テラーノベル
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おまけ…「夜の街で追いかけっこルート」
カジノ後のバーにて。
「おい」
低い声。
背後から。
チャンスの表情が一瞬で変わる。
「……見つかったか」
エリオットが振り返る前に、手首を掴まれる。
「走るぞ」
「え、また?」
「今回はマジだ」
その声、さっきまでと違う。
軽さが消えてる。
バーの奥から、黒いスーツの男たちが近づいてくる。
「チャンス。借りは返してもらう」
「うるせぇな、取り立ては昼間にしろよ」
そう言いながら、もう動いてる。
裏口を蹴り開ける。
夜の空気が一気に流れ込む。
ネオン、湿ったアスファルト、遠くのクラクション。
「こっち!」
エリオットが先に飛び出す。
「待て、そっちは――」
細い路地。
袋小路。
「……あ」
「だから言っただろ」
後ろから足音が迫る。
完全に挟まれた。
エリオットは一瞬だけ黙って――
それから、にやっと笑う。
「ねぇチャンス」
「今それやる余裕あるか?」
「ある」
一歩、近づく。
「勝負、続き」
「は?」
「どっちが先に落ちるか」
この状況で。
チャンスが一瞬だけ呆れて――
それから、吹き出す。
「……ほんと頭おかしいな」
「で、どうする?」
銃を抜く気配の中。
エリオットは逃げない。
まっすぐ、チャンスを見る。
数秒。
ほんの数秒の沈黙。
それから――
「……いいぜ」
チャンスが一歩前に出る。
エリオットの腰を引き寄せる。
「こういうの、嫌いじゃねぇ」
距離、ゼロ。
背後で「撃て」の声。
その瞬間――
チャンスが体をずらす。
「伏せろ!」
発砲音。
乾いた音が路地に響く。
エリオットを庇う形で、壁に押しつける。
距離が近すぎて、息がぶつかる。
「……っぶな」
「今の、ちょっとかっこよかった」
「今それ言うか?」
でも、笑ってる。
チャンスは舌打ちしながら周囲を見る。
「上だ」
「え?」
「非常階段」
壁沿いの古びた鉄階段。
「登れるか」
「余裕」
エリオットは先に駆け上がる。
チャンスが後ろからカバー。
また銃声。
鉄階段に弾が当たって火花が散る。
「うわ、映画みたい」
「後で感想言え」
屋上。
風が強い。
ネオンが遠くに広がる。
逃げ場――なし。
「……詰んだ?」
エリオットが振り返る。
チャンスは少しだけ考えて――
笑った。
「いや」
一歩、近づく。
「まだだ」
「何が?」
「最後の一手」
そのまま、エリオットの腕を掴む。
「信じろ」
「いいよ」
即答。
「お前なら」
その言葉に、一瞬だけ間。
チャンスの目が、ほんの少し揺れる。
それから――
「……落ちるぞ」
「え」
屋上の端。
そのまま――
飛ぶ。
「ええええ!?」
下は、隣の建物の低い屋根。
ギリギリの距離。
着地の衝撃。
転がる。
息が詰まる。
数秒後――
「……生きてる?」
「……ああ」
エリオットが笑い出す。
「はは、やば、楽しい」
「正気か?」
でもチャンスも、少しだけ笑ってる。
夜風の中、距離がまた近くなる。
「……なぁ」
「ん?」
「さっきの続き」
こんな状況なのに。
エリオットがまたネクタイを引く。
「まだ勝負終わってない」
チャンスは一瞬だけ空を見て――
諦めたみたいに笑う。
「……ほんと、引かねぇな」
「そっちもでしょ」
数秒。
風の音。
遠くでサイレン。
その中で――
また、距離が縮まる。
今度は誰も止めない。
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