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第2話 月影の羅針盤(上)
あぁ、苛々する。
もう!何で、あの人は帰ってこないの?
…今日は結婚記念日なのに。
私・香田 愛。
夫婦で過ごしているのだけど、最近夫が帰ってくるのが遅かったり、連絡がつかないことが多いの。
でも、今日だけは帰ってくると思ってた。
…思ってたのに。
私たちが結婚して5年になる。
まだまだ、一緒にいる時間は短いのかもしれないけど、私は夫のことが大好きだ。
私たちは、高校の頃、出会って5年の交際を経て結婚した。
ただただ、幸せで、こんなことになるとは思ってなかった。
約束の時間を2時間すぎた。
8時ごろには、帰ってくると言ったのに。
どうしよう。
愛想、尽かされちゃったのかな?私。
相談しようかな。
誰かに。
不意に、ある一人の人が思い浮かんだ。
幼馴染の、吉田 公正だ。
でも、公正とは、何年も会ってない。
……一人で解決するしかないのかな?
そう、思ってたため息を吐いた時。
視界が白く弾けた。
…眠っていたのだろうか?
ゆっくりと目を開けると、私は一面木の、森に立っていた。
「え…ここ、どこよ?」
戸惑ってあたりをくるくる見合わしていたら、「みゃあおー。」
と、猫の鳴き声らしきものが聞こえた。
振り返ると、予想通り猫がいた。
「みゃあお。」
濃い紫色をした瞳が淡く光った。
その瞳は、首に結んである組紐らしきものの色と同じだ。
その瞳を向けられた瞬間、全てがどうでも良くなった。
猫は、森の奥へ進んでいった。
私は、何も考えずにフラフラと後について行った。
気がつくと、小さな小屋のような建物の前に立っていた。
猫はその中へスタスタと入っていった。
私も後に続いて、中に入った。
扉を開けて、中に入ったところで、はっ、と我に帰った。
急いで出ようとしたら、
「待ってください」
と、声をかけられた。
振り返ると、そこには、美しい少女が立っていた。
小柄な体に、ほっそりとした体。
肌は透き通るほど白く、綺麗な黒髪をハーフアップでまとめている。
中学生くらいだろうか?
「香田愛さん、でよろしいですね。」
え、何で?私の名前を?
「え、あの、初対面ですよね?」
私の記憶、あってるよね?
「はい。私は、月詠夢路です。こちらは、猫の帳です。」
え、待って。初対面で合ってたのに。
何で?
「あの…どうして、私のこと。」
「あなたのことは、リサーチ済みですから。」
はぁ?リサーチって何よ?
「リサーチって…。」
「ご安心下さい。私、占い師です。」
占い師?ますます意味が分からない。
「あなた、夫さんとの関係に悩まされてますよね?」
え?何で?知ってるの?そのこと。
「え?…どうして?」
どうなってるの?展開に追いつけないんだけど。
「知っても意味はありません。」
はあ?生意気なやつ。
「私が、その悩み、解決してあげます。」
「はぁ?どういうことよ。」
あ、本性がでちゃった。我慢できなくなった。
「あなたの、その悩み。夫さんとの関係を解決したいという依頼、引き受けますけど?」
依頼?引き受ける?どういうことよ?
…でも、
「面白いわね。あなた。」
「光栄です。香田愛さん。依頼、しますか?」
少し迷った。でも、少しだけでも、夫との関係に希望が生まれる可能性があるのなら。
「…お願いします。依頼、します。」
「…分かりました。引き受けます。」
そう言って、ニヤリと猫の帳と顔を見合わせて、こちらに向かって言った。
「ようこそ。恋愛相談センター・恋愛占術館へ。」