???「海音が最近元気ねぇんだよ」???「海音ちゃんが?」
ここは、生徒会室。「瑠璃人」が「雨花」に「海音」について相談していた。
瑠璃人「海音……家に帰ってきたら、すぐ部屋に籠るし…………お袋も海音にはなるべく気を使うようにしてるし……まぁうちの母親はその度に海音の悪口言うんだけどさ」
雨花「…………少なくともわたしなら、わたしが海音ちゃんの立場なら、家には居づらいかもしれないね」
瑠璃人「何でだ?」
雨花「わたしなら気を使われるのも嫌だし、その事が原因で悪口を言われるのもきついんだよね。そんな中、人と関わる余裕なんてないと想うんだ。帰る場所が帰りたくない場所になると、もう塞ぎ込むしかなくなる。それが今の海音ちゃんの状態かもしれない。」
瑠璃人「……そうか。海音は……うちに……帰りたくないのか……」
雨花「あくまでわたしならって話ね。何にせよ一度海音ちゃんと話すべきだと想うよ。海音ちゃんは瑠璃くんのことが大好きなはずだから」
瑠璃人「オレのことが大好き……?」
雨花「好きだからこそ、誰にも言えず部屋に篭ってるんじゃないかなって想うよ。それに少なくともわたしの知ってる海音ちゃんは、瑠璃くんのことをお兄ちゃんとして認めてるようにみえるよ」
瑠璃人「……分かった。一度話してみるよ」
雨花「うん。そうしな」
すると、ドタバタと廊下を駆け抜ける足音が聴こえた。
???「大変です!!二人共!!」
勢いよく扉を開けたのは「橙」だった。
雨花「何かあった?」
橙「海音さんが……!」
瑠璃人「!、海音に何かあったのか?!」
瑠璃人は鬼気迫る様子で聴く。
橙「海音さんが……」
「「教室で暴れてるんです!!」」
瑠璃人「えぇ!?」
橙「まさかあんな良い子の海音さんがそんなことするなんて………」
雨花「「あの子は良い子だからそんなことする子じゃありません」なんてその人の一部分すらも見えてないから言えることだよ。その人がどういう人間かなんて……誰にも分からないものだよ。友達にも、家族にも、自分にも」
橙・瑠璃人「…………」
雨花「…………とりあえず海音ちゃんのところまで行こう」
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???「海音……」
???「何かあったのは明確だな」
海音のクラスメイトたちが右葉左葉する中、「桃時」、「兎白」は海音をみつめる。
橙「海音さんどうなりましたか?」
雨花「……かなり危うい状況みたいだね」
瑠璃人「海音は無事か?!」
雨花、橙、瑠璃人も海音の現場に着いた。
桃時「海音は今も尚暴れてるわ」
橙「桃時さんたちが来た頃にはもう教室で暴れてたそうです」
雨花「何がきっかけでこういう状況になったのか知ってる人いる?」
???「きっかけなのか分かりませんが、一番最初に海音さんが暴れたのをみたのは私のはずです」
兎白「お前は、紅緒か」
「紅緒」は海音の状況について説明しだした。
紅緒「まず、私たちは本棚の整理をしてました。雑巾がけして、本を指定の場所に置いて……そんなことをしてたんですが、急に海音さんの息が乱れてきて、顔を手で覆い隠して、そして、本を全部ひっくり返したんです。そこからは今のように暴れています。」
雨花「…………そっか」
橙「その事に何か理由があるはずです」
桃時「暴れるのを無理やり止めるのは良くないわね」
兎白「ちゃんと何故するのかをお互いに理解しなくてはいけないからな」
瑠璃人「海音……」
雨花「でもまずは……」
「「この野次馬のクラスメイトたちを追い払わないと」」
雨花「桃時ちゃん。兎白くん。この人たちを近くの空き教室まで誘導してくれる?」
桃時「分かったわ」
兎白「了解した」
桃時、兎白は、クラスメイトたちを空き教室まで誘導した。
雨花「じゃあ、わたし海音ちゃんと話に行ってみる」
瑠璃人「オレも行く」
