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新幹線の座席、隣り合わせで座る私と真司の間には、仕事用の資料が広げられている。
けれど、テーブルの下では、彼の膝がわざとらしく私の太ももに押し付けられていた。
「……ちょっと、真司。誰が見てるかわかんないでしょ」
小声で嗜めるけれど、彼は窓の外を眺めたまま、口角をわずかに上げた。
「なんだ、ただの仕事の打ち合わせだろ?」
意地悪な囁き
新幹線の走行音に紛れて、彼の低い声が鼓膜を揺らす。
結局、名古屋に着くまでの1時間半、私は生きた心地がしなかった。
現地でのハードなプレゼンを終え、ホテルにチェックインしたのは20時を過ぎた頃だった。
「お疲れ。今日は別々に飯食って、早めに休もう」
真司はフロントでそう言い残し、自分の部屋へと向かった。
……やっぱり、仕事中はあんなに冷たいんだ。
少しだけ寂しさを感じながら
私は自分のシングルルームでシャワーを浴び、ホテルのガウンに身を包んだ。
その時、ドアが短く二回、ノックされた。
「……はい?」
覗き穴を見ると、そこにはネクタイを外し、シャツのボタンを胸元まで開けた真司が立っていた。
慌ててドアを開けると、彼は返事も待たずに中へ入り、そのまま私をドアに押し付けた。
「し、真司……?」
「さっき、恵麻から連絡があった。『今、真司さんの部屋の前にいるんです』ってな」
「えっ……!?」
「あいつ、勝手についてきたらしい。……だから、今夜はここから一歩も出ない」
真司は私のガウンの合わせ目に指を滑り込ませ、熱い吐息を漏らした。
ホテルの薄暗い照明が、彼の眼鏡の奥に宿る独占欲を強調している。
「出張先で、同期と同じ部屋で過ごすなんて……最悪の不祥事ね」
「不祥事だろうがなんだろうが、知ったことか」
真司の唇が、逃げ場のない私の唇を塞ぐ。
廊下の向こうには、彼を追ってきた後輩。
壁一枚隔てた先にある「日常」のスリルが、私たちの身体をより一層熱く、深く結びつけていく。
「……亜希。今夜は、朝までこのままだ」
耳元で囁かれた宣戦布告。
出張先の静かな夜に、シーツが擦れる音だけが、密やかに、けれど激しく響き渡った。