※過去編①
ぼんさんが最後に食べたのは、たぶん、伸びたカップラーメン。
よく憶えている。あの日のこと。悪夢のこと。
♪…♪♪……♪…♪
「……、…」
ドズルさんからの突然の電話で、はっと目を覚ます。
日曜日の、午前10時。
なんだか、とっくに忘れてしまったけれど。
とにかく、ふわふわした、しあわせなゆめを、見た。その朝だった。
寝ぼけ眼で鉄を引っ掻く。今思えば、ひどく、能天気な。
「…ふぁい、どじゅるしゃん──」
『おんりー…!!!』
「ぇ、」
…………その時の、今までにないくらいの必死な声だけは、よく憶えてんだよな。
『ぼんさんが───…………』
「 …… … … …。」
こえがでなかった。
スマートフォンより、ずっとずっと大きな。鉄の、かたまりに。
生身の人間がぶつかったと、聞いた。
それも、最愛の。最愛のって、何なんだろうな。
付き合ってた。好き合ってた。彼、が。
「……っ、 …、 !」
ぼんさんが交通事故に遭ったと聞いて、寝癖も直さずに家を飛び出した。
そりゃあ、そうでしょう。当然のこと。
あぁ、ちょっと話が長くなっちゃうんだけどね。
その日、急いで家を出たその、朝。
散らかったテーブルの上には、綺麗に完食されたまま片付けられていないカップラーメンが置いてあって。
どうせまた、面倒臭がりなぼんさんのことだからって、思った。
それが最後だった。
なんにもなかった。
なんでもなかった。
ただの日だった。
せめて手料理でも作ってやれば、よかった、。
こんなに、こんなに。悲しくてどうしようもないの。
ぼんさんと一緒に料理したかったなぁ。
きっと、彼はやりたがらないけど。
なんて、暢気なことを一瞬、考えた。
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切ないっ