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文化祭本番十日前。
俺たちの劇の稽古は「抜き稽古」へと移行していた。
シーンごと問題のある部分だけを集中して練習する。
クラスの団結力は天宮の采配によって最高潮に達しており全てが順調だった。
本番一週間前。
俺たちは初めての「通し稽古」を行った。
衣装こそないものの頭からラストまで一気に演じる。
その出来は素晴らしかった。
通し稽古を終えた後、舞台監督の久条が俺と天宮の元へやってきた。
「二人とも素晴らしいわ。でももっと良くできるはず」
彼女は亡霊の登場シーンを指差しこう提案した。
「このシーンでスモークを焚けば、もっと効果的じゃないかしら」
「幸い予算は少しだけ余っているの。天宮くんが生徒会にかけあって、多めに獲得してくれたおかげでね」
彼女のその完璧な提案。断る理由はなかった。
それから彼女は俺を見た。
「音無くん。本番中は演出のあなたは手が空くでしょうから。亡霊のシーンのスモーク、お願いできるかしら?一番重要なシーンだから信頼できるあなたに任せたいの」
ミラー:「なんだよ、今さら?本番は間近だぜ」
奏:「久条なりに、この演劇を確実に成功させて、自分の評価を高めたいんだろう。失敗は彼女のプライドが許さない。天宮のためにもな」
ミラー:「そんなもんかね?」
俺はその役目を引き受けた。
彼女のその完璧な笑顔の裏にある本当の意図を、俺はまだ掴めていなかった。
それから本番二日前。
最終リハーサル「ゲネプロ」が始まった。
劇は完璧な仕上がりだった。
問題の亡霊のシーン。
俺がスイッチを押すと、スモークは完璧なタイミングで舞台を包み込んだ。
稽古は万雷の拍手の中で終わる。あとは当日を迎えるだけ。
全てが、順調に進んでいる。あまりにも順調すぎる。
それこそが俺の胸に、広がる唯一の不安だった。
女王の本当の脚本を、俺はまだ一行も読めていなかった。
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#ファンタジー