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「……駄目だ。テレポート出来ないな」
闇神を懲らしめ光神に認められたことで、おれたちは神族の国ヘリアディオスからようやく脱出が出来る。そう思って転送魔法を使い、移動を試みた。しかしどういうわけか、全く発動出来ずにいる。
「ふんっ! お前の態度が悪いから、印がついても認められていないんじゃないのか?」
「相変わらず口の減らない神だな」
「神族だからって何でも手助けすると思うなよ!」
「助けてくれなんて一言も言ってないけどな」
おれたちは地上に近いとされる風の村に戻って来た。闇と光のエリアは神族国の中枢にあり、転送魔法を使っても上手く発動しなかった。風の村に戻って来たおれたちを出迎えたのは、意外なことに風神ラファーガだった。姿を見せたのはとっとと帰れということらしいが……。
「人間のお前はどうでもいいが、ドワーフのこの娘だけなら助けてやってもいいぞ」
「それはあんたが決めることじゃないと思うが。ルティ、どうする? 神族の国に残るか?」
「と、とんでもないですよ! わたしはアック様の傍を離れてはいけない運命なんですよ? 神さまよりもアック様がいないとダメダメですっ!!」
まぁそうだろうな。ここに来たのはそういう目的でも無いし、ルティにして見ればとばっちりのようなものだ。長くいたくは無いだろう。
「――だそうだ」
「何でこんな人間なんかに。くそぅ……」
ラファーガはルティに惚れたらしく、それで姿を見せたようだ。しかしルティの答えは決まりきっていた。
「どうすればここから移動出来る?」
「属性の印を宿わせたならその手で魔石を使えばいいだろ! いちいちボクに頼るな!」
「魔石……あぁ、そうか」
「早く去れ! もうこの国に来るな、人間め!!」
ルティにフラれたラファーガは腹を立てながら、村の奥へと姿を消した。
「イスティさま。魔石ガチャをするなの?」
「それしかここを出る手段は無さそうだ。フィーサも脱出方法は知らないんだろ?」
「はいなの……。孤島の国と地上の国との距離が離れすぎているなの」
「……だろうな」
デーモン族をテイム召喚してもここへは降りて来られない。ドラゴン族は限定召喚以外でまだテイムしていないからどうにも出来ないはず。
「ウニャッ? ガチャをしないのだ?」
「いや、もちろんするけど。移動の為だけに頼るのはな……」
「それがアックの力なのだ! アックの力、遠慮しては駄目なのだ。ウニャ」
「そうか、おれの力か。金は減る一方だが、それも致し方無いのかもしれないな」
「アック様。お金のことならわたしに全てお任せを~!」
管理的なものはルティに任せるしかない。おれは持ち金を全て失くす勢いのまま魔石を投げた。
【Lレア 属性魔法テレポート 潜在スキル:残8】
「何だこれ。属性魔法……テレポート?」
どうやら特別なスキルのようだが、またしても意味不明な数字が見えている。テレポート魔法は以前から使えていた。使い勝手は決していいとは言えなかったが。
「どうかしたなの? 何が出たなの?」
「何を驚いているのだ?」
「アック様?」
ガチャを使って出た魔法文字は、基本的におれしか見えない。驚いてしまったせいで彼女たちが一斉に不安がっている。
「いや、問題無いぞ」
スキルを解放させていくことで使える魔法……そんな感じか。属性魔法ということは、属性によって飛ぶ場所が異なるということになる。だとすればどこに行くかは属性次第。恐らく全て解放するのに、八回はテレポートを使わないと駄目だ。魔石を見てもこのスキルを見ることが出来ない。
神族の国にいるから現れたのかは不明。だが、印を宿わせたことが関係している可能性がある。
「アック様? 大丈夫ですか?」
「……何でもないぞ。それよりルティ、体は平気か?」
「それならっ、触って確かめられますか?」
「やめとく」
どこを触るかまでは聞かないし、聞くつもりも無い。時と場所は考えねば。
「ええぇっ?」
「ここは仮にも神の国だろ。そういうのは駄目だ」
「で、ですよねぇ~。それならっ、ラクルで存分にっ!!」
「……そのうちな」
神族の国で彼女たちはそれぞれで隙を突かれた。フィーサだけは成長しまくったが、ルティとシーニャはまだまだ強くなれる要素がありそうだ。あとは水棲の彼女にも戻ってもらえれば……。
「シーニャ、ルティ! おれの傍に来い!! 飛ぶぞ」
「は、はいっっ!」
「ウニャッ!」
フィーサは両手剣の姿のままなので、問題なく移動出来る。ラクルに戻るには水属性で合っているはずだ。
「水属性魔法で転送を発動、展開する!」
標的となる的が無かったが、両手で属性魔法を顕現。
すると水の壁が自分を中心に覆い始めた。
「あわわわっ!? み、水が襲ってきますよ? ア、アック様~!?」
どこに飛んでくれるか……だな。