コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
そうして、今に至るのだった。
「それにしても…あの時の店長の顔…面白かったなぁ…」
ドライヤーの電源を切ると、その場にごろんと横になり、一人で笑った。
それは店長が私をホテルまで送り届けた時、別れ際に言った言葉。
「そ、それじゃあ…明日また、迎えにくるよ。」
「いえ…明日は遅番なので、自分で帰れますよ。着替えに、いえにもどらなきゃですし。」
「そうか…。分かった。じゃあ、また明日…」
「はい。本当にありがとうございます。店長。私…店長にやっと興味が出てきました。」
「なっ…!?い、いやいやそんな…俺なんか…藤塚さんが興味もつような人間じゃ…」
「ふふ、お休みなさい。」
「あんな一言であそこまで挙動不審になるおじさんって…初めて見たってば…」
思い返すとくすくす笑いが止まらなくなる。
はっと我に反った時、目の前に真っ白な天井が広がっていた。
こんなに穏やかな気持ち…いつぶりだろうか。
それもあんな冴えないおじさんに出会ってからなんて自分でも予想外だ。
今、全身を何ともいえない熱い血が駆け巡っている。
ふいに、何かを思い出し、私と一緒に横たわっている携帯に手を伸ばした。
仰向けのまま、携帯を操作していく。
「ちょうどいいか。どうせしばらく、お客さん引っ掛かからないし。年齢的にも引き際だもんね。ただ…それだけだからね。別に…あの人に出会ったからじゃ…ないんだから。」
ぶつぶつ言いながら画面に開かれていたのはピンクの背景。
私が利用している出会い系サイトだ。…いや、だった…になるのか、これからは。
そんなことを思いながら、私は『退会』と書かれたボタンにそっと触れた。