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カナリアは、レオを目掛け手を翳す。
“雷洗脳魔法・ブラインド”
バチバチッ!!
レオの身体が一瞬発光すると、レオは一度退避する。
「これ、レオやべぇんじゃねぇか…………」
レオには今、幻覚が見えている。
その為、誰がどこにいるのか、見えていない。
「でも、堅いシールドがあるし…………」
レオに敵わない圧倒的な理由、二枚の強靭な岩シールドだが、相手に攻撃が当たらないのでは意味がない。
それに、どんなに堅くとも、攻撃を受け続ければ、その強固なシールドも破られてしまう。
リオンは、ゴクリと唾液を飲んで眺めていた。
「いや…………」
“草魔法・ショット”
「恐らく…………レオが勝つ…………」
ルークの草魔法と同時に、レオは剣を天に掲げ、そこから動かずにそっと目を閉じた。
“雷鳴剣・雷柱”
ガァンガァンガァン!! と、雷を帯びた柱が闘技場内に降り注ぐ。
“炎魔剣・業火”
グォッ!!
リゲルは、目を瞑ったその時を見計らい、レオの眼前に現れる。
しかし、その姿はレオには見えていない。
(取った…………!)
“炎虎剣・炎牙”
リゲルは、下から上へ、グォッと剣を振るい上げ、周りの雷柱と過負荷を起こさないよう、最低限の炎を纏ってレオに振り上げたその時 ――――――――
「ぐわああああっ!!」
レオは、ニタリと笑った。
「カナリア先輩…………!?」
ルークの草魔法を放った対象は、カナリアだった。
「どう…………して…………」
レオはそっと目を開け、呆然とカナリアを見つめるリゲルを見下ろした。
「カナリアが雷魔法を放った瞬間、奴自身にも雷魔力が微量なり発生する。そこに、ルークの草魔法を当て、原激化状態にした。そうすれば、私の雷魔法がカナリアに直接当たらなくとも、ランダムに降り注がれる落雷がカナリアを襲い、“超激化” を起こしたのだ」
「 “原激化” に “超激化” …………?」
「確かに、貴様の炎魔剣や、カナリアの洗脳魔法は強い。だが、草魔法について勉強不足だった貴様らの敗けだ」
レオが再び、剣を天に掲げたその時 ――――
「棄権だ…………!!」
風紀委員、リーダー、カナリアの声が響いた。
「カナリア先輩…………どうして…………!!」
「僕たちはまだ未完成なチームだ…………。パーティの一人でも欠ければ……悔しいが、レオ様のパーティには手も足も出ないだろう…………。僕のせいで……君が傷付く必要はない…………」
試合終了のMCが鳴り響き、カナリアは急いでタンカで運ばれて行った。
「防御服を着てるのに……あんなに負傷を…………」
そんな、呆然と呟くリゲルに、レオは背後で答える。
「命拾いしたな。優しい先輩に感謝することだ」
そうして、レオもその場から去って行った。
リゲルは、ただ呆然とその後ろ姿を、握り拳を強く握りながら見つめていた。
「な、なあ……リオン……今、何が起きたんだ……?」
「そうだね…………草魔法は本当に奥が深い。今のは “超激化” という反応が起きたんだ」
「激化とはまた違うのか…………?」
「いや、“激化” という属性反応は、“雷×草” が起こした属性反応の総称で、いつもレオとルークのコンビが起こしている反応は、その激化の中の “超激化” というものなんだけど、今回はいつもと少し立ち回りが違う……」
「立ち回り…………?」
「僕らはいつも、“前衛” とか、“シールダー” とか、役職とかで呼ぶけど、今回は “アタッカー” や “サブアタッカー” などに名称を変えて説明しよう。一年の魔法学の授業ではもうやってるよね?」
「いや……俺その辺全然着いて行けなくて…………」
