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『はじまりのまち』に行こうとした俺たちはアパートと合体している『亀型モンスター』と友好関係を築かなければ旅はおろか生活すらままならないことに気づいた……。

俺たちはその課題をクリアすべく『作戦名 巨大亀の怒りを静めよう!』を発動し、今に至る。

なお、作戦発動時にミノリの血がさまざまな武器や道具に変形可能なことを知った。

それと同時にコユリからモンスターチルドレンには最低で五人、最大で十人は自分と同じ型、つまり自分の他に最低四人は同型がいるということを聞かされた。(自分以外の同型を殺さなければ完全な存在になれないということも……)

そのため、俺は一刻も早くこの作戦を終わらせなければならない……。



俺は巨大な『亀型モンスター』の頭の上にうまく着地すると、背中から生えている十本の鎖を鞭のように動かし攻撃した。


「おい! 聞こえるか! 亀型モンスター! 俺はあのアパートに住んでる者だ! 話がしたいから暴れるのをやめろ! さもないと全身透明なせいで見つけるのに苦労した、その金色のメインカメラみたいな目をこの鎖でえぐり取るぞ!!」


俺は大声でそう叫んでいる間も背中から生えている十本の鎖でペシッ! ペシッ! と力強く巨大な『亀型モンスター』の頭部を攻撃し続けた。

すると揺れが急に収まったため、攻撃を中止した。

その後、俺は巨大な『亀型モンスター』に聞こえるように大声で再び話しかけた。


「おい! 聞こえてるか! 亀型モンスター! 聞こえてたら返事をしろおおおおおおおおおお!!」


話しかけるというより叫んだ……と言った方が妥当だろうか。

俺は耳の遠いお年寄りに聞こえるくらいのボリューム以上で叫んだ。

だが、帰ってきたのは声ではなく『念話』だった。


「少し背伸びしたくらいで、そんなに怒らないでよ」


あれ? 頭の中に直接、声が聞こえてくる。いったいどういう原理なんだ? というか、今の声って、まさか……。

俺がその答えを言う前に、そいつは答えた。


「そう、僕が君たちで言うところの巨大な『亀型モンスター』だよ」


俺はその仕組みをようやく理解し、その方法で応答することにした。(つまり、念話)


「え? じゃあ、さっきまで部屋が……というかアパートが揺れてたのって……お前が背伸びしてただけだっていうのか?」


「うん、そうだよ。長い間、眠ってたから体が鈍っちゃって、つい……」


背伸びが地震並みの亀なんて聞いたことないぞ。うーん、この世界のモンスターは、みんなこんな感じなのかな?

俺がそう考えていると、巨大な『亀型モンスター』は……って、いちいち言うの面倒だな……。よし、これからは『その亀』でいこう。

俺がそう考えていると『その亀』は、俺にこんなことを伝えてきた。


「ねえ、もしかして、僕と友好関係を築きに来たの?」


物分かりのいい亀で助かった。今回はすんなりいきそうだ。


「ああ、そうだ。俺たちはお前の甲羅の中心にあるアパートに住んでいる。まあ、そんなことをさっき知ったばかりなんだが、お前と仲良くしたいと思ってる。別にお前を信用していないわけじゃないが、手始めに『はじまりのまち』に向かってくれないか?」


『その亀』は少し迷っていたのか、答えを言うのにやや時間がかかったように思えた。


「……分かった。じゃあ、とりあえず僕に名前をつけてもらっていいかな? あっ、ちなみに僕が気に入らなかった場合は、すぐに君たちを僕の甲羅の上から下ろすからね」


「……は?」


俺は思わず声に出して、そう言ってしまった。

えーっと、つまりこれから『はじまりのまち』に行きたいと俺が言っても、名前が地味だったら俺たちの意思に関係なく下ろされる……ってことか?

あれー? これってもしかして、俺に全てがかかってる感じー? い、いやいやいやいや、いくらなんでも名前の気に入る気に入らないは人それぞれ……。

その時、チエミ(体長十五センチほどの妖精)が『その亀』について、何か重要なことを言いたそうにしていた、あの光景が目に浮かんだ。

そうか……。チエミは『その亀』が名前を要求することを知っていたから、あの時……俺にそのことを言わなかったのか……。

それに気づいた俺は責任など一切感じなくなり、むしろギャンブルをしているかのような気分になった。

自分の行動一つで天国にも地獄にもなり得る、この状況をいっそ楽しんでしまえばいい。人生は楽しんだもの勝ちだ!!

