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夜の空気を裂くように、金属音が重なった。
阿耶は一歩引き、息を整える暇もなく次の一撃を受け止める。
重い。想像していたよりも、はるかに。
(……強い)
足元を払われ、体勢を崩す。
間一髪で距離を取るが、腕に走った鋭い痛みに思わず眉を寄せた。
見ると、制服の袖が裂け、細い傷が刻まれている。
深くはない。だが、確実に削られていた。
「あんたはまだやりがいがあるねぇ、桂小太郎とはまた少し違うにおいだ」
似蔵の声が愉しげに響く。
「だが、所詮は女」
阿耶は再び踏み込む。
——しかし、刃はことごとく逸らされる。
(読まれてる……?)
いや、違う。
似蔵の視線はこちらを正確に捉えていない。
にもかかわらず、動きは寸分も狂わない。
次の瞬間、脚に衝撃が走り、阿耶は膝をついた。
「っ……!」
確実な一撃。
息が詰まり、夜の冷気が肺に刺さる。
(……まさか)
阿耶は距離を取りながら、確信に近い違和感を掴む。
アイツは言った、違う”におい”、と。
似蔵の視線は、最初から——こちらを“見ていない”。
「……お前」
低く、問いかける。
「目が、見えてないな」
一瞬。
似蔵の口元が、わずかに歪んだ。
「ふっ……」
肯定とも否定とも取れない笑み。
その直後、似蔵の刀が月明かりを反射した。
阿耶の視線が、思わずそこに吸い寄せられる。
「——その刀……」
胸の奥が、嫌な音を立てた。
「まさか……!」
噂でしか知らないはずの存在。
だが、この違和感、この圧——そして、
夜の月に照らされるその色はまるで_。
次の一太刀が、思考を遮る。
弾き飛ばされ、地面に手をつく。
咄嗟に受身を取ったが腕も脚も、思うように動かない。
「いい反応だ」
似蔵の声が、すぐ近くにあった。
「だが……まだ、終わりじゃない」
立ち上がろうとする阿耶の前に、影が落ちる。
________。
子供の気配が、完全に遠ざかった。
それを感じ取った瞬間、阿耶は歯を食いしばる。
(……このままじゃ、削られるだけ)
正面から打ち合えば、いずれ押し切られる。
そう判断すると同時に阿耶は力強く地を蹴った。
屋根へ。
一気に距離を取り、闇の中を駆ける。
瓦を踏む音が連なり、冷たい夜風が頬を打った。
——次の瞬間。
腹部に鈍い衝撃が走る。
「……っ」
息が、詰まった。
熱を帯びた感覚が、じわりと広がる。
足がもつれ、視界が一瞬、白く弾けた。
(…やられた)
振り返る余裕はない。
ただ、背後に“いる”という確信だけが残る。
意識が、ふっと遠のきかける。
(……くそ、が)
阿耶は、最後の力を振り絞り、
屋根の端へと、身体を投げ出す。
眼下に広がるのは、暗い川面。
——落ちる。
冷たい水が全身を包み込み、音が途切れた。
重力も、痛みも、思考も。
すべてが、水の底へ引きずられていく。
(……生き、て……)
言葉にならないまま、意識が薄れていく。 夜の闇と、川の冷たさに溶けるように。
阿耶の視界は、ゆっくりと閉じていった。
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新きら(銀魂)