片思い→両思い
《ロウside》
元々明るい性格のやつには苦手意識があった。だから
初めて会った時、こいつとは絶対に仲良くなれないと思った。
でも、実際一緒に過ごしてみると案外良い奴で、
煽りあいも出来て、本当に”男の友達”って 感じがした。
だから、ずっとこのままだと 思ってたのに最近は、
気づいたら目で追ってて、隣に居ないと 寂しく
思うようにまでなってて。末期立と感じた。それでも
この関係は手放したくなくて、もし自覚することで伝えることで
もう二度と近づけなくなったらって考えるだけで怖くなる。
もう二度とあぁいう風には呼んでくれないし、煽っても
くれなくなる。誕生日や年越しとかの時以外
話せなくなるん じゃないかって思うだけで苦しくなる。
隣に居ないだけでも寂しいのに、それ以上は耐えられない。
クラスの奴らも言ってたが騒がしいあいつが居なくなるだけで
一気に寂しくなる。あいつの元気に慣れれば、次からは
足りなくなって、あいつじゃないと満足出来なくて。
結局、邪険に思いながら皆、あいつのことが大好きで。
俺だって例外じゃない。最初はただ単に嫌いだった。でも
気づいたら、あいつが傍に居るのが当たり前で、楽しんでて。
だから、こんなことに気づきたくなかった。こんな思いに
名前なんて着いてしまえばきっともう戻れない。…同じ思いに
なれる確率なんて分からない。きっと、低い。告白したら
困らせそうで、関係が壊れそうで、伝える勇気なんてない。
だけど。
《ウェンside》
最近はろうキュンと一緒に居るのが1番楽しい。もちろん
オリエンスと居ても楽しい。でもやっぱり煽り会い出来るので
言えばろうキュンが1番。何をしてもどんなこと言っても
受け止めてくれて嬉しい。でも、なんだか近頃のロウきゅん…
ロウは思い詰めてそう。反応も遅いし、デイリーボーナス
にも気づかない。さすがの僕もなんか心配で近よったり
声かけたりするけど、ふいって顔逸らされてなんか、悔しい。
前までだったら僕が近寄るくらい許してくれたのに
もしかしたら嫌われちゃったのかな。それだったらやだなぁ。
僕、ろうきゅんのことは結構とくべつ扱いしてるのに。
もちろん、恋人とかそういう考えはないけど、”友達として”
ずっと大好き。きっと、ろうきゅんだって同じはず。
だと思ってた。
「ウェン、」
急に呼ばれたからとりあえず振り返ると寂しそうな顔した
ロウがいた。夕日に照らされるろうが綺麗で思わず
見とれてしまいそうだった。
「なぁに、ろうきゅん」
「きゅん、言うな」
いつも通りの会話をする。それでもロウの表情は寂しそうなまま。
「…要件は?」
「……、俺…ウェンのこと好きみてぇだわ」
予想外の一言に言葉も出なかった。音が消えて、この教室に
ロウしか 居ないみたい。いや、実際みんなはもう帰ってて
僕ら二人しかいないんだけど。ロウの真っ直ぐな瞳に見つめられて
言葉の意味が理解出来なかった。好き。真っ直ぐな言葉が
少しずつ胸を支配して、呼吸すら止まってるように感じた。
僕が何も言わないから遂にはロウが俯いてしまって苦しそうに
声を吐き出した。
「やっぱり、迷惑…だよな、、?」
震えた声で小さく聞いてくるロウの声は形容しがたい程
僕の胸を締め付けてきた。苦しくて、今にもロウのことを
抱きしめたくなった。でも、答えないとイケナイ。
…僕はロウのことをそういう目で見たことはなかった。
もちろん好きではある。でもそれ以上感情が見当たらなくて
どう答えたらいいのか分からない。…もし、断ってロウを
傷つけてしまったら?そんなの僕は耐えられない。誰よりも
大切だからこそ、答えたくない。この感情はロウの好きには
きっと釣り合わない。僕の好きとロウの好きはきっと対等じゃない。
でも……、きっと僕は断れない。
「わ、かった……、まだ、わかんない、けど、…付き合お。」
ほら、また、こうやって。受け入れちゃう。でも
僕だってロウといて苦労する訳じゃない。きっと僕にだって
得はあるから、断る方が辛い。
「…お、まえ、そんなふうに決めて…」
ロウは僕の回答にびっくりして顔を上げた。その顔は余りにも
悲しそうで不安そうで、瞳は潤んでて、もう泣きそうだった。
こんなにも歪んだ表情のロウは見たことなくて僕も
思わず泣きそうになった。それでも何よりもまずは
ロウを抱きしめたくて、優しく背中に手を回すと小さい子
みたいに大人しく抱きしめてくれて、ロウの白い肌と並ぶと
