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「来てくれてありがとう」スーツ姿の大輝が出迎えてくれた。
長い脚を持て余すように少し広げて、私の隣の席に座る。
通りすがりの拓人さんが私たちに向かって
「大輝、ずっと〇〇のこと待ってたよ」
と冷やかした。
「ああ、そうですよ。待ってました」
ニヤッと笑う大輝に、
「認めるんかい」
と言い残して、拓人さんは自分の席に戻った。
ドリンクがなかなか減らないのを見て、
すぐに大輝が何かに気づいたようだ。
「どしたん。今日……なんかあった?」
私は思わず、
「実は、職場で……」
と打ち明けた。
大輝の相槌は少ない。
全身で話を受け止めるようにして、
じっと私を見ている。少し緊張した。
話をしているうち、辛かったのを思い出して、最後は少し涙がにじんだ。
大輝はどこか怒ったような難しい顔をしていた。
「……俺がそこにいればよかった」
ずっと黙っていた彼が急に口を開いた。
「えっ?」
「俺がその場にいて、守ってやりたかった」
私の職場は、ホストである大輝と何も関係がない。でもはっきりと浮かぶのだ。
私の前に立っている大輝の姿が。
何か違った展開になって、苦しまずに済んだ可能性が。
「うん、そうかも」
そうしたら、大輝はすっと私の片手をとった。
指を絡めて、テーブルの下でぎゅっと握る。
「次からは、困ったら一晩考えさせて、って言ってここに来て、俺に相談すればいい」
と言った後に、
慌てて彼はつけ足した。
「いや、それにかこつけて、通えって意味じゃなくて 。別に電話でもいいし」
あまりに早口だったから、少し笑ってしまった。
「わかってるよ」
「よかった」
大輝も笑っていた。
そして座ったままで、私を引き寄せて一瞬だけ抱きしめた。
「〇〇は大丈夫。俺がいるから」
と言ったあと、ポン、と背中を一度叩いた。
文字通り、大輝の頼もしい手に背中を押された気分だった。
あれだけ不安だったこれからの色々が、
大したことじゃないみたいに思える。
ありがとう、大輝。
困ったことがなくても、会いに来るよ。
end