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兄弟だと分かってから。
数日が過ぎた。
何かが大きく変わったようで。
何も変わっていないような日々だった。
いつものように会う。
いつものように話す。
いつものように笑う。
でも。
ひとつだけ違うことがあった。
愁斗は時々、ひでを見る目が変わった。
友達を見る目ではない。
でも。
兄を見る目にも、まだ慣れていなかった。
ある日。
ひで が施設へ迎えに来た。
『お疲れ。』
「……うん。」
いつもの会話。
でも。
愁斗は少しだけ距離を取って歩いていた。
『愁斗。』
「ん?」
『何か怒ってる?』
「え?」
『いや。」
『なんとなく。』
愁斗は慌てて首を振る。
「違う。」
「怒ってない。」
『じゃあ?』
少し黙る。
「……分からない。」
『分からない?』
「うん。」
愁斗は俯いた。
「にぃにって呼んだけど まだ変な感じする。」
『……。』
「嬉しいんだよ。 本当に。」
「でも、 今まで知らなかった人が。」
「急に一番大事な人になるって。」
「どうしたらいいか分からない。」
ひでは静かに聞いていた。
そして。
『俺も。』
「え?」
『兄になるの、初めてだから。』
愁斗が少し驚く。
『正解分からない。』
『何をしたら兄なのかも分からない。』
『だから。』
『一緒に慣れていこう。』
その言葉に。
愁斗の肩の力が少し抜けた。
その日の帰り。
急に雨が降った。
二人は屋根のある場所で雨宿りをする。
寒さのせいか。
愁斗の顔色が少し悪い。
『寒い?』
「大丈夫。」
言った瞬間。
ひでが見る。
『今のなし。』
「……。」
『言い直し。』
愁斗は少し笑う。
「……少し寒い。」
『よし。』
ひでは自分の上着を渡す。
「いいよ。」
『兄命令。』
「なにそれ。」
『初めて使った。』
思わず二人で笑った。
その夜。
愁斗は部屋で考えていた。
兄。
その言葉。
昔なら、ただ羨ましかった。
誰かに守ってもらう子を見るたびに思った。
自分にもいたら。
でも。
今、 本当にいる。
なのに 怖い。
幸せになることが怖い。
失うことが怖い。
スマートフォンを見る。
ひでからメッセージが届いていた。
『今日は寒かったから、ちゃんと温かくして寝ろ。』
『あと、無理するな。』
愁斗は少し笑う。
短い文章。
でも。
そこには確かな心配があった。
返信を打つ。
「ありがとう。」
少し迷う。
そして。
もう一言。
「兄ちゃん。」
送信。
数秒後、 すぐに返信が来た。
『どうした。』
『呼ばれるとまだ慣れない。』
愁斗は笑った。
初めて。
安心して笑った。
翌日。
ひでは施設の先生と話をしていた。
「愁斗くんのこと。」
「これからどうしていくか、考えないとね。」
ひでは頷く。
『はい。』
「家族として。」
「どうしたい?」
その問いに、ひで は迷わず答えた。
『一緒に暮らしたいです。』
でも。
すぐには続けなかった。
『……でも。』
『愁斗が望む形で。』
『急がせたくないです。』
先生は優しく笑った。
「もう十分、お兄さんだね。」
ひでは少し照れた。
その頃。
愁斗は知らなかった。
自分の人生に。
もう一つの選択肢が生まれていることを。
“施設にいる未来”
そして。
“兄と暮らす未来”
その二つの間で。
愁斗の心は、少しずつ揺れ始めていた。
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コメント
1件
うわああああ〜〜〜!!!😭💕💕 この回、しんどすぎて胸が締め付けられたよ…!! 「一緒に慣れていこう」ってひでの言葉、優しすぎるでしょ…! お互い初めての関係で正解がわからないって、でもそれでいいんだよって言ってくれるのが、もう兄としての風格というか…😭✨ それに最後の「兄ちゃん」って送るシーン、めっちゃグッときた!! 安心して笑えた愁斗、本当によかったね…! そしてひでが「一緒に暮らしたい」って言ってたのも知らない愁斗の揺れ動きも、続きが気になりすぎる…🌸