「ハハ……ならザックリ説明しよう。ヒノトくんやレオ、リゲルくんのような、前衛で相手と真っ向から戦う戦士を “アタッカー” と呼ぶ。これは、剣士だけではなく、平民パーティにもいた前衛のメイジも同じ括りだ」
「じゃあ、俺はアタッカーになるのか……」
「そして、“サブアタッカー” と言うのは、DIVERSITYで言うところの僕に当たる。風紀委員ならカナリア、KINGSならルークが “サブアタッカー” に当たるね」
「中衛から攻撃してくれる奴のことか!」
「その通り。正面切って戦うアタッカーと違い、中〜遠距離から魔法を放つのがサブアタッカーの役割だ。今回はこれだけでいいんだけど、バッファーやヒーラー、シールダーもそこに当てはまるね」
「ヒーラーとシールダーはそのまま呼ばれてるのか」
「ああ、と言うのも、今回のように『アタッカーであるレオが、”アタッカーではない立ち回り” をする場合』があるから、ヒーラーとシールダー以外は、その役職、ソードマンとか、メイジとかって紹介される」
「アタッカーなのに、アタッカーじゃない立ち回り……?」
「ヒノトくん、思い返してごらん。アタッカーというのは、相手と正面切って戦うよね?」
「あ、そうか…………! レオは、カナリアに全く近付いてないのにぶっ倒したんだ!!」
「そう、普段は、ルークのサブアタッカーとしての草魔力を相手に付着、そこから、アタッカーとしてのレオの雷の攻撃で、分かりやすく敵を倒していた」
「今回は、レオには相手が見えていなかったから、サブアタッカーとしての中〜遠距離魔法を放って、雷×草を成立させた……ってことか…………!」
「そうだね…………。もちろん、直接剣を振るえる普段よりかは威力は劣るけど、風紀委員のシールダーはリゲルくんにしかシールドを張っていなかった。カナリアを見れば分かるけど、それでも威力は十分。それも見越した上で、相手の核を的確に潰した…………」
その時、リゲルの独り言と、ヒノトの声がリンクする。
「「 これが越えられない壁………… 」」
そして、最後の決勝戦が幕を開ける。
『それでは、決勝戦を執り行います。南門、キルロンド学寮より、前衛 ソードマン、レオ・キルロンド。中衛 メイジ、ルーク・キルロンド。後衛 シールダー、シグマ・マスタング。後衛 ヒーラー、ファイ・ソルファ』
「遂に、ここまで上り詰めました……お父様……」
「ん? 何か言った? レオ…………」
「五分で終わらせると言ったのだ。よく聞いておけ」
「それは無理だよ…………だって」
『続きまして西門、キルロンド学寮より、前衛 メイジ、ソル・アトランジェ。中衛 メイジ、ルルリア・ミスティア。中衛 ヒーラー、ロス・アドミネ。後衛 シールダー、グロス・ラドリエ』
アナウンスにより、目を血走らせたソルらパーティは、レオたちを真っ直ぐ睨みながら入場する。
「草魔法で風の弱点は突けないからね」
「その逆も然り…………風魔法で草は拡散されない。互いに影響し合わない属性…………ならば勝てるだろう」
「うーん、どうだろうね…………」
レオもまた、笑みが抑えられず、剣を振るわせながらソルたちを睨んでいた。
「彼らの強さは、レオが一番分かってるんでしょ?」
「フハハ! あぁ! 早く戦いたい…………!!」
そんなレオに、ソルは単身、前に出る。
「やあ、レオ様…………いや、レオ・キルロンド。今日は君を倒させてもらう。キルロンドで一番強い学生は、僕たちであると、今日を持って証明する時が来た」
「残念だ、ソル先輩…………いや、ソル・アトランジェ。貴様の風魔法は、私たち草と岩で編成されたパーティには影響しない。どう戦うか、楽しみにしているぞ」
互いに申し分ない程の闘志をぶつけ合うと、互いを強者と認め合っている二人は、互いにウズウズした鼓動が抑えられないかのように笑みを溢し、背を向けた。
『これより、決勝戦を開始いたします ―――― 』
そして、試合のゴングは鳴らされた。