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まぜ太視点
今日はアンプタックでの飲み会。
数時間経つ頃にはすっかりみんな酔っ払っていて、服を着るよう促したり騒いでる奴をたしなめたりした後にお開きとなった。
それぞれタクシーに乗って去っていくのを見届け、まだその場に残っていた想い人でもあるぷーのすけに声をかけた。
「俺の家で二次会しよーぜ」
「ええで〜!まだまだ飲みますかぁ!」
他メンバーよりは酔ってないものの、ある程度お酒が入ってぽわぽわしているぷーのすけを自分の家に呼ぶことに成功した。その時点で正直ちょっと浮かれてたと思う。
それなのに──。
「んふ、それでなぁ?あっきぃがな〜」
「……ふーん」
「……おまえちゃんと聞いてんのかよ」
「聞いてる聞いてる」
「ほんとかよ。……あ、そういえばこの前あっとが……」
せっかく家で二人きりなのに、口を開けばさっきから他メンバーのことばっかり。
さすがに嫉妬で狂いそう。
何が悲しくて好きな人が他の奴のことで楽しそうな姿を見なければいけないのか。しかも、あっきぃとここに出掛けただとか、何をしただとか。
なんなんだよ。おまえら付き合ってんのかよ。
……え?付き合ってんのかな。
たしかに思い返してみれば距離はやたら近いし、配信でも配信外でも平気でいちゃつくし、お互いのこと「好き」って当たり前みたいに言い合ってるし。
なにより、あのツンデレ代表みたいなぷーのすけが自分からあんなふうに愛情表現する相手だ。
──どう考えても、特別じゃん。
「……いや、無理だろ」
思わず小さく笑いが漏れる。
え?付き合ってるじゃん、こんなの。 今まで気づかなかった自分の方がおかしいまである。
勝ち目なくね?
ていうか、勝負にすらなってなくね?
スタート地点に立つ前に、もう全部終わってたみたいな。
「……ぷーのす……け?あれ?寝てる?」
気づけばさっきまでの声が途切れていて、部屋がやけに静かになっていることに違和感を覚えて顔を上げる。するとそこにいたはずのぷーのすけの姿がなくて、視線を落とした先、床の上で寝転がりながらすぅすぅと規則正しい呼吸を立てている姿を見つけた。
「え、かわいい……」
思わずそのまま声が出る。
無防備に眠る顔があまりにも柔らかくて、さっきまでのモヤモヤとか全部どうでもよくなるくらいに胸がぎゅっと締め付けられる。
気づけば机の上に置いてあったスマホを手に取っていた。
待て。このまま撮るのさすがにやばいか?
メンバーの寝顔勝手に撮るの普通にキモくね?
頭の中で一応ブレーキはかかる。 けど、その迷いはほんの数秒で。
「……あとで消せばいいし」
誰に対しての言い訳かも分からないことを小さく呟いて、静かな部屋の中でシャッターを切る。
パシャリ、という音がやけに響いて思わず肩がびくっと跳ねた。
「……やっば」
慌てて顔を上げて様子を見るけど、ぷーのすけはぴくりとも動かず変わらず気持ちよさそうに眠っている。
「……セーフ、か」
ほっと息を吐きながら、撮ったばかりの画面を見下ろす。
かわいすぎだろ。
さっきまであんなに楽しそうに笑ってたやつが、今は完全に力を抜いて眠ってる。そのギャップにやられて、思わず小さく笑ってしまう。
このまま床で寝かせるわけにもいかないし、風邪ひかれても困る。
「ほら、起きろ……って無理か」
軽く肩を揺らしてみても反応はなくてら小さく声を漏らしてさらに深く眠るだけ。
「しゃーねえなぁ」
そう言いながら腕を差し入れて抱き上げると、さっきよりもずっと無防備に体を預けてきてその感触に無駄に意識が引っ張られた。
そのままベッドまで運んでそっと下ろした瞬間、服の裾をきゅっと掴まれて思わず息が止まる。
一瞬だけ固まるけど、すぐにまた静かな寝息が戻ってきて、力が抜けた。
「……びっくりさせんなよ」
苦笑しながらも、その手を振り払うことはできなくて、そのままベッドの端に腰を下ろす。
近い。 さっきまでよりも、ずっと。
視線を落とせばすぐそこにある寝顔と、さっきまでの会話と、頭の中で出した結論が全部ぐちゃぐちゃに混ざる。
どうせ、あっきぃのなんだろ。
だったら。
「……ちょっとくらい、いいよな」
誰にも聞こえない声で呟いて、そっと距離を詰めた。
ちゅ、と小さな音を立てて、まずは軽く頬に唇を当てる。
ほんの一瞬触れただけなのに、それだけで妙に心臓がうるさくなって、変に意識してしまう自分に苦笑した。
そのまま、次は瞼に。
薄く閉じられたそこにそっと触れてから、今度は鼻先へと唇を落とす。
順番に確かめるみたいに触れていくその行為が自分でも少しおかしいと思いながらも、止める理由が見つからなかった。
指先で前髪を軽く持ち上げて、額を出してやる。
「……無防備すぎ」
小さく呟いてから、そこにも軽く口づける。
そのたびに、「ん……」とわずかに漏れる声。
眠ったままなのに、ちゃんと反応が返ってくるのがやけに生々しくて。
やばい。
どこか妖美で目を逸らしたくなるのに逸らせない。
