テラーノベル
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レイの部屋。朝の空気は妙に張りつめていた。「……インターホン、鳴った。」
レイは窓の外へと静かに目を向けた。
ドアスコープ越しに確認すると、すぐに気付く。あの3人――だぁ、すかー、夢魔だった。
レイは口元に指を当て、ネグとマモンにジェスチャーで伝える。
『3人が来てる!』
ネグは一瞬、体を硬直させたが、すぐに「……分かった」と小さく頷いた。
マモンもすぐに動き出す。
「急げ、ネグ。」
「うん……」
ネグは急いで服を着替える。白のトップスに黒のスカート。鏡の前で軽く髪を結い、ゴムでハーフアップにした。
マモンは黒いジャケットを羽織り、ジッとスマホを見た後、ため息を吐いた。
「来たか……とうとう。」
その間にも、レイは手早く黒のカバンを準備する。
中には財布、スマホ、モバ中、イヤホン、車とバイクの鍵、通帳。
靴もカバンの中に一足突っ込み、最後に髪を後ろで結んだ。
「ネグ、マモン。準備できた?」
「うん。終わった。」
ネグはカバンを肩にかけ、マモンもそれに続く。
レイは一度、深く息を吸ってから、玄関のドアノブに手をかけた。
「……行くか。」
ゆっくりとドアを開ける。
――その先に、だぁたち3人が静かに立っていた。
外はまだ朝の光が淡く広がっている。
だぁは白いシャツに黒いコートを羽織り、無言でレイを見つめた。
すかーは腕を組み、夢魔はポケットに手を突っ込んでいたが、2人とも表情は完全に無。
レイは一歩だけ踏み出し、静かに微笑んだ。
「やあ、おはよう。……そんな顔、しなくてもいいじゃない?」
だぁは一切笑わずに言った。
「ネグは……いるんだろう?」
「いるよ。」
レイは肩をすくめた。
「準備中。すぐ出てくる。」
その一言で、玄関の中からマモンがゆっくりと姿を現した。
「よお……だぁ、すかー、夢魔。」
夢魔が少しだけ目を細めた。
「……よく顔、出せたな。」
マモンは苦笑いしながら頭をかき、「まぁな」と言った。
続いて、ネグがゆっくりと玄関に現れた。
少し視線を伏せながらも、準備は完璧だ。カバンを肩にかけ、目だけ上げて3人を見た。
すかーが低く呟いた。
「……本当に……」
「……今度は、逃がさないからな。」夢魔が続ける。
レイは静かに玄関を開け放ち、手を伸ばして合図するように言った。
「とりあえず、中、入る?」
だぁは一瞬だけレイを見た後、ゆっくりと頷いた。
「……お邪魔します。」
だぁ、すかー、夢魔の3人がゆっくりと玄関を踏み越えてくる。
その足音すら、妙に静かで重かった。
レイは玄関を閉めながら、低く呟いた。
「……朝から、重い空気だな……」
その呟きに誰も返事はしないまま、部屋は再び静まり返った。
───
【外で待機していた3人の会話:直前の視点】
だぁは、腕時計をちらりと見ながら、静かに言った。
「……レイのところか。」
すかーは不機嫌そうに腕を組み、「間違いねぇだろ」と唇を歪める。
夢魔は煙草を咥えたまま吐き捨てるように言った。
「ここで何分待ってると思ってんだ……あいつら、マジで。」
だぁは静かに、でも確実な口調で言う。
「ネグは絶対、ここにいる。」
すかーが眉間に皺を寄せる。
「ま、あいつのことだ。隠れたりしてるだろうけど……今度こそ逃がさねぇ。」
夢魔は煙草を足元で踏み消し、だぁを見る。
「インターホン、鳴らすか?」
だぁは静かに頷いた。
「――ああ。」
そして、だぁの指が静かにボタンを押した。
ピンポーン……
部屋の中からはまだ反応がない。
だが、この沈黙もほんの一瞬。
やがて、レイが姿を現すまで、3人は微動だにせず、ただ静かに立ち尽くしていた。
その背中からは、静かながらも確実な怒気と、いつもの穏やかさとは違う重い空気が流れていた。
───
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