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ライターを取り出したキラーは何も考えていないのか、ノズルに点火した。
キラーが火だるまになり、辺りは轟々と赤い明るさで照らされる。
溶接用の面に赤い月が映った……。
私は呉林を再度、両手で抱え、炎に包まれているキラーを除けて、奥へと歩きだした。不思議と痣だらけの体からの痛みは無い。
ひたすら歩いていると、しばらくして呉林は目を開けた。どうやら気絶をしていたようだ。
「赤羽さん。キラーもやっつけたのね」
呉林の目に涙が浮かぶ。
「ああ。俺っていったい……。なんなんだ。この力は」
「夢の世界を現実で変容させる力。簡単に言うと、あなたは夢という世界で強引に起きることができるの。つまり、この世界でも眠らないことができるの。それと、この不思議な力を使う者は七番目の者ともいうの」
「現実に戻ろうとする力……。七番目?」
「ええ。お姉さんの方が詳しいわ」
「ここは現実なのか?」
私は黒くなっている呉林に聞いた。
「そうよ。でも、違うの。夢に似た世界。あのね、夢の力が強すぎて現実を歪めているのよ。だから、これは夢の反乱……。もう少し経つと世界中の現実が破壊されて大惨事になるわ。でも、あなたがいれば大丈夫のはず……」
呉林は私の口にキスをした。
黒くなっている呉林は美人なんだが……生まれて初めてのキスは苦い味だった。
私は顔と頭に体中の血液が集まり、まともに呉林の顔が見えなくなった。
そういえば、安浦を探しているんだった。
「安浦はどこにいるんだ……」
私は血が上った頭で照れ隠しをしようと、すかさず真面目に尋ねる。
「そうね。ええと……」
呉林の黒く煤ぼけた顔がみるみる青くなりだした。
「え、ずっと奥の方で逃げ惑っているわ……?」
「なんだって?」
私たちは数百メートル先で動くものを肉眼で捉えた。
安浦だろうか?
「俺一人で行くから!」
私は自分の不思議な力で何とか出来ると実感していた。当然、自信もつく。
「解ったわ。気を付けて」
私は半ば勇み足で進んで、すぐに駆け足となる。目で捉えたのは安浦だった。
床がなくなり、代わりに濁水が満ち満ちている。水は腰まであり、かなり深いところもありそうだった。
安浦は何かからじゃぶじゃぶと逃げ惑っていた。