テラーノベル
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時透さんの目が、私の目をじっと見つめている。その視線に私は再び息が止まりそうになった。
言葉では言い尽くせない感情が胸の中をただただ静かに広がっていく。
─…「そう。よかった」
そう言って微笑んだ彼の瞳は、ひどく優しい色をしていた。
緑壱零式の鍵を奪っていったあの冷たくて感情の読めない彼とはまるで別人のような柔らかな表情に、胸がギュッと締め付けられた。
何があっての変化なのかは知らない。けど、これから知っていきたい。一緒に居たい。
『好きです!!!!!!』
気付けば、肺の空気をすべて使い切るような大声で、そう叫んでいた。その瞬間、喉がピリピリと軽く痺れ、ようやく自分が叫んでしまった言葉と、今の状況を理解した。
小鉄くんも、時透さんも、私も、誰も何も言わない。いや、言えない。
近くの庭に設えられた鹿威しだけが憎たらしいほど完璧なタイミングでカポーンといい音を立てた。
そんなすべての音が死んでしまったような沈黙の中、私は「言わなければよかった」と心のどこかで思った。
違う。こんな風に気持ちをぶつけるつもりじゃなかった。口が勝手に、勝手に動いたせいで。
どうしてこのタイミングで言ってしまったのだろう。そもそもただの刀鍛冶の娘である私が柱の時透さんという雲の上の存在の方に告白した結果なんて、すぐに分かるというのに。
自分が吐き出してしまった感情が波となって胸を強く打ち、私は立っているのがやっとだった。いや正直もうこのまま力を抜いて倒れてしまった方が楽だった。
だがそんな後悔の言葉を口にする間もなく、時透さんが驚いたように目を見開いた。
「えっ?」
あの日とは違う、光の灯った瞳が視界を埋める。静寂に響く彼の声は、少し上擦っていた。その瞳や声に、“気味悪がられたかもしれない”という、あの日とは違う恐怖を感じた。
『…あ…ちが…』
どうにかこの場を乗り越えようとあたふたと手を動かして言葉を続けようとするが思い浮かぶ言葉はぐちゃぐちゃに絡み合って、どれひとつとして思い通りの形になってくれない。
血の気の伏せた自身の唇がカクカクと震えて喉に言葉が絡みついているような感覚に、何を言おうとしたのか自分でも分からなくなってきた。目の前が段々とぼんやり歪んでいく。
『す、すみません……変なこと言って。忘れてください、返事も……いりません……』
数秒経って、ようやく吐き出せた言葉は泣き出しそうなほど焦った声をしていた。
そんな私の声を聴いた時透さんがふっと眉を下げ、それからゆっくりと口を開いた。
形の良い花びらのように綺麗な唇が言葉を放っていく。
「ごめん」
その言葉は、思ったよりも穏やかで、思ったよりも痛かった。
体が震える。体は焼けるように熱いのに、不思議と涙は出てこない。
「悪いけど、君の気持ちには答えてあげられない」
そうはっきりと零す時透さんの長い髪が静かな風に攫われ、私の視界の真ん中でふわりと揺れた。彼の吐いた言葉が、ゆっくりと私の胸の奥に沈んでいく。
目の前で揺れる、黒くてサラサラな髪の毛。女の子と言われても、不思議じゃないくらいの可愛らしい顔立ち。こちらから触れることを躊躇ってしまうような儚い綺麗さ。
私は彼のこういうところがだいすき。
だけど、彼は違う。
「…だから、ごめん」
時透さんはそれだけ告げると、来た時と同じように軽く頭を下げ、背を向けて帰っていった。
見かねた小鉄くんが慌ただしい足取りでそのあとを追う。黙り込む私をチラチラと心配そうに見つめる視線が痛い。だがそれ以上に、彼の背を黙って見送る自身の心が、一番痛い。
別に冷たく振りほどかれたわけじゃない。前みたいに酷い言葉を投げつけられて、傷つけられたわけでもない。ただ、優しくやんわりと拒まれただけ。
たったそれだけ。それだけの“優しさ”が辛くて痛かった。胸の奥に押し込めたはずの言葉が、喉元までせり上がってきて、どうしても飲み込めなかった。
『あの!』
気が付くと、喋るよりも先に体が彼を追っていた。感情に突き動かされるまま、迷いもなくその腕を掴む。布越しから触れるそれは、小柄な彼の体格からは想像出来ないくらいしっかりと鍛え抜かれており、服の袖口からちらりと見えた大量の傷跡と青痣に目を見張った。
時透さんが振り向く。深い青を閉じ込めたような瞳がまっすぐに私を射抜く。
彼は一体、この腕で何度刀を振るい、どれだけの痛みを背負って人を助けてきたのだろう。
刀を握って2か月、どんな思いで柱まで昇りつめたのだろう。
知りたい。彼のこと、全部が知りたい。
『…私、諦めませんから』
そう考えると、またもや口が勝手に動いていた。
絶対こんなの時透くんじゃない。
時透くんはもうちょっとキツい振り方する。あれでも記憶取り戻した後のはなしだからギリギリセーフ……なのかな?()
こんなの時透くんじゃない‼️って思ったらすぐにコメントで教えてね。
空き時間にコツコツ直していくのでアドバイスほしいです^..^♡
全然遠慮なく言ってね‼️
さて、時透くんに振られて落ち込んでいるそこのあなたへ。
安心してください。
まだ物語は序盤…いや序盤にも入っていないところです。
今後にご期待くださいᐡっ ̫ ɞ̴̶̷ᐡ❤︎
コメント
10件
わーーんめっちゃすき🥹💕 ほんとくろの表現綺麗すぎて尊敬する🫶🏻💗
うんうん正直振られたーーって思ったけど最後の言葉で結構希望しかなくなったよね(?) とりあえずくろちゃん天才だし記憶ない時とか興味ない人とかにはもっときつい振り方すると思うけど記憶取り戻したばっかだし取り戻したときはとっても優しい無一郎くんだから修正しなくていいとおもうよとりあえずくろちゃん天才すぎますねえ
ぬわー、振られちゃった😢 それでもめげないのまじ尊敬する💖私だったら諦めてしまう🙂 今回もサイコーすぎたよくろちゃん