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高専の地下。
指を取り込んだ虎杖の意識が一時的に沈み、内側から両面宿儺が這い出してきた。
「ひさしぶりだな、光の下は。……さて、まずはどの女から殺して――」
宿儺が邪悪な笑みを浮かべ、あたりを見渡す。
だが、その視線の先にいたのは、怯える人間ではなく、椅子に座って退屈そうに耳をほじっている青銀髪の少年だった。
「あ、出た? 待ちくたびれたぞ、宿儺」
「……何だ、貴様は」
宿儺の眉がピクリと動く。
六眼を持つ五条ですら感じさせなかった「得体の知れない圧」を、目の前の小僧から感じる。
「俺はリムル。この子の臨時講師だ。ちょっと行儀が悪いって聞いたから、教育しに来た」
「……教育だと? 矮小な分際で、この私に……!!」
宿儺が瞬時に間合いを詰め、その鋭い爪でリムルの首を刈り取ろうとする。
ガキィィィィィィィン!!
「なっ……!?」
宿儺の目が見開かれる。
リムルの首に触れる直前、鋼鉄よりも硬い**『多重結界』**に阻まれ、宿儺の手が火花を散らして弾かれた。
「効かないって言っただろ。次、俺の番な」
リムルが軽く指を弾く。
**『暴食之王(ベルゼビュート)』**の波動が、宿儺の放った呪力を根こそぎ食い尽くす。
「貴様……術式を喰うのか……!? 面白い、ならばこれはどうだ!」
宿儺が指を交差させる。
「『領域展開・伏魔御廚子(ふくまみづし)』」
周囲が巨大な牛の頭蓋と、血の池に沈む寺院のような光景に塗り替えられる。
絶え間なく降り注ぐ不可視の斬撃。あらゆる物質を細切れにする、必殺の一撃。
だが――。
リムルはその中心に立ち、降り注ぐ斬撃を浴びながらも、欠伸(あくび)をしていた。
「ラファエルさん、これ何回目?」
『解。すでに一億回以上の斬撃を検知。すべて「絶対防御」により無効化しています』
「…………馬鹿な」
宿儺の顔から余裕が消える。
自分の領域内で、これほどまでに無傷で、平然としている存在など、千年前にもいなかった。
「お前の『斬る』っていう概念、もう解析終わったぞ。……じゃあ、俺の領域(世界)も見せてやるよ」
リムルが静かに両手を広げる。
「領域展開……なんて言わなくてもいいんだけど、形を合わせてやるか」
「『虚無崩壊・幻想世界』」
宿儺の『伏魔御廚子』が、内側からバリバリと音を立てて崩れ去る。
代わりに現れたのは、星々が煌めく宇宙のような、美しくも恐ろしい無の空間。
そこでは宿儺の呪力は一切機能せず、ただリムルという「神」の意志だけが世界を支配していた。
「……これが、異世界の王の力か……」
膝をつく宿儺の前に、リムルがゆっくりと歩み寄る。
「宿儺。お前、強いけど寂しい奴だな。しばらく俺の胃袋の中で、ヴェルドラ(暴風竜)とチェスでもして遊んでろ」
「待て、貴様……! 私は……ッ!!」
リムルの影が巨大な口となり、呪いの王を丸呑みにした。
再び静まり返った地下室。
そこには、スヤスヤと眠る虎杖悠仁と、何事もなかったかのようにリンゴをかじるリムルの姿だけがあった。
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