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参加型企画
〜第7話〜
・固定夢主あり
・キャラや口調が解釈不一あります
・基本的に夢小説なので気をつけていますが、キャラ崩壊があるかもしれません
・この小説に出てくる国や地名、団体名は実際に存在するものとは一切関係ありません
【イヴァンの黙考】
時計が規則正しい音を鳴らしながら、ちゃくちゃくと予定の時間がすぎる。
PM11時40分、イヴァンのロック画面に表示された現在の時刻。
右手に「PM11:30」と書かれた紙を握りしめた。
『やっぱり来ないよね、』
イヴァンは目にいっぱい涙をためながら呟いた。
『せっかくお友達になれると思ったのに…』
独り言をこぼしながらウイスキーをあおる。
グラスの中の氷が涼し気な音を立てた。まるで今のイヴァンを冷笑してるようだった。
机の上にはキレイに畳まれたハンカチ、空になったグラス、半分まで飲み干されたお酒の瓶が置いてあった。
広い机にはこれだけじゃ物足りなくて、なんだか寂しい。
イヴァンは机に突っ伏して、グズグズと泣いている。
時計の針が12時をさし、ボーン…と12時を知らせる鐘がなった。
その30秒後、ドアを強くノックする音が聞こえた。
『……誰なの?』
返事は期待していなかったが、「もしかしたら」という希望を胸に呟いた。
『私です!、リベです!』
リベの声がドアの向こう側から聞こえた。
走ってきたのか息が上がっているようだ。
ドアは3回にとどまらず、4回、5回と立て続けにノックされている。
『え、リベちゃん…!』
イヴァンの顔が次第に明るくなった。
『ふふっ!…待ってね、今あけるから』
イヴァンは高ぶる気持ちを抑えるように言った。
扉を開けると水色のドレスを身につけたリベが袋を片手に息を切らしていた。
『ご、ごめん…遅くなって…』
『……』
『イ、イヴァン…?』
『…すっごくキレイだね』
イヴァンは惚れ惚れした目でリベを見つめる。
『キレイって…私が…?』
リベはまだ肩で息をしていた。
前髪は汗が滲んでいる額に張り付いていて、髪の毛は走ってきたので解けてしまっている。
『うん、キレイだよ。』
『前に菊くんの家でみた「シンデレラ」に似てると思って…』
『???』
『まぁいいよ、後で話すね』
まだ理解できていないリベの手を取り、イヴァンは自分の部屋に案内する。
お互い向かい合うように座り、イヴァンが口を開いた。
『来てくれたのは嬉しいけど、約束の時間が守れなかったのはいただけないなぁ。』
『それは…本当にごめん…』
『なにか用事でもあったの?』
『えっと…実は…』
『これ…』
リベは遠慮がちに袋をさしだし、机の上に置いた。
『なに?これ…』
イヴァンは興味深そうに袋の中を覗いた。
中からはほんのり甘い香りがする。
袋から出てきたのはお酒の瓶と、おつまみ、そして白い箱だった。
『わぁ!これ、全部僕のために…?』
『そうだよ、ワインで汚しちゃったから、』
リベは気まづくなったのか目を逸らした。
『じゃあ僕からも』
イヴァンはキレイに畳んだハンカチをリベの目の前に置いた。
『急いで洗濯したからまだ乾いてないかもしれないけど…』
『えっ、洗濯までしてくれたの…?そんな、いいのに。』
『僕がしたくてしただけだから…ね?』
イヴァンはパチリとウィンクしてみせる。微妙にできてなくて、リベはクスリと笑ってしまった。
『…それよりもこの白い箱はなに?』
イヴァンは話題を変えるように、机の上の白い箱を指さした。
『開けてみてよ』
リベは試すようにイヴァンに言った。
『ふふ、じゃあ開けちゃうね』
イヴァンは丁寧だが、大雑把に箱を開けた。
すると、中から少し崩れたショートケーキが一つでてきた。
『え…ケーキ?』
『これも私からのおわびだよ』
『こんなにたくさんも…ありがとう、リベちゃん!』
『私はイヴァンと一緒に飲みたかったからしただけだよ』
リベは平然と言った。
『え、それって…』
『僕とお友達になりたいってこと?』
