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第16話 「九州への一勝」秋季大会準決勝。
勝てば九州大会。
負ければ終わり。
朝から球場の空気が違っていた。
柳城高校の応援席にも、人が増えている。
「柳城、今年強いらしいぞ」
そんな声も聞こえる。
だがベンチの空気は静かだった。
相手は――
西陵学園。
夏、柳城を止めたチーム。
小早川は相手ベンチを見る。
(またここか……)
あの悔しさは忘れていない。
試合前ノック。
西陵学園の打球音が球場に響く。
低く、鋭い。
だが以前ほど、圧倒されなかった。
(戦える)
整列。
礼。
――プレイボール。
初回。
西陵学園が先制する。
連打。
送りバント。
犠牲フライ。
0対1。
だが柳城ベンチは静かだった。
「まだ一回!」
二年生主将が声を出す。
その裏。
柳城もすぐ反撃。
先頭打者出塁。
送りバント成功。
一死二塁。
打席には小早川。
初球。
内角。
詰まりながらも振り抜く。
――ポトリ。
打球はライト前へ落ちる。
同点。
1対1。
ベンチが沸く。
中盤。
試合は完全な投手戦になる。
西陵のエース。
柳城の継投。
一点も許されない空気。
5回。
二死満塁。
西陵最大のチャンス。
打席は四番。
球場が静まり返る。
小早川はマウンドへ向かう。
「腕振ってください」
投手がうなずく。
戻る。
ミットを低く構える。
初球。
ストライク。
二球目。
ファウル。
追い込む。
三球目。
外いっぱい。
振った。
――空振り三振!!
柳城ベンチが吠える。
「しゃあああ!!」
福間監督は静かに腕を組んだまま頷く。
7回裏。
試合が動く。
一死一三塁。
スクイズのサイン。
転がした。
三塁走者が突っ込む。
クロスプレー。
セーフ!!
2対1。
柳城勝ち越し。
球場が大きく揺れる。
あと二回。
8回。
9回。
西陵打線が襲いかかる。
だが柳城は守る。
飛び込む。
繋ぐ。
#高校生
声を切らさない。
二死一二塁。
最後の打者。
フルカウント。
球場全体が息を止める。
小早川はサインを出す。
(低め……)
投げた。
振った。
――ゴロ!!
ショート正面。
アウト!!
ゲームセット。
柳城高校 2―1 西陵学園。
九州大会出場決定。
その瞬間。
柳城ベンチが一斉に飛び出した。
歓声。
涙。
叫び声。
小早川はその場に座り込む。
(勝った……)
夏、届かなかった相手。
その壁を、今越えた。
整列後。
スタンドから拍手が降り続く。
その中で福間監督が言う。
「ようやった」
短い言葉。
だが、選手たちの目が熱くなる。
そして福間監督は続けた。
「でも――」
「まだ終わりやない」
九州大会。
その先には、センバツ甲子園。
柳城高校は今、長い冬を越えようとしていた。
夕焼けの空が、水郷の町を赤く染めていた。
第16話 終