なんとなく開き直った俺は『その亀』に名前をつけることだけに専念した。

タートル、トータス、フォレスト、キャッスル。うーん、なかなかいい名前が思い浮かばないな。

まずいなあ、このままじゃ俺たちの旅が始まる前に終わってしまうぞ。うーん、どうしよう……。

珍しくいい名前が浮かばなかった俺は、自分が今まで付けた名前を振り返った。

ミノリ、マナミ、シオリ、(サナエ)、ツキネ、コユリ、チエミ……。

その時、俺はあることに気づいた。それは……全員三文字の名前だということだ。

まあ、それに気づいたところであまり関係ないのだがな……。

俺は心の中でそう呟くと、いつも通り三文字の名前にすることにした。

『その亀』の頭部にあぐらをかいて座ると目を閉じ、名前を考えることだけに集中し始めた。

だが、その状態は長くは続かなかった。

先ほどとは違って、あっさりいい名前が思い浮かんだからである。

『その亀』が気に入りそうで、三文字の名前。よし、これでいこう!

俺は、そう決意すると『念話』で一つ質問した。


「なあ、お前の性別ってメスだよな?」


「うん、そうだよ。でも、どうして分かったの?」


「えーっと、だな。その……オスだったら、俺と友好関係を築きたいなら、俺と戦え! みたいなことを言い出しそうだろ? それに……」


「それに?」


「なんかお前と話してると、なんとなく女の子と話してる気がしたからだ。まあ、俺の世界にも自分のことを僕っていうやつがいるから、その影響かもしれないな」


「……ふーん、そうなんだ……。それで? 名前は決まったの?」


「ああ、なんとかな。それじゃあ、お前にぴったりな名前を今から言うから、よーく聞けよ?」


「うん、分かった」


俺は、一度深呼吸をして心を落ち着かせた。もし、気に入られなかったら、そこで終了。

だが、確率は五十パーセント。だから、どうなるのかは、こいつ次第。

ここまで来たら、一か八かだ!

その時、「さあ、賭◯グルイましょう!」とサナエ(『暗黒楽園《ダークネスパラダイス》』の主)が言ったような気がした。

これで俺たちの未来が決まるのなら、言わずに後悔するより、言って後悔してやる!

俺は、自分にそう言い聞かせると『その亀』に自分が思いついた名前を伝えた。


「いいか、今からお前の名前は『ミサキ』だ! 漢字で書くと『山』と亀の甲羅の『甲』という字を合わせたものだ! どうだ? 気に入ったか?」


『その亀』は少しの間、その名前を何度も何度も呟いていた。

その間、俺は鎖をもっとうまく扱えるように、色々試していた。

しかし、そう上手くはいかなかった。鎖の長さは長くすればするほど扱いにくいし、糸のように形を変化させることもできない。

しかもこれが十本もあるのだから予想以上に難易度が高い。

ミノリ(吸血鬼)を助けようとした時は、もっと自由に扱えていたような気がしたのだが……。まあ、ぼちぼちやっていこう……。

そんなことをしていると『ミサキ』が『念話』を再開した。


「うん、悪くないね! ちゃんと亀の要素も入っているし、なにより『山』と『甲』で山よりも大きな甲羅を背負っている亀をイメージできるところなんか最高だよ! いい名前を付けてくれて、ありがとう!!」


どうやら気に入ってくれたようだ。やれやれ、これで一件落着……かな? 俺は立ち上がりながら『念話』でこう返事をした。


「そうか、そうか。それは良かった。じゃあ、もう用は済んだから俺は戻るぞ。あー、あと、俺がさっき言った『はじまりのまち』を目指してくれ」


「うん! 分かった! あっ、そうだ……ねえ!」


「ん? なんだ?」


「今度会う時に、僕の本体を見せてあげようと思うんだけど、どうかな?」


「どうって言われても、それはお前が決めていいと思うぞ」


「そっか。そうだよね。それは僕が決めることだよね」


彼女が静かにそう呟くと、彼は彼女にこう言った。


「ん? 今なんか言ったか?」


「う、ううん、なんでもないよ。それじゃあ、気をつけて帰ってね」


俺は「ああ、分かった。それじゃあ、またな!」と言いながら、チエミ(体長十五センチほどの妖精)からもらった力で風を制御し、その場に浮くと、そのままアパートに向けて飛び始めた。

俺は背中から生えている十本の鎖を翼のように広げると、うまく風を捉えながら、アパートへと急いだ。

コユリ(本物の天使)のスピードにはとても及ばないが、その半分くらいのスピードで飛んでいるという実感はあった。

その時、ミサキ(外装)が前進し始めたので『はじまりのまち』に向かい始めたんだな……と心中で呟いた。

その後、俺は、少しだけスピードを上げた……。

ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜

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