いつからだろう。
人を愛せなかった俺が、
誰かを本気で好きになったのは。
〈目黒side〉
目 “照さん、元気ないですね。
まさか、本当に恋人に振られたとか?”
仕事の休憩中、
喫煙所で俺は照さんと2人きりだった。
岩 “うるせ。”
目 “あ、、マジなんだ。”
岩 “俺が悪いんだよ。
あいつがいることに甘えてばっかで。
仕事を言い訳にあいつのことなんも考えな くて。”
目 “それは愛想つかされますねー。”
岩 “俺、もうどうすりゃいいかわかんねぇよ。”
目 “照さん、昨日俺が言ったこと覚えてます?”
岩 “、、なんだっけ。”
目 “照さんが別れたら俺が照さんと付き合うっ て。”
岩 “は、、、?”
目 “俺にしません?
俺ならそんなこと気にしませんよ。”
岩 “目黒、何言って、、”
目 “照さんの事、好きって言ってるんですけど。”
俺は昔から、他人に興味がなかった。
友達は全て表面上で、
本心ではどうでもよかった。
今まで恋人は出来たことがなくて、
欲を満たすためだけのセフレしかいなかった。
そんな俺が、初めて人を好きになった。
本気でその人のものになりたい。
そう思った。
それが照さんだった。
自分で言うものでもないけど、
俺は自分の顔に自信がある。
学生の頃も、何人もの女子に告白された。
俺に告白してきた奴は、口を揃えて言う。
“目黒くん、かっこいいから。”
俺の取り柄は顔で、
裏を返せば、顔以外取り柄がなかった。
俺の顔だけで、誰も俺の中身を見てくれなかった。
そのせいで、俺自身も人を愛せなくなった。
自分の努力を認めてもらいたくて、
新卒で今の会社に入った。
その時の教育係が照さんだった。
俺は照さんの教育を受けてみるみる成長し、
俺の営業成績はみるみる伸びていった。
ある日、俺は大型の契約を取り付けた。
何日も残業をして、プランを練って、
ようやく取り付けた契約だった。
“君の実力と熱意は凄いね。尊敬するよ。”
取引先の人にそう言われたとき、
努力が認められた気がして嬉しかった。
でも、その契約のせいで俺は、
俺を敵視している上司の成績を抜いてしまった。
“目黒、新人のくせに生意気だよな。
あの契約も、どうせ顔で取ってんだろ。”
“社長のこと誘ってたりしてな、笑”
その上司が話しているのを聞いてしまった。
やっぱり俺には顔しかない。
どんだけ努力しても、伝わらないんだ。
岩 “何言ってるんですか。”
照さんの声だった。
岩 “目黒は努力して契約を撮ったんです。
朝1番に出社して、残業もして。
教育係の俺は、ずっとその姿を見てまし た。
あいつの努力、認めてやってください。”
その時、俺は照さんに恋に落ちた。
照さんは、初めて俺の内面に触れてくれた。
目 “照さんの事、好きって言ってるんですけ ど。”
岩 “お前、疲れてんだろ。
なんだよその冗談。”
煙草を捨てて喫煙所を出ようとする
照さんの腕を掴んだ。
目 “俺、本気ですから。”
そう言って俺は照さんにキスをした。
ほのかに煙草の香りがした。
目 “俺と付き合ってください。”