テラーノベル
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「サイサイ降臨」
ふざけた先生と向かい合うと
「サイサイ先生、お願いします」
さらにふざけた先生が大きな声で言う。周りも私達を見るがかまわない。
「真似っこ復習ですよ?」
「オーケー、オーケー」
その返事を聞く間にもアップダウンは開始する。
先生もすぐに出来るので、前のり、後ろのり、横のりをどんどん加えていくと、数人が周りで真似を始める。
簡単なサイドステップなど先生のやったことのあるものを順にやるうちに、私がよく聞いている曲に変わる。
リズムが少し変わると皆の動きが乱れ、ここぞとばかりに
「緒方さーん」
「お久しぶりっす」
と声が掛かるのを見ながら、私は身体中の関節を順番に確かめるよう…関節を順に外すイメージで縦に、横にウェーブを繰り返していると、見ていて気持ち悪いのかな?周りが一歩下がった。
スペースが広くなったので、曲のMVのコピーを軽く始める。
「サイサイ、僕もう脱落だよ」
緒方先生がそう笑って一歩下がると、先生を囲むように立っている男の子…と言っても私よりは年上かな?彼らが両腕を上げて
「「サイサイ、イエーイ」」
みたいなことを言ってもう一歩下がる。
徐々に広くなるスペースで、普通のバク転をしてから一瞬の着地と同時に足を蹴り上げ高くジャンプする。
うん…いけるね……
ギャラリーと化した人たちが囃し立てる中で、膝にも腰にも違和感のないフロアだと冷静に頭と体で確かめていく。
曲は変わった…これは、去年の世界大会国内予選で使った曲だ。
羅依に試されてるね……下のブースにいないのにどうやって曲を仕込んでるのか分からないけれど、明らかに羅依に煽られてる…
‘チマチマ人のコピーで踊ってんじゃねぇ’
ってところでしょ?
出来るよ…そりゃ、大会の時とは仕上がりは全然違う。
でもダンスと音楽を自分が楽しむ以上のレベル、誰かを楽しませるレベルくらいには出来るよ。
リズムだけ取っているうちにもう曲が終わってしまう。
私は一度目を閉じてから、右腕を真っ直ぐ突き上げると人差し指を立て、くるくると手首を回した。
するとすぐに最初から曲がかかり、自分の口角が上がったのが分かる。
ここではクールな表情はいらない。
肩も腕も手も首も背中も腰もお尻も足首もよく動く…そして膝も…羅依見て…先生もありがとう。めちゃくちゃいい感じだよっ……!
そう思った時には……左右の手のひらを上に向けて、全ギャラリーを煽っていた…やってしまった…反省は後でします。
今は踊らせて。
私は自分が満喫して、羅依にも応えて
‘羅依が思っていたより出来たでしょ?’
と窓を見上げる。
兄と話したように羅依が‘かなわない’って言うくらいの出来映えのはずだったのに……羅依は私の上を行くのだ…かなわない………
次の曲の3秒ほどで
‘羅依にやられた’
と思った…泣いてしまいそうだった。
だけど、自分がフロアの真ん中に一人で立っている以上、泣いてなんかいられない。
私は8カウント遅れで踊り始める……幻のイギリス世界大会で踊るはずだった曲で。
コメント
2件
サイサイૡ(・ꈊ・ૡ)˚*ʸᵉᵃʰᵎᵎ 才花ちゃんやられたねー!煽られたねー! フロアも曲も才花仕様にしてぇ〜もう羅依なんなのよぉ〜😭全ギャラリー煽ったって文句言わないよね⁉️😭 才花ちゃん羅依にダンスで返してやろう〜😭羅依の愛がいっぱいのこのフロアで✨
やっぱり羅衣は、才花のことよ〜っく理解してるね。グッとくるよね。 才花いけ〜〜〜😆