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第52話 「それぞれの秋」
2021年10月。
舞が野球部を卒業してから一か月。
柳城高校野球部は秋季福岡大会を戦っていた。
新主将・佐伯。
そして一年生の塁と史陽。
新チームは順調に勝ち進む。
一回戦突破。
二回戦突破。
準々決勝も勝利。
夏の甲子園準優勝校らしい戦いだった。
しかし。
福間監督は満足していなかった。
練習中。
「夏のチームと比べるな」
選手たちへ言う。
「今のお前たちは今のお前たちや」
甲子園準優勝。
その看板が重くのしかかっていた。
塁も史陽も分かっていた。
自分たちはまだ柴田たちには届いていない。
ある日の放課後。
史陽がグラウンドの隅でノックを受けていた。
一球。
また一球。
何度も飛びつく。
ユニフォームは土だらけになった。
塁が声を掛ける。
「そこまでやるか」
史陽は立ち上がる。
「甲子園で思った」
珍しく真面目だった。
「全国には上がおる」
塁も黙る。
決勝で見た大阪の強豪。
忘れてはいなかった。
その頃。
舞は受験勉強に追われていた。
進路希望は教育学部。
教師になりたい。
そう考え始めていた。
机の引き出しには最後のスコアブック。
時々開く。
甲子園決勝。
最後のページ。
「柳城 2―4 帝都学院」
そこだけは今でも悔しかった。
だが舞は笑う。
「あの時は楽しかったな」
少しずつ前を向いていた。
秋季福岡大会準決勝。
柳城は接戦を制し、九州大会出場を決める。
試合後。
選手たちは喜んだ。
しかし福間監督は腕を組んだまま。
「目標はそこやない」
九州大会。
その先の神宮大会。
そして春のセンバツ。
目指す場所はもっと遠かった。
夕暮れ。
グラウンド整備を終えた選手たちが帰っていく。
福間監督は一人で空を見上げる。
甲子園準優勝から二か月。
チームは少しずつ変わっていた。
三年生のチームではない。
佐伯のチームになり始めている。
そして塁と史陽も。
少しずつ。
確実に。
柳城の中心へ成長していた。
次はいよいよ秋季福岡大会決勝。
相手は宿敵。
九州第一高校だった。
第52話 終
コメント
1件
第52話、読み終えました。秋の風景がすごく染みる回でしたね…。夏の甲子園準優勝の記憶がまだ生々しい中で、新チームがそれぞれの重みと向き合う姿が丁寧に描かれていて、胸が熱くなりました。特に、史陽が黙ってノックを受け続けるシーンが好きです。舞が「あの時は楽しかったな」と笑えるようになったのも、読んでいてほっとしました。次は九州第一との決勝ですね。柳城の新しい戦い、静かに応援しています🌙
#高校生