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抑えきれない衝動 凛視点
練習後、二人きりになったロッカールーム。
濡れた髪をタオルで拭きながら、凛は何気なく冴に声をかけた。
「兄貴、今日はキレよかったな」
ただの一言。それなのに冴の胸は熱くなった。
(もう限界だ……)
「凛」
低く呼びかけた声に、凛が振り向く。
次の瞬間、冴は壁に追い詰めるようにして凛の肩を押さえていた。
「に、兄貴……?」
驚きと戸惑いの瞳が揺れる。
冴は息を荒げながら言葉を吐き出した。
「俺は……お前を弟として見られない。ずっと、好きだった」
言ってしまった
凛の目が大きく開かれる。
「……何、言って……」
冴の指先が震えて、凛の頬に触れる。
触れた瞬間、凛は全身を強張らせて、その手を振り払った。
「やめろよ……!兄弟だろ、俺たち!」
声が震えていた。混乱と恐怖と、ほんの少しの別の感情が入り混じっている。
冴は追いかけることができなかった。
凛は逃げるようにロッカールームを飛び出していく。
残された冴は壁に拳を叩きつけた。
「……ちくしょう」
抑え込んできた感情を解き放ってしまった。
もう後戻りはできない。
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