橙「では、私は野次馬が来ないようみ張ってますね」
雨花、瑠璃人は教室の中に入っていった。
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雨花「…………」
瑠璃人「これは……」
教室に置いてあった椅子や机が投げ飛ばされ、本やプリントが四方八方に散乱していた。
雨花「海音ちゃん。怪我ない?」
海音「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
瑠璃人「海音。何があったんだ」
海音「…………」
雨花「話したくないなら話さなくて大丈夫。…………よいしょっと」
雨花は海音と近すぎず遠すぎずの距離で座る。それを真似して瑠璃人も座る。
雨花「海音ちゃんが離れて欲しかったら離れるし、わたしたちが離れなくても良いならここに座らせて貰うね。海音ちゃんが話しても良いって想えるまで待ってるね」
瑠璃人「オレも待ってる」
海音「…………」
十数分後
海音「…………恐い」
雨花「恐い……?」
瑠璃人「何が恐いんだ?」
海音「完璧さ……が……」
雨花「……海音ちゃんは、綺麗に整頓された本棚や整列された机や椅子……それらが持つ完璧さが恐いんだね」
瑠璃人「!」
海音は縮こまると、自身の体を腕で隠すように、自分自身を押し殺すかのように、震えながら小さくなる。
海音「完璧さを……かいたら怒られる。いつだって完璧じゃないといけなくて、薄氷の上を裸足で絶対割れないように歩き続けろと言われてるようで……堪らなく……緊張して……すごく……嫌で……」
瑠璃人「(あぁ、そうか)」
オレの家は、海音の家よりマシだって
勝手に思ってた
オレ自身がたまたま耐えられただけで
オレが海音の家がきついと想うように
海音だってオレの家がきついって想ってるんだ
オレの家も完璧さを求められる節がある
海音が完璧さを求められるのがキツイって分かってたのに
どこかでこれぐらい大丈夫だろって思ってた自分がいた
海音にとっては死ぬほど辛いことなのに
瑠璃人「(オレ、兄貴失格だな)」
雨花「今、瑠璃くん、自分のこと「兄貴失格」って想ったでしょ?」
瑠璃人「え」
海音「そう想うと想ったから言いたくなかったのに……」
雨花「瑠璃くん。海音ちゃんとこれからヒビを入れていけば良いんだよ」
瑠璃人「ヒビを入れる?」
雨花「海音ちゃんの恐い「完璧さ」にヒビを入れていくの。「完璧さ」なんて一つ欠けたら成立しなくなる柔いものなんだから、その程度のものなんだから、一緒にヒビを入れていこう。少しずつ」
海音「その程度のもの……」
雨花「あ、もしかして言い方良くなかった?ごめんね」
海音「いや、別に……」
完璧さは絶対的なもので
絶対離れられないものだって想ってた
でも……
《一緒にヒビを入れていこう》
ヒビを入れても良いんだ
完璧さなんてその程度のものなんだ
瑠璃人「一緒にヒビ入れてくれるか?海音」
海音「!、うん!」
この日から少しずつ物を破壊することがなくなっていった海音。
「大丈夫だった?」
「怪我とかしなかった?」
海音「う、うん。大丈夫」
海音はクラスメイトに心配されていた。
雨花「いやぁ……うちのクラスメイトにもみ習って欲しいよ。この優しさを……うへぇ〜」
桃時「アタシたちは腫物扱いされてるものね」
橙「でも、クラスメイトの方たちに恐がられなくて良かったですよね」
兎白「そうだな。引かれる可能性もあっただろうし」
瑠璃人「海音がクラスで独りぼっちにならなくて良かった……」
雨花が瑠璃人近づくと……
雨花「また何か海音ちゃんが苦しそうにしてたら教えてね?できる限りの事はするから」
瑠璃人「!、ありがとう」
こうして、海音は徐々に本音を言えるようになったとか。
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