「……ほんと、ずるいって」
こんな状況でそんな声をだされて、何もするなって方が無理だろ。
理性では分かってる。
それにここから先は、完全にラインを越える。
一瞬だけ迷ってそれでも結局目を閉じた。
ゆっくりと距離を詰めて、ぷーのすけの唇に、自分の唇を重ねる。
触れるだけのほんの一瞬のはずだったのに、思ったよりも離れられなくて。
柔らかい感触とかすかな体温がじわっと広がって、心臓が壊れそうなくらいに跳ねる。
「……っ」
息を飲んで、ようやく離れた。
やっば。
今さらになって現実感が押し寄せてきて、手のひらがじんわりと汗ばむ。
「……俺、なにやってんだよ」
小さく呟きながらも、視線はどうしても離せなくて。 触れたばかりの唇が、やけに熱く感じた。
ここまできたら、もう同じだよな。
引き返せるラインなんてとっくに越えてる。
首元が緩く開いた服の隙間から覗く、白い肌。
無防備に晒されているそれに視線が釘付けになる。 ゆっくりと手を伸ばして、服の襟に指をかける。
少しだけ引いてやると、よりはっきりと鎖骨が浮かび上がる。
その瞬間、喉がひくりと鳴った。
──だめだ、と思うのに。 止まらない。
「……ちょっとだけ」
自分に言い訳するみたいに呟いて、顔を近づける。
ゴクリと唾を飲み込んで、そのまま、がぶりと、鎖骨に歯を立てた。
思っていたよりも柔らかくて、温かくて、現実感が一気に押し寄せる。 そのまま少しだけ強く噛んでから、ゆっくりと離す。
薄く残る跡を見て、胸の奥がじわっと熱くなる。
「……やば」
小さく笑って今度は首元へと唇を移す。
同じように歯を立てて、それから吸い付く。
「っふ、んあ……」
すぐ耳元で零れたその声に、思考が一瞬で真っ白になる。
甘くて、掠れてる無防備な声。
こんなの聞かされたら、もう。
「……無理だって」
かろうじて残っていた理性が、ぐらりと揺れる。
目の前にいるのは、好きなやつで。
自分のせいで、こんな声を出してて。
それを、こんな距離で聞いてる。
「……ほんと、無理」
小さく呟いた。 それでも手も唇も止められなかった。
「……すー、やっっべぇ」
小さく息を吐きながら、そのまま両手で顔を覆う。
完全にやりすぎた。
数分前の自分を本気で殴りたい。 指の隙間から、ちらりと視線を向ける。
ベッドの上で無防備に眠っているぷーのすけ。
その首元、胸元、腕。
さっき自分がつけた跡が、はっきりと残っている。
「……うわ、えぐ」
思わず引いたような声が漏れる。
キスマだの、噛み跡だの、言い訳のしようもないくらいにはっきりと。
これどうすんだよ。 頭を抱えたくなる。
けどそのとき、 アルコールがまだ残っているせいかふっと妙な考えが浮かんだ。
もしこのまま朝になって、 ぷーのすけが目を覚まして自分の体を見て、 俺と酔った勢いで一線越えたって思ったら?
「……いや」
ありえない、ってすぐに否定しようとしたのに。
その先の展開を想像してしまう。
混乱した顔。 問い詰めてくる声。
それを、適当に誤魔化して。
「酔ってたし、仕方なくね?」なんて言って。もし、もしも。ぷーのすけを上手く丸め込むことができたとしたら?
「……っ、やめろって」
ぶんぶんと頭を振って、その考えを無理やり追い払った。さすがに、それはだめだろ。
「あっきぃいるのに……寝取るとか」
小さく呟いた声は、自分でも分かるくらい弱かった。
いくら好きでも、そこまで落ちたくはない。
「……全部、酒のせい」
ぽつりと呟く。 そういうことにしてしまえば、少しは楽になる気がした。 ぷーのすけは混乱するだろうけどまあそこはなんとかなるだろ。
笑って、適当に誤魔化して、流してしまえばいい。 たぶん。
自分に言い聞かせるみたいに、もう一度小さく頷く。
少し火照った頬を手のひらで撫でてから、ゆっくりと視線を落とす。
まだ眠ったままのぷーのすけ。
「……ほんと、何も知らねえでさ」
小さく笑ってその手を取る。
指先が細くて、綺麗で、妙に意識する。
そのまま薬指をそっと口に含んだ。
一瞬だけ迷ってから、軽く歯を立てる。
「……これくらいなら、いいだろ」
誰にも聞こえない言い訳を落として、唇を離す。
そこに残った、赤い跡。
それを見てどこか満足したように息を吐いた。
「……ほんと、最低」
自嘲気味に呟いてから、ぷーのすけの隣に寝転がる。
──明日、どうすんだよ。
答えなんて出ないまま、目を閉じる。
「……おやすみ」
小さく呟いて、そのまま意識を手放した。
続きます。
コメント
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コメント失礼します🙇 前回投稿されたakprから主様をフォローさせていただいたのですが、前回含め主様の書き方や解釈がとても大好きです(ᴗ͈ˬᴗ͈)♡ 後悔の中に優越感を抱いていそうな人間らしい攻めが好きで、今回のmzさんが癖に刺さって抜けません🤭💕 ここからどうなるのか、mzprとして成立するのか、続きが気になって仕方ないです🫣