらと芝生の上を歩く。小心者の私は早くも家へと帰ることしか考えなかった。
突然、辺りが薄暗くなりだして、空がところどころ曇って来た。夜ではない。雨が降りそうだった。