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🦂「あっと、えーっと、んー……」「わぁぁぁぁん!ままぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ランニングの最中。陽桜は迷子の子供と鉢合わせていた。子供と話せないわけではないし、なんなら兄弟の中でも優しい方だから子供に怖がられることもない。
でも、今まで迷子の子供に鉢合わせたことなんてない陽桜は対応に困っていた。
とりあえず、とスマホを取りだし泰の連絡先に電話をかける。
🦂「へるぷ、迷子の子見つけたんだけど泣いてて全然話せない」
🦔『えぇ?wさそりくんが余裕ないの珍しいね』
🦂「助けてよ!」
🦔『ぬこちゃん送るからどこにいるか教えて』
そんな電話を切った後、とりあえず子供と対話を試みる。記憶の中にうっすらと残る、まだ小さかった雅を思い浮かべて。
🍬「あー!おったおったさそりくん!」
「ふぇぇ、ふぇぇぇぇぇぇぇぇん!」
🦂「ちょ、声でかい。やっと落ち着いたのに……」
🍬「ごめんごめんwほーらよしよしよーし」
合流してきた雅はいつかのサメとエビのぬいぐるみを子供の方に差し出して頭を撫でる。子供はそれをぎゅっと抱き締めたものの、まだえぐえぐと泣き続けていた。
しばらく雅はよしよしと頭を撫で続けて、少し落ち着いてこちらを見てくる子供に、目線を合わせたまま話しかける。
🍬「僕、お名前言える?」
「ん、えっとね、あ!」
🍬「びっっくりした」
「知らない人に教えちゃダメって言ってたの、だから言えないの」
🍬「わーえらい、とってもえらい……お母さんとはぐれちゃったの?」
「うん、どっか行っちゃったの」
まるで母親の方が迷子になったとでもいう言い方で、ぬいぐるみを大事そうに抱えながら答える。どうやら迷子で間違ってはいなかったようだが、人通りの少ないこの道で迷子になるとは考えづらい。
大通りではぐれて、ここまで一人で歩いてきてしまったのだろうか。
🍬「おにーさんたちが一緒に探したげる!どんな人か分かる?」
「知らない人についてっちゃダメ!」
🍬「わーお偉すぎる」
🦂「でも困った時は周りの大人の人に助けてもらってって言われなかった?」
「……ない」
🍬「んー、でもひとりじゃまた迷子になっちゃうしなぁ」
「ままに会える?」
🍬「まぁ、探せば会えると思うよ」
「……!探す!!」
🍬「子供って……」
🦂「えぬくんもこんなんだったよ」
🍬「え」
言っていることがあっちこっちとさまよう子供に、雅が少し呆れた声を出せば、陽桜も昔を思い出しつつ呆れた声を出す。
そのままお母さん捜索隊が結成された。幸い今日は休日。なんと有兎家全員が。それはそれでどこかに出かけたいという気持ちはあったが、たまにはこんな休日も悪くないだろうと陽桜は子供の手を取って歩き出した。
――
🍬「多分この先の道……って、今日祭りやってんのか」
少し歩いて出た大通り。屋台がいくつか出ていて、人でごった返している。陽桜と雅は顔を見合わせ、今日珍しく朝早くから出ていった兄弟のことを思い出した。
🦂「あえじくんたちいるんじゃないの」
🍬「たしかに。…ってかこの人混みからお母さん探すの相当大変じゃない?」
「まま、ままぁぁぁ!」
🦂「祭りならどっかに実行委員会あるでしょ、一旦そこ行こう」
🍬「さそりくんが今日も天才すぎる」
雅が子供と手を繋いで、人ごみを掻き分けて歩いていく。中央広場に着いて、運営席を探す。そこは案外すぐに見つかり、実行委員とも話が出来そうだった。
がその時。
🦂「ちょっと待ってよえぬくんどこ行ったの……?!」
陽桜が後ろを確認するとそこにいたはずの弟が居ない。その弟と手を繋いでいた子供も一緒に居なくなっている。
新たな迷子が増えてしまった。
その頃雅は人混みに飲まれながら中央広場へ向かおうとしていた。しかしこれには問題があった。雅は超が数え切れないほど着くくらい方向音痴なのだ。
🍬「どうしよ、完全に迷った……」
「おにーさん迷子?」
🍬「迷子……」
せめてもの救いは子供とはぐれていないこと。これで3人離れ離れになっていたらもっと大変なことになっていただろう。
🧸「ぬこちゃんなにしてんの」
🍬「……!あえちゃぁん!」
わたあめを頬張りながら現れた兄に泣きつくように事情を説明する。そんな阿英は後ろにいた希那と菜瑚芽、それから瑠羽斗に声をかける。
🍬「あれ、文鳥にぃはいっしょじゃないの?」
🧸「あ、そう文鳥も迷子ね」
🍬「うっそでしょ」
朝早くに家を出ていったのは千流と雅、陽桜、それから泰と翔狗以外の兄弟たち。雅はねていたし、千流や泰は家事。そして翔狗には仕事が残っていて、陽桜はランニングがてら祭りに寄るつもりだった。
その場に集まって来た兄弟の中に文悟の姿が見えなかったことを疑問に思った雅の言葉に、淡々と阿英が答える。
❄️「おいで、お母さん一緒に探そう」
「……うん!」
❄️「お名前言える?」
「圭人くんだよ!」
🍬「さすがきなにぃ!」
教師を目指していて、子供が大好きな希那。雅も阿英も、兄弟みんなそのことは知っているからこそ、こういう案件は希那がいると心強い。
子供の手は希那が握って、また迷子になったら大変な雅は阿英がしっかり手を握って歩いていく。
🍬「あえちゃんと手繋ぐの久しぶりだね!」
🧸「はいはい、ちゃんと繋いどいてな。すぐ迷子になるんやから。」
🍬「ぴぇー」