『じゃなきゃナンパなんて断るよ』
リベは苦笑した。
パーティ会場でイヴァンに渡された、部屋番号が書かれた紙を袋から出し「ほら」とイヴァンに見せつけるように言った。
『ふふ、まだ持ってたんだ。』
「あと、ナンパじゃないから」と付け足し、 イヴァンは悪戯っぽく笑う。
『そっか…ところで、シンデレラっていうのは?、』
『あぁ、忘れてた…』
『…君はシンデレラのお話知ってる?』
『ううん、知らない…聞いたことはあるけど、』
『シンデレラっていうのはね、君みたいに水色のドレスを着ていたの。本当は薄汚くてボロボロだったんだけどね?』
『私が薄汚いってこと?』
リベは軽く睨んだ。
『違うよ』
イヴァンはあっさりと否定し、話を続けた。
『シンデレラは魔法でオシャレをして舞踏会に向かったんだ。』
『舞踏会にいた王子様はシンデレラに一目惚れして、シンデレラのことを誘うんだ。』
『でも魔法は12時で解けちゃうの…焦ったシンデレラは階段でガラスの靴を置いていっちゃうんだ。』
『へぇ…』
『王子様はその靴の持ち主を探して、最後は靴がピッタリはまったシンデレラと王子様は結婚して幸せになるんだ!』
『なるほどね、』
イヴァンは話しながらお酒をグラスに注ぐ、いつの間にかリベのグラスも用意されていた。
『ねぇ、リベちゃん?』
『ん?』
『これってさ、今の君と似てない?』
『……えぇ?』
あまりにも突拍子もないことにリベは思わず聞き返した。
『だって、君がシンデレラだとして、僕が王子様だとしたら…』
『シンデレラの君に、僕が一目惚れしたのは物語のとおりだよね?』
『……え』
『イ、イヴァン…それって…』
イヴァンはリベの唇に人差し指を近ずけ、シーッと言って微笑んだ。
『僕たち酔ってるんだよ…ねぇ、そうでしょう?』
イヴァンはお酒を一口飲んだ。
『それでね、ガラスの靴が君のハンカチで…』
イヴァンは続ける、何本飲んだのかわからないが、顔がトロンとしている。
心做しか、少々顔も赤いようにみえる。
『でも、シンデレラと君は一つ違うところがあるよね』
『そ、そうなんだ』
リベはイヴァンの告白にしどろもどろになりながら相槌をうった。
なんなら告白も無かったことにされたのだ。
『だって君は、12時になっても魔法が解けないんだもん。』
『どういうこと、?』
『君はいつでもキレイだよってこと!』
『……………またそうやって…』
『ふふっ』
イヴァンは満足そうに微笑み、ショートケーキを頬張った。
『うん…甘い。 』
イヴァンは優しく微笑み、リベに聞いた。
『あれ、リベちゃんの分は?』
『それはイヴァンのために買ってきたやつだから…私のはないよ? 』
『……じゃあ半分こしよっか!』
イヴァンは器用にケーキを切り分け、リベの口へ運んだ。
『ほら、あーんっ』
『あー……ん、』
普段は神に誓って「あーん」なんてしないが、今はリベも酔っているので、あまり不思議には思わなかったし、恥ずかしくもなかった。
口の中に柔らかいスポンジが広がる。イチゴの甘酸っぱさもマッチしていて本当に美味しい。
『美味しい?』
『うん、美味しいよ。』
『そっかぁ』
イヴァンは少し悩んでリベに聞いた。
『今度さ、一緒にスイーツ食べに行かない?』
『え、スイーツ!』
リベは思わず食いついた。
『美味しそうなお店見つけたんだけど…中々入れなくて…どうかな?』
イヴァンの「どうかな?」は行く、行かないの問ではなく、 「行くよね?」ということだ。
それをリベは理解をしていた。
『行きたい…!いつにしようかな、』
『今度の土曜日にしよっか!』
『うん…!』
リベは向日葵が咲いたような満開の笑みで答えた。
グラスの中の氷は全部溶け、もう音はしなくなっていた。
〜第7話fin〜
今回はリヴァンでした!
次回も楽しみにしていてください!
ここまで見てくれてありがとうございます!
コメント
4件
ろっさまのキャラソン聞きながら読んでたから ほんわかしてるな〜って思いました…! (口角戻って来させました月旅行楽しかったです!笑)