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数か月後、俺らは3年になった。俺とゆずきは学年でも上位の成績で進級したけど、マナは進級出来るか出来ないかのギリギリの成績だった。それでも、何とか親の力に助けられて進級することが出来た。そして、これから俺が受験しようとしてるのは日本でも3本の指に入るような大学だった。学年でトップの成績を常に収めてはいたけど、合格ラインに入るには家で勉強するだけでは足りなかった。だから本意ではなかったけど、仕方なく予備校に通うことにした。また、予備校に通うのは俺だけではなく、勉強や進学とは全く無縁のマナが何故か行くことになった。前々から予備校に通う予定だと聞いていたので、俺の目が行き届くように、俺と同じところに行くように勧めた。目を離すと何をしでかすかわからないし、予備校に行かなくなるのは目に見えて明らかだったからだ。それにしても、成績が学年でもビリで落ちこぼれで、学校の授業でさえも居眠りをして過ごしているあのマナが予備校に通うなんて理解不能だった。だから直接本人に聞いてみた。すると――
「やりたいこともないし、就職するのも面倒くさいから大学に行って、もうしばらく遊んで暮らすことにしたの。それに取りあえず予備校に通っているフリでもしてれば、パパが適当な大学に入れてくれるって言ってたし」
マナらしい答えだった。そんな訳で俺らは同じ予備校に通い始めた。
また3年になってクラス替えが行われたけど、進学希望の俺とゆずきとマナの3人は全員2組になった。俺は弁護士か検察官、ゆずきは国税局の職員を目指して大学に進学するのに対して、マナは遊んで暮らすために進学する。しかも、遊び半分で進学を希望するマナが予備校に通うのに対し、目標があって真剣に進学を希望しているゆずきは、家計に余裕がないのを理由に予備校に通うことが出来なかった。そういう家庭の事情もあって、ゆずきは大学へは奨学金制度を利用して入学することにしていたみたいだ。そこで俺は予備校のない日は放課後に図書室でゆずきと一緒に勉強をした。少しでもゆずきの力になりたかったから。
それから数か月が経ち、高校に入って3回目の夏休みを迎えた。思い返せば、去年までのマナの夏休みに入ってからの堕落した私生活は本当に呆れるものだった。放っておいたら1日中寝ていて何もしない。起き上がるのはトイレと食事の時だけ。そんな生活が夏休みの終わる8月後半まで永遠に続く。もちろん宿題は何もやっていない。だから夏休みの最後の週は図書館やファミレスでマナの宿題を俺が必死こいてやる。そんな具合だった。
でも、今年は違っていた。夏休みに入ってからは予備校の夏期講習があったので土曜・日曜以外は予備校に通い詰める予定になっていた。
夏休みに入って2週間が過ぎたけど、マナはつい最近まで予備校に行くのが本当に嫌で嫌で仕方なかったようだ。俺が家まで迎えに行って連れ出さないと、絶対に動こうとはしなかった。でも、ある日を堺にマナは少しずつ変わっていった。俺が迎えに行かなくても、自分で予備校に通うようになっていた。しかも、授業が終わった後も―――
「補講を受けていくから先に帰ってて」と言ってきた。どういう気の変わりようかわからないけど、やっと本気を出して勉強と向き合ってくれているようなので、素直に嬉しかった。でもそれに相反して疑問を抱いている自分がいた。マナが何の理由もなしに急に変わるとは到底思えない。