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妙に暗くなってしまった雰囲気をなんとかすべく、声のトーンをあげて、計画していることの説明を続ける。

「伯母様以外、南方に知り合いはいないが、念のために髪を染めるのと、瞳はカラーコンタクトで誤魔化す。目元にホクロでもつければ完璧か」

「どうでしょうね」

まぶたを伏せたまま意気消沈したカールに、俺を意識する言葉を告げる。

「……ここまで考えた俺を、カールは好きになってくれないのか?」

掴んでいるカールの手を左右に揺らし、強引に俺を見るように仕向けた。すると仕方なさそうな顔で目の前に座り込み、首を横に振って俺のセリフを否定する。

「なんでだよ! 俺がしたくない見合いをしてたときに、悲しそうな目で見ていたじゃないか」

「私ではなく、アンドレア様に相応しい身分の方とご一緒になったほうが、きっと幸せに――」

これ以上聞きたくなかったせいで、舌打ちしてしまった。

「おまえの物差しで、そんなことを決めつけるな。カールじゃなきゃ幸せになれないんだよ、俺は!」

「アンドレア様……」

「おまえに窘められて、凹むくらいに叱られて、たまに褒められなきゃ、俺は生きてる意味はない」

カールの手を引っ張り、胸の中に閉じ込める。ぎゅっと抱きしめて、カールの髪に頬を寄せた。

「俺はカールが好きなんだ。俺がこれだけ気持ちを伝えているのに、どうして素直になってくれないんだ」

「しかし――」

俺の想いを吐露しているのに、それすらも否定されると、どうしていいのかわからなくなる。

「今の俺は貴族じゃなく、ただの男に成り下がってる。そんな俺がおまえとともにありたいと豪語しているのが、気に食わないのか?」

「…………」

抱きしめるカールが身じろぎしながら、恐るおそる顔をあげた。微妙な面持ちでいる彼に、なにを告げたらいいのか思案していると。

「私はアンドレア様をお慕いいたして…んッ!」

俺の名を告げた時点で、頬を薄ら赤く染めあげた姿に堪らなくなり、唇を塞いでしまった。ずっと欲していたせいで、貪るようなキスになっていく。

「んんっ……ぁっ」

カールが逃げないように、後頭部の髪を手荒に掴んで舌を絡めた。それに呼応するように、カールが唇を押しつけて、求めるように舌を絡ませる。

感じさせられたのを知られたくなくて、みずから顔を遠のかせた。

「アンドレア様からのプレゼント、とても嬉しいです」

そう告げたカールの表情は、とても明るいものだった。ずっと眺めていたくなる笑顔に向かって、あえて文句を言ってみる。

「なにを言ってるんだ。俺はおまえから、プレゼントをもらってないぞ」

「それって――」

言いかけたカールの顔が、ここ一番で真っ赤に染まった。俺の告げたセリフの意味がわかって、なによりといったところだろう。

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