誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第133話 〚“明日休み”に気づいた瞬間、計画が一気に動く回〛
――澪視点
放課後。
教室には、
まだ人が残っていた。
片付け途中の机。
開いたままのカバン。
その中で。
陽翔が、
スマホを見ていた。
一瞬、
画面をスクロールして。
「あ」
小さく、
声を出す。
「明日、
休日じゃん」
その言葉で、
何人かが顔を上げた。
陽翔は、
一度周りを見渡してから。
「……カラオケ、
行きたくね?」
空気が、
少しだけ弾む。
澪。
えま。
しおり。
みさと。
りあ。
海翔。
怜央。
湊。
瑠斗。
悠真。
一人ずつ、
名前を呼ぶみたいに。
「明日、
空いてる?」
「行こうぜ」
「息抜き」
そんな言葉が、
重なりかけた――その時。
廊下から。
ドタドタドタッ
走ってくる音。
一瞬で、
陽翔の表情が変わる。
「しっ」
指を立てて、
小さく合図。
「今、
喋らない」
皆、
何も聞かずに黙った。
次の瞬間。
ガラッ。
教室のドアが、
勢いよく開く。
真壁恒一だった。
息を少し切らして、
机の方へ向かう。
「あった……」
忘れ物を掴んで、
すぐに振り返る。
その間。
誰も、
何も言わない。
空気が、
張りつめたまま。
すると。
陽翔が、
突然言った。
「じゃあさ」
明るい声で。
「明日、
会議な」
一瞬。
澪たちは、
何のことか分からない顔をして。
——でも。
すぐに、
察した。
誰も、
否定しない。
真壁恒一は、
特に気にも留めず。
そのまま、
教室を出て行った。
ドアが、
閉まる。
足音が、
遠ざかる。
……完全に、
いなくなった。
その瞬間。
「でさ!!」
りあが、
一気に声を上げる。
「カラオケ!!」
「何歌う!?」
「明日だよね!?」
空気が、
一気に緩んだ。
陽翔は、
何事もなかったみたいに。
「だから言ったじゃん」
と、
笑う。
澪は、
その様子を見ながら。
——さっきの「会議」は、
合言葉だったんだ。
そう、
静かに理解した。
カラオケの話は、
続く。
でも。
それ以上に。
「危ない時は、
止める」
その共通認識が、
もう自然に出来ていることに。
澪は、
少しだけ胸が温かくなった。
何も起きなかった放課後。
でも。
ちゃんと、
守られていた時間だった。






