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「エティーナ様ッ!」
そんなある日、マリアが顔面を近づけてど迫力でそう言った。
「何なの、マリア?
外にいるのでは無いのだから、そんなに大きな声を出さなくても聞こえているわ。」
私は少しめんどくさ気にそう言った。
「エティーナ様!」
「だから、何なの?」
「エティーナ様は後宮の、いいえ、この国の噂をご存知ですか?」
はて、何のことだろう?
この国にまつわる噂話ならば、私の耳に入るようになっているはずだが…
全く思いつかない。
「一体何なの?
そんな噂は知らないわ。」
「エティーナ様が皇帝陛下の正妃になる、と言う噂にございます!!!」
私は飲んでいた紅茶を吹き出した。
「はぁぁぁ!?
私が皇帝陛下の正妃にィィ!?」
びっくりし過ぎて言葉も出ないとはこの事である。
しかし、マリアは神妙な顔つきで事の次第を説明した。
「エティーナ様?
エティーナ様は、先日、ルードラの街から帰った後、夜の9時頃本城に行かれたそうですわね?」
「え、えぇ…?
確かに行ったわ。
火急の用件があったせいね。
それがどうかして?」
「その時に皇帝陛下のお部屋に泊まりませんでしたか!?」
「泊まっ…た…かな?」
そういえば、夜も遅いし、ルードラの鉱山の事などについて話し合っていた気がする…
「まさ…か…!」
「その、まさかでございますわ!
皇帝陛下が後宮の姫君を自分のお部屋に泊める事はありません!
それが、許されるのは正妃だけなのです!!!」
マリアが力強く言った。
「そ、そ、そんな!?
私はただ夜も遅いから泊まっただけで、深い意味など…」
「でも、皇帝陛下はその意味を知った上で、エティーナ様を泊められたはずですわ!
これは…
皇帝陛下からの求婚なのでは!?」
「まさか!
そんな深い意味など無いわよ!」
私は言うが、もはや後の祭りだった。
後宮では、エティーナ様!と姫君達に頭を下げられるし、一度立った噂というものはそうそうは消えないのだ。
私は困り果てていた。
なぜなら、今の生活に不満は無いし、正妃になるつもりなど毛頭なかったからだ。
そんな中皇帝陛下が私の部屋を訪れた。
「何か大変な事になったようだな。
くっくっ。」
笑いを堪えてながら言う皇帝陛下は確信犯のようにも思えた。
「陛下!
笑い事ではございませんわ!
私は本当に困っていて…」
「何故困る?
俺の妃になれるやも知れぬのだぞ?
困る理由などありはしないだろう。」
皇帝陛下は言う。
「そ、そ、それは…
正妃ともなれば、お互いの気持ちが大事にございます!
勢いに任せて、噂話に身を任せる話ではございません!!!」
私は少し強めにそう言った。
「お互いの気持ち…な…」
皇帝陛下は渋い顔でそう呟くだけだった。
「とにかく陛下からも無責任な噂話を流さぬよう、注意喚起してくださいませ。」
「わかったわかった。
全く、いつ実る事やら…」
「は?」
「何でも無いわ。
あほう。」
「なっ!?
あほうと言う方があほうに…」
皇帝陛下はその日は泊まらずに帰って行かれた。