この作品はいかがでしたか?
13
この作品はいかがでしたか?
13
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第二章 1
Ⅰ
ー『ねぇ、お母さん。』
ぼくは、病院のベッドで眠るお母さんに言った。
『どうしたの?ーーー。』
お母さんが優しい声で言った。
でも、表情は変わらない。
『お父さんは、今どこにいるの?どうして帰ってこないの?』
ぼくは、お父さんとお母さんの2人と住んでいた。
なのに、ある時からお父さんは帰ってこなくなった。
それからは、元々身体があまり良くないお母さんが、働くようになった。
家でも、1人でいることが多くなった。
『お父さんはね、長い旅に出かけたのよ。』
『長い旅?』
その長い旅がなんなのかは、その時はわからなかった。
でも、いつも誤魔化していたから少しでも知れたことが嬉しかった。
でも、
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『お母さん?起きてよ。また、何か話そうよ。お母さん!』
お母さんが目を覚まさなくなった。
お母さんはほんの少したりとも動かない。
お母さんの手を握る。
いつもより、冷たい。
僕は、それが何なのかわからない。
なぜ、起きないのか。
なぜ、動かないのか。
なぜ、手が冷たいのか。
わからない。
でも、
寂しかった。
お父さんがいない今、
お母さんだけが頼りだったから、
そんなお母さんが目を覚まさなくなったら、
僕は…
『起きてよ……』
1人、孤独だ。ー
僕は、目を覚ます。
目を開けても、暗い。
顔に何かが当たっている。
『・・・』
琥珀さんだ。
僕は、
琥珀さんの胸で眠っていたんだ。
恥ずかしくはあるけど、
僕の中には、悲しみの方が強くある。
久しぶりに見た夢。
僕の本当のお母さん。
僕の母。
今の僕にはわかる。
多分、父も。
なくしてしまったんだ。
僕の両親。
気になってはいたけど、
夢を見れば見るほど、
怖くなっていた。
そうなんじゃないかと、思ってしまっていた。
本当の親は、
小さい頃に亡くなっていたんだ。
そして、
昨日も大切な人を2人もなくした。
僕のせいで。
琥珀さんは、そんな僕を元気づけてくれた。
でも、事実は変わらない。
僕に、居場所をくれたのに、
僕は、剣士所なんて言ってたけど、
本当の名前を知らない。
所詮、その程度だったんだな。
僕は、皆に優しくしてあげたかった。
でも、周りの方が優しかった。
僕は、どうすればいいのかわからない。
ー『甘ちゃん、よく頑張ったね、』
『甘ちゃんは弱くなんてないと思うよ?』
『そんなことはないよ。琥珀はもっと、何もできなかったから。昨日、あの人に言われてわかった。ううん、知らないふりをしてだだけでわかってたの。琥珀が足手まといでしかないって、』
『でも、甘ちゃんは悪い人に立ち向かえるでしょ?琥珀には、できないことだよ、』
『甘ちゃんはね、ずっと誰かを救いたいと思っているし、ちゃんと行動までできる強い人なんだよ?』
『でも、甘ちゃんは救えなかった時、全て自分のせいだと思っちゃうみたい。』
『違うよ、甘ちゃんが救わなきゃいけなかったわけじゃないでしょ?周りにも、助けられたかもしれないのに、行動できなかった人がいる。その人たちは?もっと悪くない?』
『でも、甘ちゃんは見捨てなかった。自分が弱いと思っても、誰1人見捨てなかった。なのに甘ちゃんは優しい子だから、全てを1人で抱え込みすぎちゃうんだよ。でも、それは、自分が辛いだけで、損をするだけなんだよ?』
『よく、頑張ったね。辛い時も、苦しい時も、諦めず立ち向かってえらいよ。そんな子の彼女になれて、守ってもらえて嬉しいよ。いつも助けてくれて、優しくしてくれて、隣にいてくれて、本当にありがとう。』
『泣いてもいいんだよ、辛かったね、苦しかったね。辛いことを愚痴っても、琥珀にちょっと悪いことをしてもいいんだよ?いっぱい頑張ったから、いっぱいわがままになってもいいんだよ?琥珀に甘えてもいいんだよ。ね?』
『琥珀になら、我慢しないで?何も気にせず、やりたいようにして?』ー
琥珀さんの暖かくて優しい言葉。
思い出すだけで泣きそうになる。
ずっと、そう言って欲しかったから。
ずっと、辛かったから。
苦しかったこと全てを認めてくれたようで、
嬉しかったから。
きっと、この子となら、
強くなれる気がする。
強くならないと。
琥珀さんは、僕が守る。
僕は、眠っている琥珀さんを見てそう決意した。