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#ボーイズラブ
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男子校の文化祭
それは、日頃行き場のないエネルギーを溜め込んだ野郎共が、一年に一度だけ合法的に狂える祭典だ。
俺のクラスが出し物として選んだのは、あろうことか「女装執事喫茶」。
クジ引きの結果、俺は文化祭後半の2日目にフリフリのついたエプロンに、タイトな黒のスカートを穿かされる羽目になった。
2日目の午後───
客足も落ち着いてき、やっと脱げると考えて安堵していた。
「……何度見ても死ぬ。マジでこの世から消えたい…まあ、もう少しの辛抱か」
(阿久津も当分の仕事に追われて俺のこの姿は見てねぇし、その間に着替えちまえばネタ扱いされることもねぇし…)
しかし、鏡に映る自分の姿───
銀髪を雑にまとめ、慣れないストッキングに足を包んだ姿は
自分でも引くほど「見れてしまう」のが余計に腹立たしい。
「おい、我妻。このあとのキャンプファイヤーサボろうぜ……って、…っ」
冷やかしに来たはずの阿久津が、入口で立ち止まったまま動かなくなった。
手にしたプロテインを床に落としそうになりながら
こいつは俺の全身を、つま先から頭の先まで
まるでスキャンでもするようにねっとりと凝視する。
「……なんだよ。笑いたきゃ笑えよ、クソ阿久津」
精一杯の威嚇で睨み返したが、阿久津の反応は予想とは真逆だった。
あいつは顔面を蒼白にさせたかと思えば
次の瞬間、見たこともないほど耳まで真っ赤に染め、血管が浮き出るほど拳を握りしめた。
「……いや、我妻。お前、マジで一回死ね?」
「は?そんなにきめぇかよ、俺が着たくて着てんじゃねぇんだよ。文句あんならこの地獄を企画した実行委員に言えよ!」
「……っ、ちょ、お前さ、こっちこい」
阿久津は俺の罵声を無視して
細い俺の手首をミキッ、と音がしそうなほどの力で掴んだ。
そのまま、クラスの連中や女子高生の客がひしめく喧騒の中を、猛烈な勢いで突き進んでいく。
「痛ぇな…離せよ。早く脱ぎてぇんだよこれ」
「んなのどうでもいい。お前、その…あんなツラして他の男にヘコヘコしてたかと思うと……マジで殺意沸くわ」
引きずり込まれたのは、一般客の立ち入りを禁止している旧校舎の資材置き場だった。
埃っぽい空気と、微かに香るペンキの匂い。
重い扉が閉まった瞬間、阿久津様子が変わった。
「……お前、自分が今日、どんな目で見られてたか分かってんのかよ?」
「知るかよ! ……ん、っ!?」
言葉は、叩きつけられるような唇の衝突によって塞がれた。
前回の「事故」とは違う。
阿久津の舌が、俺の口内を強引に蹂躙し、支配しようと暴れまわる。
逃げ場を塞ぐように壁に押し付けられ、フリルのついた衣装が、阿久津の大きな手に握りつぶされる。
「っ……、やめ……あ、くつ……っ!」
「やめねぇ……。お前が悪いんだ。お前がそんな、ムカつくほど可愛い格好して、俺以外の前に出るからだ……っ」
阿久津の瞳は完全に据わっていて、底の見えない欲望が渦巻いていた。
スカートの中に大きな手が入り込み、剥き出しの太ももに指が食い込む。
優しさなんて一微塵もない
それはもはや喧嘩の延長線上にあるような、暴力的なまでの執着だった。
床に転がっていたマットの上に、俺の体は乱暴に押し倒された。
抵抗しようと振り上げた腕も、阿久津の重い体重に抑え込まれる。
「……っ、阿久津……お前、マジでやりすぎ、……っ!」
「うるせぇ…こうでもしねーと、頭パンクしそうになんだよ……っ…おめーが抵抗しねぇのが悪ぃんだからな」
不器用で、幼稚で、それでいてあまりに重すぎる愛の告白。
「し、しようとしてるだろ…!お前がゴリラすぎんだよ!」
「もっと力あんだろ、顔赤すぎ」
服を剥ぎ取られ、剥き出しの肌に阿久津の熱が混ざり合う。
痛みと快感が交互に脳を殴りつけ、思考が真っ白に塗りつぶされていく。
感情を言葉にする術を持たない俺たちは、ただ互いの身体を壊すように、貪るように求め合った。
資材置き場の薄暗い中で
俺は阿久津の広い背中に爪を立て、あいつの名前を何度も呪いのように呼び続けた。
それが、俺にできる唯一の「やり返し」だったから。