僕の赤い肌は余計赤く見えた。まだ、蝉がうるさく鳴くような
暑い夏なのに、ロウは強く抱き締めてくる。密着して、暑くて
それでも離れたくないみたいに強く、優しく抱きしめてきて
ふと、首に冷たいのが当たって、ロウが泣いてることに気づいた。
優しく背中を擦ると鼻を啜る音が聞こえて、なんとも言えない。
「ロウ、泣いてるの?」
「うるせぇ、」
僕の煽りじゃない心配にロウは恥ずかしいのか勢いのない声で
うるさいって返してきた。それでもやっぱり顔が見たくて
少し体を話すと、ちょっとクシャッとした顔で鼻を赤くしてる
ロウがいて、…可愛い、って思った。なんか、こんなこと
思ってるなら僕も好きなのかなって考えちゃう。もう少し一緒に
いたくて、手を握ってみると、ロウはビクって反応して
信じられないって顔で僕を見てきた。
「…お前、急すぎねぇ?」
ロウはそう言いながらも僕の手を握り返してくれた。嬉しくて
ついにこって、笑っちゃってそれを見たのかロウも嬉しそうに
笑ってた。付き合ったら、友達のままではないけどそれでも
この関係の延長線になるんだったら嬉しい。まだ僕の気持ちは
好きに固まってはない。あちこちにばら撒かれてるけど、きっと
いつか、好きっていうひとつになると思う。ロウの好きに
僕もちゃんと応えたい。
「ロウ、ずっと一緒に居たいね」
僕は、ロウとずっと一緒がいい。何年経ってもこのまま居たい。
煽って煽られて、一緒に笑って、泣く時は泣いて。みんなと一緒に
生きていきたい。おじいちゃんになっても、皆でバカしてたい。
「当たり前」
小さく聞こえたロウの声は、それでも確かに僕の耳に届いた。
その答えが嬉しくて、僕もって笑顔で返してあげた。
《ロウside》
あれから8年。俺たちは24歳になった。
「ウェン、起きて」
「ん…」
ウェンは寒さに元々弱かったが一緒に暮らし始めて余計実感した。
普段なら俺よりも早く起きるのに、冬場だけはどうしても
起きれないらしい。そんな所も可愛い。
「ウェン、」
それでもやっぱり起きて欲しくて名前を呼ぶと、布団から
手が出てきて引っ張られた。急だったこともありそのまま
ベッドに倒れこむ。
「ちょ、…お前、ばかかよ」
「んふふ、」
ウェンは嬉しそうに笑うと、俺の頭をわしゃわしゃと片手で
撫でてきた。意外と気持ちよくて頭を擦りつけると可愛い、と
優しく額にキスされて、少し拗ねる。それでも上機嫌なウェンは
好きではある。だから、俺も頭を撫でてやる。
「おはよ、ウェン」
「ん、おはよ……ご飯…」
「うん、」
ウェンは気持ちよさそうにしながらモソモソと動くと、
布団から出てくる。ウェンはオーバーサイズが好きで服が
ダルダルしてる。少しゆるゆるの服を直しながら
ふにゃふにゃの顔と声で立つと、俺の手を引きながら歩き出す。
ウェンが、欠伸しながらリビングに入るとあまりの眩しさに
「ぅ゛っ」というお世辞にも可愛いとは言えない声が聞こえる。
思わず笑ってしまう。そしたらウェンは半ば寝ぼけた顔で
キッと睨んできた。それも全然怖くなくて子供みたい。
そのまま、ウェンは飯を作り始めた。
俺が告白したあの日、一緒に手をつなぎながら帰った。
予想外の返答に困惑しながら泣いたのは今でも恥ずかしい記憶。
それでも嬉しかったのを覚えてる。ウェンの笑顔もいつもより
あんしん出来た。そのまま別れる直前まで傍に居たくて
少しでも時間を伸ばそうと寄り道ばっかした。ウェンも
楽しそうで嬉しかった。帰るとき、ウェンはまたね。とは
言わなかった。「明日も一緒だよ」って俺をあんしんさせる
言葉を伝えてくれて酷く抱きしめたくなった。
あれから8年。長いようで短かった。お互い忙しくしながら常に
時間を合わせられるはずもないから、合わないときは少し
悲しかった。それでも朝見るウェンの寝顔とか
夜見るろうきゅんの寝顔とか
それだけで心が落ち着いて、頑張ろって思えた。
今まで、予定通りに行った訳じゃないし、初夜もしてない。
それでも何とかなってて、幸せになってる。だから
あの時の判断はきっと最善なんだと思う。きっと
人生で1番後悔したのもしなかったのもあの夏の日。
コメント
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ほんとに紫雨さんの宀ェンが一番大好きです。そのシーンの雰囲気とか空気感を文字で伝えるのがすごく上手で憧れます、、、🫶🏻💗