🇬🇧🇫🇷と書きましたが🇬🇧🇫🇷なのか🇫🇷🇬🇧なのか解釈は様々だと自分では思っております。
どっちもいいですよねほんとにここ……
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───貴方の描く繊細な絵が好きなんです。
貴方の繊細な世界が好き。
貴方が絵を描いているときの姿勢が好き。キャンバスへと丁寧に筆を下ろすときの真剣な瞳。絵から感じられるその情熱は、貴方の性格をそのまま投影しているようで───。
🇫🇷「なに。また来たの」
キャンバスに向かって筆を動かしていた手を止め、アトリエを訪ねてきた人物を振り返る。
🇫🇷「───イギリス。」
心底不快そうな表情をその顔に浮かべていた。
🇬🇧「おや酷いですね…とっておきの紅茶も持ってきたんですけれど」
からかって泣く真似をして見せると、フランスはますます眉根に皺を寄せた。
そんな反応を見せるフランスも、心の底から私を嫌がっている訳では無いのだ。その証拠にアトリエへと入る戸の鍵は開けてあった。
誰かが入ってきてもいいように。
この場所を知っているのは私だけだというのに。
🇬🇧「どうせ朝からずっとこの調子なんでしょう。そろそろ休憩にしたらどうです」
🇫🇷「はぁぁ、そうしようかな。誰かさんが来たせいで集中力切れちゃった」
フランスが椅子から立ち上がって背を伸ばし、欠伸を零す。
🇬🇧「それは済みませんね」
いつも通りの調子のやりとりに私は薄く笑った。そしてふたりで休憩できるスペースまで移動する。去り際に、ちらとキャンバスに目を向けた。まだ白地の残る描きかけの絵だ。
この絵が完成したら、どんな世界を私に見せてくれるのだろうかと胸が躍る。完成するまでの時間が待ち遠しい。
立ち止まっていると、前方から自分を呼ぶ声がした。
🇫🇷「イギリスってば。紅茶淹れてよ」
🇬🇧「はいはい。わかりました」
カウンターになっているキッチンに入ると、慣れた手つきでティーポットとカップを取り出す。カップは紅茶の色の映える白色。
水を火にかけて温める。
フランスはいつもの席に着き、その姿をぼんやりと眺めていた。
暫くしてからこぽこぽと水の沸騰する音が聞こえはじめた。ティーポットに一度そのお湯を注いで温めてから2人分の茶葉を入れる。
沸騰したてのお湯をポットに注ぎ、すぐに蓋をして蒸らす。この時お湯は勢いよく入れるのがコツだ。
🇬🇧「ミルク入れます?」
🇫🇷「今日はいらない」
細かい茶葉なので蒸らす時間は3分程度。
🇬🇧「……なんですかそんなに見つめて」
先程から見つめてくるフランスにそう聞くと、珍しく含みのない真っ直ぐな答えが帰ってきた。
🇫🇷「別に。イギリスが紅茶淹れてるところ見るの好きだなって」
だから自分も言ってやりたくなったのだ。フランスの顔を見ないように、手元に視線を落として言った。
🇬🇧「…私も好きですよ。貴方の絵を見るの」
🇫🇷「え?」
ポットの中をティースプーンでひと混ぜ。そして最後にカップへ紅茶を注ぐ。濃さが均等になるよう慎重に回し入れる。慣れきったはずの動作なのに、覚束なくなってしまうのは柄にもないことを言ったせいだ。
🇬🇧「ほら、できましたよ」
平静を装ってふたつのカップをテーブルまで運ぶ。
🇫🇷「…ありがと」
私もフランスの隣に腰かけて紅茶を一口飲んだ。心地よい渋さが口いっぱいに広がって、爽やかさが鼻に抜ける。
いつも通りの、お気に入りの味。
フランスのお気には召しただろうかと隣を見る。
🇫🇷「なに?」
🇬🇧「ふふ、いいえ何も」
素っ気ない態度だが、その表情が何を意味するのかわかっていた。
だから何も言わない。
🇫🇷「なんだか今日の君おかしいよ」
🇬🇧「失礼な。紅茶の出来だっていつも通りですよ」
フランスは長い足を組みかえて言う。
🇫🇷「……さっき言ってたやつ」
どきりとした。矢張りあんな柄にもないことを言うべきではなかった。寄りにもよってフランスの前で。
🇬🇧「なんです」
🇫🇷「僕はさ、イギリスが紅茶を淹れてるとき以外の姿も好きなんだ。こうやって僕の隣に居る君自身がなにより好き」
私はカップを机に静かに置いた。
🇬🇧「…ちょっと待ってください」
そう言い制止しようとするも、フランスは構わずに続けて口を開く。
🇫🇷「君が好きなのは僕の絵だけ?僕自身は好きじゃない?」
一際大きく心臓が鳴った。そんな事を言われてしまっては素直に話す以外選択肢がない。
フランスは俯きがちに私の返答を待っている。もうずっと一緒に過ごしてきて、そんな表情を見るのは初めてだった。
🇬🇧「貴方も今日は随分とおかしいですよ」
🇫🇷「…そうだね」
私も私だ。毎日のようにこのアトリエに通っている。恋は盲目とはよく言ったものだと思う。夢中になりすぎてここまで気づかなかったのだから。
知らないうちに、もうとっくの昔に、いっそ出会ったあの日から、私は貴方に落ちているのかもしれない。
🇬🇧「貴方の絵が好きです。その繊細な世界が。でも、それを見せてくれる貴方がなによりも好きです」
───彼との初めてのキスは紅茶の心地よい苦味がした。
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コメント
5件
読めば読む程心に染みてくる...イギフラの安心感好きだぁ
ファーストキスは紅茶のあじ、、、