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ローザリンドと盗賊の男――フィン――は、順調に道を進んでいた。ローザリンドは、初めての自由を満喫しているようで、歩きながらいろんなことを口にしていた。フィンはそんな彼女を少し心配そうに見守っている。
「お嬢さん落ち着いてくれよ。さっきからずっと歩き続けているけど、何も準備してないんだろ?宿屋にも泊まらないのか?」
「ええ、宿屋なんて面倒よ。私はただ進みたいだけ。」
「そうか。でも、食料もないし、体力が持たないんじゃないか?」
「大丈夫!お腹が空いたら、フィンが何か盗んでくれるでしょう?」と、ローザリンドは微笑んだ。
「盗みはよくないぞ、お嬢さん!」と、フィンは顔をしかめながら言うが、内心では少し彼女の無鉄砲さに驚いていた。
その時、二人が歩いている道の先に、見慣れぬ木製のゲートが立ちふさがっていた。その前には、奇妙な男が立っている。真っ黒なローブを着た、顔は隠れているが、雰囲気からして「何かを守っている人」っぽい。
「止まれ、通行料を払わねば通れぬ。」男は低い声で言った。
ローザリンドは目を細めて、その男を見つめる。「通行料?どんな通行料ですか?」
「通行料は、自分の秘密だ。」男はにやりと笑って言った。ローザリンドは不安げにフィンを見た。
「自分の秘密?」ローザリンドが聞き返すと、男はうなずく。「そうだ、言いたくないなら、この道を通らせぬ。」
「そんなの、ただの詐欺じゃない!」と、ローザリンドは怒りを露わにした。
「お嬢様、落ち着いて。」フィンが彼女を制止する。「こういうのは、よくあることだ。さっさと秘密を教えれば、通れるだろう。」
「そんなこと言ったら、私の秘密なんて、無限にありすぎてどれを言えばいいのか分からないわ!」
「それはお嬢様の問題だ。」男がにやりと笑って言う。
ローザリンドはしばらく考え込み、ふと思いついたように目を輝かせた。
「分かりましたわ!私の秘密は――馬術大会で優勝したことです!もう何年も前に!」と、ローザリンドは胸を張って言った。
男は目を細め、そして「ふむ…通行料としてはまあまあだ。」と、木製のゲートを開けた。
フィンは呆れ顔で言った。「おいおい、その秘密、微妙すぎるだろ…」
「いいじゃないの!私はこれから壮大な秘密を持っていくつもりよ!」ローザリンドはニヤリと笑いながら、ゲートをくぐった。
ゲートを抜けた後、二人は更に歩き続けた。道は少しずつ険しくなり、森の中に差し掛かっていた。
フィンは不安げに言った。「お嬢さん、さっきの通行料の男、あれ、本当に通行料を取るなんてありえないぞ。何か後ろに大きな勢力が絡んでいる可能性がある。」
「それは気にしないで。私は今、冒険をしているんだから。冒険者にとって秘密なんて日常的なことよ!」と、ローザリンドは元気よく答える。
その時、周りの木々の陰から、突然数人の武装した男たちが現れた。彼らはすぐにフィンとローザリンドを囲んだ。
「おい、お前ら、何をしてるんだ?」フィンは冷静に言ったが、視線を鋭くして、戦闘の準備をしている。
「通行料を払わなければ、この先には進ません。」男たちの一人が言った。その男の手には、大きな斧が握られている。
「また通行料?」ローザリンドは興味深そうに言った。「私の秘密を知りたいの?」
「秘密?そんなのに興味はない。払うのは金だ。」男が冷笑しながら答えた。
フィンは眉をひそめた。「金がないなら、帰るしかないのか…」
ローザリンドは一瞬考え、「金がないなら、何か他の物を差し出すわ」と、言った。
「何を?」男たちが警戒しながら尋ねると、ローザリンドはにっこりと笑った。
「私の本当の秘密よ。」
ローザリンドが言うと、男たちは一瞬だけ戸惑った。しかし、ローザリンドが自信満々に続けた。
「実は、私は貴族令嬢で、家族に支配されることが確定している。それが嫌で、家を出てきたのよ!」と、大声で叫ぶと、男たちは一瞬にして静まり返った。
「それ、あんまり意味ない秘密だろ…」とフィンが呆れ顔で言うが、男たちは驚いた顔をし、ついに道を開けた。
「…通れ。」男たちは不満げに言いながら、道を開けてくれた。
ローザリンドは肩をすくめ、「秘密って、案外適当で通じるものね」と、フィンに言った。
「…まったく、お嬢様は何をやっても通すんだな」と、フィンは呆れたように言った。
「これからもっと面白い秘密を見つけるわ!」と、ローザリンドは元気よく答えた。
二人は、森の奥へと進んで行く。